前作セブンスドラゴンのシナリオについては、発売当初からあまりいい評判を聞かなかった。私自身、プレイしてて腹が立ったことが幾度もある。
それは、セブンスドラゴンが「中途半端に古めかしいゲーム」だったからだと私は思う。システムもシナリオも同様に、だ。
シナリオに関していうと、セブンスドラゴンはウィザードリィやドラゴンクエストのように「主人公たちが一切喋らない」比較的古いタイプのRPGだ。自由なキャラ作成を売りにしていることもあって、主人公たちの台詞は「ご自由に想像してください」という意味なのだろう。
しかし、それがシナリオとして成立するためには条件がある。
「NPCの反応が主人公たちに対して最終的に肯定的であること」が必要なのだ。
どういう意味か。主人公たちに台詞がないということは、NPCに話しかけられた内容に対して反論しない/できないことを意味する。理不尽な糾弾を受けても言い返せないのだ。
最初はそれでもいい。
NPCが何らかのトラブルを抱えている(態度が悪い) → PCがそれを解決する → NPCの態度が好転する
これならプレイヤーがNPCのトラブルを解決するモチベーションになる。昔のRPGの多くは単純なシナリオだったこともあり、だいたいこの構図に従っていた。しかし、トラブルを解決しても態度が好転しない、あるいは悪化してしまう場合、例えそれがシナリオ上の必然であったとしても、プレイヤーのモチベーションは著しく下がる。
主人公や仲間たちに台詞のあるRPGの場合は必ずしもこれに当たらないこともある。例えば主人公が事件を解決したにも関わらず町の人に罵声を浴びせられても、仲間がそれを慰めてくれる、というシーンがあればちゃんとしたドラマになるだろう。
しかし主人公たちに台詞のないRPGの場合、罵声を浴びせられたところで話が終わって、その先を想像に任せますと言われても極めて難しい(それができるなら薄い本の一冊も書けるだろう)。
主人公たちが勝手に喋るタイプのRPGだと、プレイヤーに「俺はこんなこと思ってない/そっちにいきたいわけじゃないのに勝手に動く」という不満がたまることがある。いわゆる「ムービーの合間にたまに動かしてるだけ」等と揶揄されるゲームがその極北だ。
しかし、ならば主人公たちに喋らせなければ不満は一切たまらないかというとそうではない。主人公たちが喋るゲームとはまったく違うシナリオの作り方をしないと、話の展開が違う意味で理不尽なものになる。
私がセブンスドラゴンで感じたのはまさにこれだった。強制イベントで起きたことについてNPCから糾弾され(しかもそれは物語上でも主人公たちが責を負うべきこととはまったく思えない)、しかもNPCの態度は全然好転しない。これで「そいつのいうことを聞け」と言われても意気上がらないこと甚だしい。
そのイベントだけではなく、一事が万事そうだ。ドラゴンにまつわるイベントも主人公たちはおいてきぼり(喋らないからそう見える)。困っているNPCはあちこちにいるが、主人公たちとは違うところで話を進めるので「じゃああんたたち勝手にやっててよ」と言いたくもなる。
似て否なるのがペルソナ3や4のようなシナリオだ。キタローも番長も確かに喋らないのだが、仲間たちが代わって主人公の言いたいことを代弁してくれる。だから理不尽と思える展開でもモチベーションを下げずに済む(だからここまでのエントリで「主人公たち」と書いてきたのだ)。菜々子が浚われる直前の番長と堂島のやり取り、あるいはその後の病室のシーンなどどれ一つとっても、仲間たちがフォローしてくれるシーンがあるかないかで印象がまったく違うのは言うまでもない。
つまり、セブンスドラゴンのシナリオに違和感を感じるのは、まるで主人公たちが普通に喋るゲームのようなシナリオを、無理矢理主人公たちが喋れないゲームに持ってきたせいだと私は思う。
象徴的なシーンが冒頭にある。
主人公たちが最初のドラゴンに遭遇し、フロワロの毒で昏睡状態になって数年が経ち……というシーンだ。目覚めた主人公たちはNPCに「お前たちが寝ている間に世界は酷いことになった、お前たちで何とかしろ!」と糾弾される。
しかし、セブンスドラゴンはギルド制のゲームだ。実際、フロワロのイベントが発生する前に私のギルドには既に8人のメンバーがいた。
つまり、フロワロの毒にやられていないメンバーが残り半分いたのだ。
彼らはどうしたのか? 仲間が眠っている間、隣で添い寝でもしてたのか?
シナリオ中では一切言及はない。シナリオを書いた人間は「そして数年が過ぎた」というシーンを演出することしか頭になく、ギルドのことなんてまるで考慮していなかったのだろう。
普通に主人公たちに性格設定があり、自分の言葉を喋るゲームならこの展開も問題はなかったかも知れない。自由にキャラクターを作ってギルドに登録しよう! といういわばシステム面での売りが、シナリオの足を引っ張ったのだ。
もちろん……シナリオに多少アラがあっても、システムがそのアラを隠すほどに素晴らしければよかったわけだが……。
セブンスドラゴンのシステム面については、またいずれ。
このスクリーンショットに収録された台詞を見る限り、セブンスドラゴンのシナリオで何かを学んだとは思えない……というのが正直な第一印象だ。
第一印象を覆す素晴らしいシナリオのゲームだといいのだが……PSPである限り、私が買うことは恐らくないだろうけれども。