財宝の分配ルールの話


 今回の話題は動画のタイトルにあるとおり、「シナリオ中で入手した報酬の分配方法について」だ。例によって、動画の中でも触れられているダンジョンズ&ドラゴンズの話から行きたい。中でもクラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ(CD&D)が前提の話になるので、そこはご留意いただきたい。



 とはいえ、もしかしたら社長が言及しているのは、比較的最近のダンジョンズアンドドラゴンズなのかもしれない。私が確認した限り、CD&Dで財宝の分配方法について一番最初に記載しているのは、ダンジョンマスター用のルールではなく、ベーシックルールセットのプレイヤーズ・ルールブックの52ページだからだ。
 これがプレイヤー用ルールブックに記載されていることには、実は意味があると思っている。TRPGの黎明期、今ほどセッションがドラマ志向でなかった頃は、報酬の分配でプレイヤーが揉めることが結構あった。このため、プレイヤーが見れるルールブックに財宝の分配方法を記載する必要があったのだろう。
 本来理想としては、動画内で言われているアリアンロッドの分配方法のような方法が取れれば一番いい。しかしCD&Dの場合、初期のルールブックの範囲では、マジックアイテムについては価格が設定されていない。従って、マジックアイテムをゴールドに換算して公平に分配するということができない。
 また仮にそれをしようとしたとしても、CD&Dのマジックアイテムはアリアンロッドのそれに比べて非常に価格が高いため、マジックアイテムを受け取る人間は、得られるはずのゴールドを全部返上しても足りずパーティ内で借金、ということになりかねない。

CD&Dの財宝分配ルール

 そのため、ルールブックで推奨されている方法は以下のとおりである。
 まず、冒険内で入手した報酬を3種類に分類する。いわゆるノーマルソード+1と呼ばれるような魔法の武具などのように、使用しても価値を失わない財宝は永久的物品。
 そしてヒーリングポーションのような、1回使うと効果を失うアイテムである一時的物品。
 最後にゴールドを含む普通の物品だ。
 初めに永久的物品をPC間で分配し、これが全てのPCに行き渡らなかった場合、そのPCには一時的物品が分配される。そして、永久的物品を得られず一時的財宝が分配されたPCは、ゴールドを含む通常の物品を2倍受け取る。
 仮に一時的財宝を獲得することすらできなかったPCがいた場合は、一時的財宝を受け取った人間の報酬は半分になり、永久的財宝を受け取ったPCは通常の報酬を受け取ることができなくなる。
 例を挙げよう。
 ある冒険でノーマルソード+1、レザーアーマー+1、インビジビリティポーション、ヒーリングポーション、60000ゴールドを手に入れたとする。
 PCがもし4人の場合には、報酬の組み合わせは「ノーマルソード+1と10000ゴールド」「レザーアーマー+1と10000ゴールド」「インビジビリティポーションと20000ゴールド」「ヒーリングポーションと20000ゴールド」になる。
 もしプレイヤーの数が5人だった場合には、「ノーマルソード+1」「レザーアーマー+1」「インビジビリティポーションと15000ゴールド」「ヒーリングポーションと15000ゴールド」そして「30000ゴールド」になる。

明記されていても揉めるときはある

 さて、ルールブックに財宝の分配方法が明記されているからトラブルが起こらないかというと、そうではない。実際、自分のプレイグループで起こった問題について、分かりやすく2つ例を挙げたい。

 1つ目は過去のエントリでちらっと書いたことがあるが、「ホールディングバッグ」というマジックアイテムについてだ。これは本来の所持制限を超えてアイテムを持つことができる「魔法のバッグ」なのだが、魔法の武具などと違い、そのメリットは「財宝をより多く持ち帰れる」という点にあるので、パーティメンバー全員が利益を受けるアイテムだ。なので、このバッグを受け取った人間が、どのように残りの財宝を受け取るべきかというのが論議になった。
 前に「ホールディングバッグを入手した人間はセッション欠席禁止、のようなローカルルールができそうになった」と書いたが、それはこういう前段があっての話だったわけだ。結果的に、私がホールディングバッグを複数登場させたことによって、この話はうやむやで終わった。

 しかし、もう1つはより大きな問題だ。CD&Dに詳しい人であればわかるかもしれないが、「マジックスクロール」の扱いである。スクロールはポーションと同じで、魔法の効果を持つアイテムだ。巻物に記された魔法を1度発動させると、その魔力は消失する。従って、ルールブックに書かれた分類で言えば「一時的物品」に相当するはずだ。
 ところが、このマジックスクロールをマジックユーザーとエルフが使用すると、その効果は「魔法が1度だけ発動する」というものではなく、「スクロールに書かれた魔法を習得できる」というものに変わる(もちろん習得可能なレベルのものだった場合に限るが)。この場合、スクロールを使用したマジックユーザーやエルフにとっては、このアイテムの効果は永久に持続する。従って、マジックスクロールは「受け取るPCによって、永久的物品か一時的物品かが変わる」ということになる。
 しかし上に書いた分配ルールは、受け取るPCによって種別が変わると計算が非常にややこしい。さらに難しいのが、分配ルールを使うと元々マジックユーザーは微妙な立場に置かれがちだということである。というのも、マジックユーザーは装備できる魔法の武具がほとんどないので、永久的物品を入手したいというモチベーションが少ない。代わりにゴールドをもらっても、買える装備がないので使い道が全然ない、という状況になりがちだ。
 これに加えて、実質的に永久的な効果を及ぼすマジックスクロールを「使ったら消えるから」と一時的物品として計算するという話になると、冒険で入手したゴールドを、使い道のないマジックユーザーがほぼ毎回吸い取っていくという話になってしまう。かといって、じゃあマジックスクロールを永久的物品扱いにすると、今度は「何もしなくても習得可能レベルの魔法を全部使えるクレリック」と「何らかの形で魔法を入手しない限り使用可能な魔法が増えないマジックユーザー」との間で不公平感が出てくる。
 結局、この辺りを最後まで解決することができなかったのも、私のプレイグループでマジックユーザーではなくエルフを選択するプレイヤーが多かった理由の一つだった。エルフであれば、魔法の武具を受け取って普通に活用することができるからだ。

他のゲームにはなかった?

 ちなみに、私はこの辺りの事情を「黎明期のTRPGならではのもの」と思っていたが、このエントリーを書くに先立ち、トンネルズ&トロールズのルールブックを読み返してみたところ、こちらには財宝の分配方法は特に書かれていなかった。ソード・ワールドやルーン・クエストでも見た覚えがない。
 となると、動画の中で久保田さんがいうように「CD&D及びごく一部のゲームに特有のルール」といった方が実態に近いのかもしれない。
 なお、上で書いた財宝の分配ルールは、もちろん「入手した財宝が経験値に換算される」を適用した後のことであり、魔法の武具を手に入れたら経験値がゼロになるとかそういう話ではないので、念のため。