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極大射程 上 (扶桑社ミステリー)

極大射程 上 (扶桑社ミステリー)

極大射程 下 (扶桑社ミステリー)

極大射程 下 (扶桑社ミステリー)


 この本、遥か昔に友達に借りて読んで面白かったんだけど、たぶんその友達から本を借りるのはもう不可能なので自分で買い直すことにした。あちこちの本屋でずっと探していたものの果たせず、結局アマゾンの世話になってしまった。やっぱりロングテールで普通の本屋がアマゾンに勝つのは難しいな……。
 まぁ、今更買ったというのはこれを映像化したハリウッド映画の「ザ・シューター」がとんでもないクソ映画で腹が立ったからっていうのもある(笑)。


(以下ネタバレあり)














 言うまでもなく、この作品の肝は最後の法廷シーンでのこれ──

 あれから何年たっても、ニックは決して忘れなかった。長く血なまぐさいボブ・リー・スワガーの物語のなかで、もっとも音高く放たれた一撃は、同時にもっとも静かな音の一撃だったと。


 このワンフレーズにすべてが集約されている。つまり伝説の名狙撃手であるスワガーが、FBIという敵によって「法廷」という相手の得意な戦場に引きずり出され、万策尽きたかに見えたその時、まさにその名狙撃手の銃が「撃つことができない」という事実を証明することによって相手をコテンパンに打ち負かす。そのカタルシスこそがこの作品の醍醐味であって、それを本当に悪役たちの頭を狙撃でふっ飛ばしまくったら、それはただ単にボブがやってきた無数の狙撃と何も変わらないではないか。
 というか、この小説を読んで最後のクライマックスに銃を使ったアクションシーンを持ってきた映画の脚本家は、原作のいったいどこを読んだのかと問い詰めたいくらいである。