ブレカナの殺戮者(マローダー)は救済できるか?(1)


 前回予告されていたとおり、今回はブレイド・オブ・アルカナの新サプリメント「エピック・オブ・サイレンス」の話題だ。正直この動画で一番驚いたのは「表紙のイラストはアンゲリア七世だ」ということだった。てっきり、その幼馴染であるダイアナ枢機卿の方だと思っていた。というのは、アンゲリア七世は「剣十字の騎士」の表紙イラストだと黒髪ぱっつんのお姫様カットの人だったはずだから……と思って、よくよく今回の表紙イラストを見てみたら、確かにこの髪も黒髪に見えなくもないか。



 
 さて、今日の本題は「エピック・オブ・サイレンス」のハンドレッド・マローダーを読んで思い出したことで、動画の内容とは直接関係ないかもしれない。
 プレカナの敵役である「殺戮者」を説明する際、「救済する手段はほとんどない」とか「ほぼ不可能」と語られることが多い。「絶対不可能」とか「100%無理」という表現は使われないと思う。
 ダブルクロスでも「ジャームになった人間を救済することができるか」という話について、リプレイで救済するという展開になって論議を呼んだことがあった記憶がある。では、ブレカナの殺戮者の場合はどうだろう。

はじめに

 まず最初に、私がこれから書くことは過去、あるいは現在のサプリメント等を読んだ、私の個人的な見解であって、もちろん公式見解ではない。ソースのないことはできるだけ言わないつもりだけれど、公式見解でないことはお断りしておく。
 次に、いかなるTRPGにおいてもセッションではGMの見解が全てであって、私がここで書くことは、GMに異を唱える根拠にはならない。私自身もプレイヤーとしてブレカナのセッションに参加するのであれば、その場にいるGMの決定に全面的に従う。
 だから以下のエントリについては、シナリオ作成時にGMが判断に迷った時、参考にしてもらえればという程度の内容である。

ルール優先、演出後付け

 前提条件が多くて申し訳ないが、今回の説明をするのにどうしても外せないのが、こちらのふぃあ通の動画で説明されている「ルール優先、演出後付け」の原則である。



 簡単に説明すると、セッションのハンドリングにおいては、ルールに基づくデータによってもたらされる結果が大前提で、演出は後からついてくるものだということだ。
 ちょっと脇道にそれてしまうが、これについて例を挙げて説明したいと思う。
 あなたが、武器を2本持つ「二刀流」のルールがない(しかし相当品のルールはある)ゲームで、二刀流を使うPCがやりたいとする。その場合「自分はデータ上、剣を1本しか持っていないが、剣を2本同時に使う、二刀流のPCをやる」と主張することができる。
 この場合、ルール優先、演出後付けとはどういうことかという。確かにそのPCは2本の剣で攻撃するのだが、命中率やダメージは剣1本で攻撃するのと変わらない。それだけではなく、囚われの身となって剣を奪われるというシーンになった時も、「自分はもう1本予備の剣を持っているはず」とは主張できない。データ上は1本の剣の相当品なのだから、剣を1本しか持っていない時と同じ不利益が生じる。つまり、剣は2本とも奪われ、素手で戦うしかない。
 またこれは、プレイヤーに有利な時も働く。「お前は剣を2本持っているのだから価格は2倍」ということがなく、2本合わせて1本分の価格で買える、ということになる。データはあくまでも剣1本分だからだ。これがルール優先、演出後付けのルールである。

閑話休題

 さて、以上を踏まえて殺戮者を救済するとなった時、いくつかの条件が存在する。
 まずは「その殺戮者は、セッションにおいてPCである『刻まれし者』が『殺戮者』に墜ちた元PCなのか。それともNPCを救済したいと思っているのか」。次に「ルール上で救済したいと思っているのか、それとも演出的に救済したいと思っているのか」だ。これによって事情が変わってくる。
 PCのデータを救済したいと思っている場合、方法はないと断言できる。というのは、セッションにおいてDPを回復できず、殺戮者になったPCは、終局ステージでGM預かりとなるからだ。いわば、プロファイルシートをGMに提出するのと同じで、プレイヤーの制御下には置かれなくなる。終局ステージなのでデータ的な処理も発生せず、ここでルール効果のある、以下に挙げるような手段を取ろうとしても不可能だ。NPCとなったキャラクターをプレイヤーが取り戻す方法というのはルールには存在しないため、この状態になったPCを、ルール上救済することはできない。

 では「終局ステージで殺戮者となった元PCを、演出上救済する方法はあるのか」というと、実際に殺戮者を救済する方法は恐らくゼロではない。3rdエディションのランド・オブ・ギルティに掲載された特殊因果律「光を取り戻す日/許されざる者」はまさにそういった因果律だからだ。自分のPCが殺戮者に墜ちた後、ルール的には全く別のPCを作成した上で、この特殊因果律を取得し、演出上は同じPCであると主張する(ルール優先、演出後付け)ことは、GMが認めさえすれば不可能ではないと思われる。
 もちろん、裏切りのアルゲンティアのように「転生しても決してなくならない」と明記されている特殊因果律を持っていたPCの場合は、元の特殊因果律を消去できないので不可能だが……。
 ただし、個人的にはこの方法も、あまり認めたくはない。「光を取り戻す日」は、あくまでも経歴として「かつて殺戮者だった」という過去を持つPCを演じるというだけで、セッション中に殺戮者となったPCを救済するために用意されたとは考えづらいからだ。

 何故、ここまで殺戮者の救済に厳しい裁定をするかというと、「殺戮者になるかもしれない危険を冒すか、それとも力を使うか」という葛藤は、ブレカナの面白さの重要な要素だからだ。殺戮者になってもそれほどのペナルティがないとなると、この葛藤が弱くなる。一時的にプレイヤーの意を汲むことになったとしても、長期的な視点で見るとセッションの緊迫感を薄めてしまい、面白さを削ぐことにつながる。もちろん、これはブレカナに限った話ではないが……。
 次回は、NPCとしての殺戮者の救済の話をしたいと思う。