過去のエントリでこのシリーズの過去作品を何度か取り上げたけれど、その都度「最近のファンタジーTRPGは、かつてのモンスターコレクションやアイテムコレクションのように一般化して語るのが難しいので、ハウツー本ならタイトルを特定して語るべきじゃないか」と書いてきたが、最新刊でついに執筆者たちも割り切ることにしたのかもしれない(笑)。
今回のテーマは「魔法学園」。そもそも魔法学園というのはファンタジーRPGで一般的な存在なのだろうか。フォーセリアには図書館がないという話も見かけたことがあるが、よくよく考えてみたら賢者の学院はあったわけだから、ソードワールドには昔から魔法学園に近しいものはあったということになる。またアリアンロッドもエルクレスト学院という魔法学園をテーマにしたサプリメントがある。ブレイドオブアルカナならアクシス達の集う天慧院がそれに当たるだろう。
では、世界最大のファンタジーTRPGの雄であるダンジョンズアンドドラゴンズはどうだろう。エベロンにはありそうだが、フォーゴトンレルムには? これもググった範囲だと、ストリクスヘイヴンという魔法学院があるようだ。
ただ、冒頭に書いたとおり、本書は一般的なファンタジーTRPGのハウツー本として使うのは難しい。というのも、この本の物語は、主人公が魔法学園を訪れ、卒業後に自分がどのような魔術師になるか、適性を調べるという筋書きで進んでいくが、結末部分にある魔法使いの分類が、ソードワールド2.5のみに明確に準拠する内容になっているのだ。
以前、フライングバッファロー社のサプリメントについて触れた時にも書いたが、魔法の系統というのはファンタジーTRPGで最も特色が表れるところだ。巻末で登場する魔法系統には、妖精魔術や操霊魔術などという言葉が出てくるが、これらの用語はダンジョンズ&ドラゴンズにもアリアンロッドにも、ブレカナにも出てこない。
しかし、例えばこの巻末部分をダンジョンズアンドドラゴンズに合う形に書き換えたら、それはダンジョンズアンドドラゴンズ用のハウツー本になるし、ブレカナに合う形に書き換えると、それはブレカナのハウツー本になってしまう。なので、この本がソードワールド2.5に特化された内容になったのは仕方のないことだ。
そのため、本書の巻頭にははっきりと「この本はソードワールド2.5をベースに書かれています」と明記されている。もっと言ってしまうと、この本は大半がソードワールド2.5でないと使いづらい内容だ。魔法学園というものがどういう雰囲気の場所か、というのを掴むという意味では他作品でも役に立つかもしれないが、それにしてもソードワールド1.0時代の賢者の学院やハイデルランドの天慧院が本書のような雰囲気の場所とは考えにくく、この本に登場する魔法学園に近いのはソードワールド2.5とアリアンロッドのエルクレスト学院くらいではないかな、とは思う。
まぁ、それを言ってしまうと、そもそも賢者の学院も天慧院も、内情が描かれたことがほぼない(後者は雑誌のコラムで概略は紹介された)ので、すべてが秘密のヴェールの向こう側なのだが……。