もう一人のピコピコ少年の思い出(20)

 中学に通っていた頃、通学路の途中の本屋の店頭にあったのが、このゲーム。



 ここここを見る限り、まだカプコンなどのベルトスクロールアクションがジャンルとして確立するよりずっと前の、先駆者的存在だ。さらに前の作品であるくにおくんダブルドラゴンにインスパイアされたものだろうか。Wikipediaの一覧に子連れ狼の名前がないのは、前にも書いたが定義の中に「殴る・蹴る・投げ飛ばすの近接格闘戦」とあるため、武器を持って戦うこのゲームは該当しないと執筆者が考えたからかもしれない。
 ベルトスクロールアクションの定義に当てはまるかどうかは別として、このゲーム、なんと「防御」(ガード)ボタンがある。格闘ゲームなどが流行する前のゲームなのに、だ。当時、黄金の城やドルアーガなど、盾を使うゲームはいくつかあったが、ボタンで防御を行うという操作はくにおくんダブルドラゴンはおろか、後のファイナルファイトにもなく斬新だった。このゲームの場合、雑魚戦闘では防御はあまり有効ではないが、ボス戦闘はとにかく敵の攻撃が激しいので、敵の攻撃を防ぎつつ、相手の隙に攻撃を連打するしかないので防御はほぼ必須の行動である。後半面のボス戦をご覧いただければ、その攻撃の激しさがお分かりいただけると思う。



 当時の仲間たちは「子連れ狼」というタイトルは名前くらいしか知らず、ドラマやましてその原作になった劇画版など見ている者はいなかった。改めて調べてみたが、このゲーム版の発売はドラマ放映から11年も経った後のこと。大人向けのゲームにも見えないし、何故この作品が原作に選ばれたのか不思議である。
 ボス戦の前に一瞬入るカットインに「なんだか濃い顔だな」という感慨を抱くのもつかの間、ボス敵の猛攻の前に次々と友人たちは斃れていき、*1子連れ狼の名前はドラマや漫画というより「激ムズゲーム」「なぜかベビーカーからマシンガンを撃つ侍のバカゲー」として記憶されたのだった。もちろん、インターネットがまだない時代、まさかあのマシンガンが原作準拠のものであるなどとは、みな夢にも思わなかったのである。


 そして時が流れ、やたらシュールなオープニングと、時代劇にそぐわぬステージBGMの印象も薄れかけたある日。ゲームセンターでダンジョンズアンドドラゴンズ・タワーオブドゥームを初めて見た私は思わず呟いたのだった。
「これ、子連れ狼だ……」と。
 

*1:上記の動画には、これでも「難易度最弱」と説明文にある。