奈落を破る者


 まず初めに、できれば今日のエントリは明日のエントリと合わせてご覧いただけると嬉しい。

 9月に発売されるというソードワールド2.5のサプリメント「マギテックアーツ」が面白そうなので、最近ソードワールド熱が割と高めだ。で、これまで存在は把握していたけど買っていなかったサプリメントを買ってみた。本当は、明日紹介するサプリの方が先に世に出ているんだけど、近所で先に入手できたのが今日紹介する「アビスブレイカー」の方だったので、まずこちらを一読した感想を書いていきたい。

交渉の余地のない「敵」

 まず評価できる点について。これはプレイヤーによっては抵抗がありそうだが、「奈落」という「絶対悪」について掘り下げたサプリであるということ。一応断っておくと、「奈落」という存在そのものについては、このサプリが初出ではない。
 何度も蒸し返して申し訳ないが、ソードワールド2.0は基本ルールブックの添付シナリオで、蛮族がベッドをトランポリンにして遊んでいるなんていう、あたかも相手と融和する余地があるかのような演出が時折出てくるが、今回掘り下げられた設定を見る限り、少なくとも奈落に関してはそういった余地はなさそうだ。魔動機すら奈落への接触後完全に敵対的な存在になってしまうということは、PCにとっての絶対悪、つまりブレカナでいうところのマローダーとか、ダブルクロスでいうところのジャームとか、そういった存在として位置づけられている。PCとして選択可能な、奈落側に立つ種族も存在しない。
 ソードワールドは元々、交渉すらルールで処理しないというデザインポリシーだから、シナリオで設定されるのは本来「融和する余地のない絶対悪」である方が望ましいと思うので、そういった存在について掘り下げられたというのは、タイトル全体として見れば良いことだと思う。

使うか使わないかは「自由」

 ただ、そういった存在に抵抗感があるプレイヤーもいるだろう。そういうプレイヤーについては、2番目の評価点である「ソードワールドの柔軟性の高さ」がメリットになる。
 このサプリメントで奈落に対抗する能力を持つ、「アビスゲイザー」と「ダークハンター」という2つの技能が追加される。例えば、通常のキャンペーンをやっていたプレイグループが「ちょっと気分を変えて奈落関連のシナリオをやってみたいな」と思った場合、わざわざキャラクターを作り直さなくても、この2つの技能のうちどちらかを取れば、奈落に有効な能力を習得できる。また「ちょっとやってみた結果、自分たちには合わないな」となって通常のキャンペーンに戻る場合も、わざわざキャラクターを作り直す必要がない。
 これをダブルクロスで追加された「グレイプニル」や、それに対抗する「ミストルティン」シンドロームでやろうとすると、都度新しいキャラクターを作らないと厳しいし、その後通常のキャンペーンに戻るというのもハードルが高い。アリアンロッドは比較的柔軟なシステムだけど、マジェラニカで毎回ハンターに転職するというのもやり辛そうだ。

 また、このサプリメントにはD&Dのダンジョンデルヴではないが、ランダムダンジョンの生成ルールがあるので、導入部分など最低限のシナリオを作成すれば、あとはランダムダンジョンで進めてしまうというのも、GMの負荷を軽減するという意味ではアリだと思う。

あのリプレイは全然関係なかったな……

 次に疑問に思った点について。先ほど言ったダークハンタースキルはBテーブルのその他技能、つまりセージやレンジャー技能と同じ経験値テーブルになるが、その能力は奈落に特化されているので、奈落に関係あるシナリオでないと探索判定がままならない。となると、結局同じBテーブルなのに通常のキャンペーンに戻った時点でセージ技能を取り直す、みたいな話になる(実際、サンプルキャラはダークハンターの他に探索技能を持っている)。能力的にはむしろ、エンハンサーなどに近い役割を想定しているんだろうか。
 また、今回の追加技能を見た時、何故ダークハンター技能は投擲に特化してるんだろう、というのが不思議だった。元々ソードワールド2系列のクラス技能は数だけからいっても魔法使い系の能力に偏っており、前衛であるバトルダンサーですら重い防具が着れないとかいう特徴があったりして、純粋にタンクが足りない。それなのに、追加技能はアビスゲイザーが魔法使い、そしてダークハンターも投擲武器使いなので後衛、というのが疑問だったんだけど……実は、この疑問については解消した。詳しくは明日の「モンストラスロア」で述べる。

 最後は、このサプリメントそのものというよりは、別の関連書籍へのツッコミ。奈落の設定がこのサプリメントで明かされたような存在だとするなら、リプレイ「魔域脱出」は、このサプリの紹介として全く機能していない、というのが正直な感想である。