攻殻機動隊展

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 ちょっと前に、虎ノ門ヒルズで開催されている攻殻機動隊展に行ってみた。*1
 公式サイトには「史上初となるアニメ攻殻機動隊シリーズ横断展覧会」とあるが、私はアニメシリーズを途中から追っていない人間であり、熱烈なファンだから展示会に興味があったという訳ではない。ただ、ARグラスを使用した「電脳VISION体験」なるコンテンツがあると知り、展覧会場でARグラスをどうやって使うのかを見てみたかった。
 なので、今回は展覧会そのものというより、この電脳VISION体験に関する感想がメインになる。この電脳VISION体験自体、ネタバレがどうこうというものではないので、とりあえず折り畳まずに、このまま書いていくことにする。

電脳VISION体験についての所感


 全体的な感想としては「アイデアとしては面白いけれども、改善の余地は結構ありそう」ということになるだろうか。
 まず一番大事なところだが、この電脳VISON体験、ちょっと(物理的な意味で)危ないと私は感じた。この電脳VISION体験で使われていたXREALというARグラスについてはちょっと調べたことがあるのだが、MixedRealityモードとVirtualRealityモードの二つがある。要は、グラスに投影している映像を現実世界の映像と合わせてみるモードと、現実世界の映像を遮断して投影されている映像のみを見るモードだ。それほど複雑なことをしているわけではなく、後者の時には透過率0%のサングラスを上からかぶせるような形で、前者の時はそれを外しているようなイメージだ。
 そして実際、会場でARグラスの使用説明はされるものの、モードはVRモードで固定されていて、MRモードでは運用できないようになっていた。するとどうなるかというと、会場を歩いている他の人に当たるのだ。このVRモードだと、現実世界に存在する他の来場者が見えないからだ。
 「いや、それはARグラスをかけたまま歩く来場者が悪いんじゃないの?」と思うかもしれないが、このARグラス、コンテンツを体験するために会場のあちこちにあるマーカーをフォーカスする必要がある。マーカーの位置が離れているうえに、焦点を合わせるのに微調整が必要になるため、かけたままの状態である程度歩かざるを得ない仕組みだ。
 使用説明の際も「他の来場者の方に当たらないように、不要な時は外してください」というような説明は特にされた記憶がなく、会場にいる他の来場者ももちろんかけっぱなしにしていた。最初人に当たるのは私が間抜けなせいかと思ったけど、辺りを見回してみると他の人に当たりそうになって謝罪している人を他にもちらほら見かけた。
 結果的にどうするかというと、老眼鏡をかけている老爺のように、メガネを半分下げて、VR画面と現実世界の視界を見比べながら歩かないといけない。性質上仕方がないとも思うものの、ハードウェア的にはMRモードがあるんだから、透過率を上げればよかったのではないかと思う。ただ透過率を上げるほど、今度は画面が見づらくなるので、それを避けたかったのかもしれないが……。
 
 また、これは技術的な問題だと思うのだが、実際の会場内の展示物の位置と、VR空間内で表示される展示物の位置が数メートルほどずれていた。このため「VR内の表示を目当てに展示物のところに行こうとすると、実物が見つからない」ということがしばしば発生した。解説を聞きたければ、目標の展示物のところまで行って、しばらくフォーカスするという操作が必要なのに、実際には見たい展示物がある場所ではなくて、VR空間内でその展示物が表示されているところまで行ってフォーカスしないといけない。
 先程「ARグラスを見ていると人に当たる」といったのは、これも原因の一端ではないかと思っている。VRグラスを見ている人にとってはそこに展示物があるが、位置がずれているせいで、持ってない人にとってはそこは展示物がある場所ではない。だから、何もないところに立っているように見えるというのもちょっと良くなかったと思う。

 コンテンツの進め方にもちょっと疑問があった。これはいわゆる「展示会でガイドが聞ける」、それも「デバイスを貸してくれる」タイプのものに似た仕組みだ。先日の大カプコン展でも解説用のレシーバーを貸していたが、あれを映像で見れるバージョンと考えると分かりやすい。
 しかし、システムとしては「会場内の特定のマーカーをフォーカスすると、そのシリーズに関するコンテンツのみが解放される」という仕組みだった。気になる原画に視線を当てると、それに関する説明が流れるようになっているのだが、順路を間違えると、目的の展示物まで戻るのではなく、まず当該シリーズのマーカーまで戻ってフォーカスしないと、展示物の説明が流れない。「これ、マーカーをフォーカスする必要があるんだろうか」というのが正直な印象だった。「目的の原画にフォーカスしたら説明が流れる」だけではダメだったのだろうか。

