本音が出たな

「本はもはや欠陥品だ」――マンガ・小説復権の鍵はアプリにあり!


 過激なタイトルで人目を惹いておいて、本音はここな。

 電子書籍は一度買えば画質も劣化しないし、買い換えのようなことも起こりにくい。マンガワンでは続きを読むための「ライフ」に対して課金を行ったりしているが、電子書籍の値付けは安すぎないか、と思う事はある。

そうやって集めたコンテンツを、外部の媒体にも積極的に提供していきたい。ただし、その媒体が、自らもオリジナル作品の展開を始めるならば話は別。彼らのオリジナル作品の単なる呼び水として、自分たちの作品が利用されてしまうのは困る。


 紙の本は終わりだと言っておいてこの有様。業界でマルチメディア展開に先鞭をつけたといっていい会社の、一番先進的なセクションで考え方がこれだよ?
 今はモノじゃなくて体験に対価を支払う時代だ、とよく言われる(私は反対だけど)。もしそういった考え方に沿うなら、電子書籍という「コンテンツ」に対価を払っているのに、買い替えだの劣化でもう一回買えだの、まるっきり「モノを買わせる」発想だ。「紙は古い」だの「重い」だのと経文のように唱えるだけで、今の時代に対応できると思ったら大間違い。それじゃモノが切り替わってるだけでやってることは何も変わらない。

 機会を与えるので、どんどん「勝手に」出てきてくれれば良い。そのための機能を充実させたり、プロモーションを僕たちは頑張る。

 編集者という言葉がそもそも好きではない。僕たちの仕事は「本を作る」ことではなく、作品やアプリをプロデュースしていくこと。編集や校正の技術よりも売ることが大事で、デジタルマーケティングを理解している必要がある。

 自分は富士見書房出身だが、KADOKAWAによる合併が良いタイミングで行われたと思う。それ以前は、このような取り組みに対しては強い抵抗があった。今は会社の上の方の人ほど新しい取り組みには熱心で、逆に現場の編集部や営業との交渉の方が骨が折れることも。ラノベの編集部でも、本を編集することがゴールだと思っている人は多い。


 そりゃ上の人間は熱心だろう。新人を見つけること、育てることは会社として一番コストがかかるところ。そこをカットすればコストをかけずに「他の場所で既にウケている」人間を苦もなく売り出せる。目先の利益を追う営利企業の発想だ。現場の編集部や営業はなぜ抵抗するか? 考え方が古いとか新しいとか関係なく「次には自分たちが要らなくなる」のが目に見えてるからだ。
 新人賞に応募してくる作品とか、マジで箸にも棒にもかからない作品が山ほどあるものを、見込みのあるものを見つけ出し、編集が改善点を指摘していくことで作品はブラッシュアップされ、今までの作家は育ってきた。その過程を放棄するなら、当然出版社は要らなくなる。だから質疑応答でも「投稿小説は完成にほど遠いクオリティのものも多いではないか」とか突っ込まれてるわけで、それにこの人たちはなんと応えたんだろう。
 作品のプロデュース? 今出版社が尻馬に乗って売り出しまくってるなろう小説なんてのは、プロデュースなんてなくても元のサイトであれだけ読まれている。あれらの存在が、逆説的に「小説にプロデュースなんて不要だ」ということを証明してしまった。機会を与えるとか「場」を提供するのが仕事だとか言ってるけど、そんなもんサーバがあれば誰にだってできる。それこそ出版のノウハウなど何も無いDWANGOにもできたように。


 マイクロソフトもそうだけど「時代の流れに乗り遅れる〜」と慌てて今まで自分たちが持っていた武器をドブに捨て、ヘビー級チャンピオンのベルトを投げ捨てて地獄の減量をしてフェザー級のリングに上がれば、ズタボロにされて当然だ。
 何より私はこのブログで、今まで何度も出版社や編集の肩を持つ発言をしてきたけど、出版社にこういう考え方の人間が増えてくると味方する気も失せてくるんだこれが。どいつもこいつもファウストの太田氏あたりのデッドコピーに見えてくるというか。


 まぁ、そもそもこの記事自体が、うちでも何度か取り上げてるデタラメだらけの電子版ダヴィンチニュース出典っていう時点で何をか言わんや、なんだけど(笑)。