ついにきたか

天羅万象(初代)


 ホビージャパンから出版されていた、初代天羅万象ルールブックとシナリオ集「吸血姫」が無料公開開始。

 田中天さんもおっしゃっていますが、天羅初めての人は(たぶんこのブログを見てる人でこれから初めて天羅やろうという人はいないと思いますけど)まずビジュアルブックを読んでください。これがいわば「プレイヤーズ・ハンドブック」+「ワールドガイド」で、システムブックは「ゲームマスターズ・ハンドブック」に相当します(なぜいちいちこんなことを書くかというと、現時点でシステムブックのダウンロード数の方がビジュアルブックより1.5倍近く多いからです(笑))。

 基本的に天羅のシステムはシンプルなので、ビジュアルブックに掲載されている部分だけでプレイヤーは十分にプレイ可能です。ゲームマスターはシステムブックに必ず目を通しておいた方がいいでしょう(無料ですし)。なぜかというと、アーキタイプごとの相性について詳述してある章があるからです。
 天羅万象は業システムの比重が大きく、相性の問題は非常に重要です。普通のファンタジーTRPGの常識は通用しません。普通のTRPGでも、例えばパーティ内に僧侶がいないのに戦士が二人いるのはバランスがよくないとか、そういう相性はあります。が、初代天羅の場合はそれと異なり、相性が悪いと書かれたアーキタイプ同士を選ぶと、セッション崩壊を起こしかねません。
 簡単にいうと、ガチで殺し合いしかねない因縁が設定されたアーキタイプが複数の組み合わせで存在します。例えばオニと陰陽師です。これはSW2で人間と蛮族が一緒に冒険するというレベルの話ではありません。前にも書いたとおり、天羅においては「オニはオニらしく、陰陽師陰陽師らしく」プレイすることが推奨され、業システムがさらにそれを加速するため、かなりの確率でPC間戦闘が勃発し、片方が死亡ゲージを埋める羽目になります。
 もっと酷いのが「立ち位置が被る」とされている組み合わせです。他のキャラと立ち位置が被るくらいなら、PC同士で殺し合った方が見せ場があるだけまだまし、という人もいます。立ち位置が被ると因縁ロールのタイミングが被り、恐らくどちらかのPCだけが気合を稼ぎまくることになるため、もう一人がいないのと同じこと(気合がたまらない→業がたまらない→因縁が作れない/変えられない→最初に戻るの悪循環)にされてしまいます。これは最悪です。
 アーキタイプの相性は、プレイしたことがないと実感が湧かず「どうしてこれが?」と思うような組み合わせがあったりします。例えば、ヨロイ乗りとヨロイ狩りの相性は悪くないとされているのに、若武者とヨロイ乗りの相性が悪かったり。実際やってみるとわかるのですが、ヨロイ乗りとヨロイ狩りはヨロイを挟んで「後輩と先輩」っぽいキャラ付けができ、お互いに相手のロールプレイを引き出すことが可能です。ところが、若武者とヨロイ乗りは「世間知らずな領主の子弟」という立ち位置がまるっきり同じで、同じ場面に放り込まれると反応が同じベクトルになるため、相手と見せ場を食い合ってしまうのです。
 これらはプレイ経験があると恐らく直感的にわかるのですが、セッション崩壊まで「やってみればわかる」というわけにはいきません。なので、GMは必ず事前にシステムブックに目を通しておいた方がいいのです。


 最後に一つ。初代天羅は非常に素晴らしいゲームで、私の一番好きなゲームの一つでもあります。無料配布によって、プレイするハードルがこれまでとは比べ物にならないほど低くなったのは大変喜ばしいことです。
 が、このゲームはデザイナー本人が「ブレーキのないF1カー」と称したほど癖の強いシステムであることは覚えておいた方がいいでしょう。入手しやすいゲームが初心者向けであるとは限りません。シンプルなシステムなので誤解されがちですが、むしろ天羅は経験者向け、それも、とても面子を選ぶシステムです。近年発売されているゲームの多くは、天羅の経験と反省を(もちろん他のゲームの経験と反省も)踏まえてデザインされたゲームであることを忘れるべきではないと思います。


天羅WAR (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

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