金の卵を産む鵞鳥は死んだのか

山田祥平のRe:config.sys「パケ死寸前」


 限りある電波資源を有効に、そして平等にという点で、移動体事業各社の言い分は、しごくまっとうなものかもしれない。だが、その一方で、「下り最高××Mbps」などと謳って高速サービスをアピールして高速大容量、いわゆるモバイルブロードバンドを喧伝したり、TV CMなどで、スマートフォンのある便利で豊かな生活を訴求するといったことをしているわけで、消費者としてはは、ふんだんに帯域を使っていいのか、使ってはいけないのか、いまひとつ分からなくなってしまう。


 まさにおっしゃるとおり、だと思う。
 スマートフォンはインターネットもじゃんじゃん使えますよ、動画も画像もツイッターもやりたい放題ですよ、と謳って売っておいて、一方でトラフィックがパンクするから帯域制限しますよというのでは、一種の詐欺と言われても文句は言えまい。
 携帯電話各社は昔から携帯電話の買い替え、端末の販売に鎬を削っており、買い替え需要を掘り起こすべく多機能携帯やら高画素デジカメなどで進化を競ってきた。しかしほとんどのユーザーは簡単なブラウジングと最低限のカメラ(必要なら専用のデジカメを使えばいいだけだし)、メールのやり取りと電話ができる端末しか求めていなかった。性能競争による販売台数の拡大が頭打ちになったところで、スマートフォンという新しいキーワードに手を出したのだと思う。
 携帯電話は時代遅れ! これからはスマートフォンの時代! と喧伝して、端末の買い替えを促そうということなのだろう。
 実際、私の周りにいる年配の人で「スマートフォンに買い替えた方がいいのかねえ」と相談してくる人が何人もいる(別に私は詳しいわけでもなんでもないんだが)。まさにこういう人たちこそ、携帯電話各社がターゲットにしたい人なのだろう(今年始めに書いた光回線のエピソードと同じだ)。聞いてくる人には私はこう聞き返すことにしている。「スマートフォンで何をするんですか?」と。この質問に「ツイッター」だとか「動画を見る」と即答してくる人には買い替えを勧めるが、答えがなかったり「いや、別に携帯で困ってないんだけど」という人には、私はスマートフォンは勧めない。
 ちなみに私より若い人は、小さい頃から携帯端末に馴染んでいるので私などには聞いてこないし、アドバイスできることも特にない(そしてそういった人たちの中でスマートフォンを選んでいるのはたいていツイッターを使いこなしている人)。

 スマートフォンの普及によるデータ通信のパケット制限は、まさに携帯電話キャリア各社がスマートフォンへと移行するプロセスの見込みが甘かったことを如実に示していると思う。端末販売数の一時的な増加という欲求に負けて、携帯電話で培ってきた日本独自のノウハウやメリットを捨てる。しかし、アンドロイドもアップルストアも、根っこの部分を海外の大資本が握る巨大マーケットであり、日本独自の事情など一々斟酌はしない。
 金の卵を産むガチョウを殺したところで、その体は金でできているわけではない。日本の携帯電話各社が海外との熾烈な端末名販売競争に晒されたらどうなるか……PC市場で日本企業が淘汰の道を歩むのと同じ轍を踏まないことを願っているが。


携帯電話各社に帯域制限の実施条件や期間を問い合わせてみた 2011年版


 これってもう実施してるってこと? ってことは、普段意識してないってことは私は全然そこまで達してないってことか。動画あんまり見ないからかな……。