DQXのシナリオの話

 恨み言ついでに、昨日の話に引き続いてDQXのシナリオの話をしたい。かなりネガティブな話である。

 以下、シナリオの重大なネタバレを含むので折り畳む。













 今年の初めに「Ver.3のシナリオはプレイヤーにストレスを強いるシナリオだ」と書いた。まずはその説明からしていこう。
 前にサマーウォーズのエントリの時にも書いたが「物語が要請するシナリオ上の目的」と「キャラクター個人の目的」は異なるものである。この二つがズレているというのは、ゲーム、それ以外を問わずよくある話だが、Ver.3はその乖離が非常に悪い形で表に出ている。

 ご存知ない方のために概略を説明しよう。Ver.3の冒頭は、Ver.2のエピローグを兼ねた宴席の場、あるいは追加シナリオにおいて、正体不明の人物によりPC(プレイヤーキャラクター)の知己、友人が次々に連れ去られるシーンから始まる。犯人は、何者なのかわからないが竜族であることだけは分かっている。*1
 犯人を追ったPCは、戦闘によって相手を追い詰めるが、敵は異世界への扉を開き、その奥へと逃げ去る。PCもその後を追って、異世界への扉をくぐる。ここまではいい。
 異世界に着くと、竜族の女性が現れ「連れ去られた人物にも誘拐犯にも心当たりはないが、自分が所属する教団は、異世界の各エリアを隔てる境界を越える活動をしている。あなたが探している人にも、行った先のエリアでなら再会できるかもしれない。協力してほしい」と言われ、PCはこの女性と教団に協力することになる──っておかしいだろこの流れ!!


 誘拐犯が竜族、女性も教団も竜族、となれば、良くても中立。普通に考えれば「双方には何か関連があるのでは?」と疑うのが普通だ。*2そこでなぜ女性に協力する話になるのか。「女性や教団が怪しく見えるのは物語上の伏線でしょ? 無粋な指摘しないでよ」とライターは反論するかもしれないが、そういう意味ではない。
 プレイヤーから見て怪しいのはいい。そうではなく“PC(プレイヤーキャラクター)の視点から見て、「明らかに怪しい相手に問答無用で協力させられる」という展開がおかしい”と言っているのだ。
 物語の性質上、次のエリアに進むために教団に協力しなければ話が進まないというなら仕方ない。だとしたら最初の動機付けが不適切なのである。
 サマーウォーズは、物語上の目的と、キャラクターの目的が合っていなかったが、Ver.3はそれどころではない。二つの目的が完全に相反している。

 同じゲームで比較すると、Ver.2のストーリーは良くできていた。PCの目的は「グランセドーラ大陸に辿りつき、その謎を解くこと」であり、そのことと新しいエリアを開拓していくことは、目的が一致していた。
 Ver.3は違う。最初から、新しいエリアに到達することは目的として与えられていない。PCとしては、一刻も早く誘拐された人物たちを家に帰してやりたい。ストーリー上そういう動機付けがされているからだ。新エリアなどどうでもいいのだ。
 この状況を延々(年単位で、だ!)続けた後で「はい、やっぱりこいつらは悪役でした。予想通りだったでしょ?」と言われても、カタルシスも何もない。八つ裂きにしてやりたい連中に無理矢理協力させられたストレスと、陳腐なストーリーに腹が立っただけだ。
 
 なお、おかしいのは悪役側だけではない。誘拐された人間たちとは、行った先のエリアで三々五々再会するが、なぜか皆危機感を持っていないのだ。それぞれの場所で、それぞれに現状を謳歌していたりする。帰ろうとすらしない人物もいる。君ら誘拐されてきたんだよね!?
 どうも、ストーリーの追加に時間を掛けすぎたせいで、最初に書いた物語を忘れてるんじゃないかと疑いたくなるくらい、整合性が取れていない。天羅っぽくいうなら、異世界に突入した時点で“友人たちを助け出す(目的・上級)”の因縁を取らされ、解決も昇華もしていないにも関わらず、ストーリーが進むにつれてどうでもいい因縁をわんさと押し付けられる気分である。
 これがアニメであれば、1週2週寄り道させられても仕方ないと思えるが、Ver.3では年単位で悪役の手伝いをさせられたのだ。うんざりするなんてものではない。


 あとは、ラスボスを殴り倒して、多少なりともこの鬱憤が晴らせるかどうかだが、この状況では望み薄。余計にストレスを募らせる羽目になるだけかもしれない。ゲームシステムの素材はこの上もなくいいのに……残念だ。

*1:実際には誘拐犯は2人いるのだが、この場では詳細は省く。

*2:実際、二人は思いっきり関係者だった。