 それと、これは些細なことかもしれないが、この「目的の展示物をフォーカスする」というのにも課題がありそうだった。視界正面のちょっと右側に丸いウィンドウが出ており、説明時にはそこにタチコマが表示される。この丸いウィンドウが、いわゆるFPSの「照準」に似ているので、これを目標物に合わせたくなるのだが、実際には視界正面に何もないフォーカス用のポイントが設定されていて、画面内に照準的な物が見えているにもかかわらず、それと違う位置で目標物をフォーカスしなければいけない、というのもややこしかった。

 アイデア自体は非常に挑戦的だし、やろうとしてることも面白いとは思うんだけど、見せ方と細部の調整には改善の余地がありそうな感じだった。特に、他の来場者に当たってしまう部分と座標がずれてる部分については。

原画展全体について


 ここまで電脳VISIONの話だけしてきたが、それ以外の部分については基本的には原画展+イメージ展示がある感じだった。最初のギャラリーは巨大プロジェクターがあったり、個別ディスプレイが手前に大きく湾曲した縦長のものだったり、すごく未来的な感じだったけど、その次のギャラリーからは普通の原画展だった。
 1点だけ、ここは好みが分かれるかもと思ったのが、攻殻機動隊にインスパイアされた、しかし攻殻機動隊とは関係ない前衛芸術の展示物が何箇所か、結構大きいスペースを取っており、「これって攻殻機動隊関係ないんじゃ」と思うかもしれない。私はそっちは許容範囲だったが……。
 むしろ例によってすごくもにょったのは、アニメシリーズが中心となってたんでしょうがないんだけど、原作者である士郎さんを中心とした展示が、最後のショップに向かう通路のわずかなスペースにしかなかったことだ。この作品はあくまでも士郎さんの原作あってのことだと思っているので、もうちょっとスポットライトを当てても良かったんじゃないかと思う。
 とはいえ、これは冒頭にも書いたとおり、アニメシリーズが中心と告知されていたので予想はしていたから、電脳VISION体験で他の来場者に体当たりしてしまうことに比べたら、大した問題ではない。
 今回のイベントの経験を生かして欠点を克服し、是非他のイベントでもとは思うものの、今回は攻殻機動隊というコンテンツとARとの親和性が高かったからたまたまこういう展示があったというだけで、他のイベントでは積極的に採用するインセンティブはなさそうな気がする。XREAL自体は宣伝のためなのか、あちこちでこういうイベントに使われてる印象はあるんだけど……。

XREALについての話

 最後にXREALという製品自体の感想を述べておこう。以前ドラクエウォークで使えないかなと思って情報を集めたことあるのだが、試してみる機会がほとんどなく、それが今回参加した大きな動機だった。
 ハードウェアとしての感想は、入場前に係員の方から散々「気分が悪くなったら申し出てくれ」を連呼されたところから見ても、長時間つけっぱなしにするようなものではなさそうだ。私自身は会場で体調に変化を感じなかったが、何の危惧もないならあれほど注意事項を念押ししないだろう。
 また本機のイヤホン機能については、音漏れしまくるので、ARグラスそのもので音を聞くのはちょっと辛い。会場内でも、他の人が聞いている解説がバンバン聞こえてきた。実際に製品を購入して使うのであれば、Bluetoothイヤホンと組み合わせて使うだろうから、問題は少なそうだが……。
 ただ、実際にXREALの使用感を確かめられる場所というのは非常に限られるので、今回それを確認できたのは大きな収穫だった。今の状況だと、スマホ画面をすべて代替するという形ではなく、あくまで補助的な使い方にとどまるのかなと思う。個人的には(ARグラスの性質上仕方ないと思うけれど)文字の解像度が思ったより低かったという印象だった。恐らくゲーム画面を視界に表示しても、細かい文字はほぼ視認できないのではないかと思う。まぁ、これをドラクエウォークのために使おうなどという物好きはなかなかいないだろうから、XREALはそのための製品ではないと言われればそこまでの話なのだが……。

*1:今日が最終日だが今日行ったわけではない。ちょっとネガティブ寄りの意見なので、予断を与えないよう、最終日が終わるまで掲載を待っていた次第である。