うーん……

衆院を通過しカウントダウン開始! 違法ダウンロード刑罰化改正法案


著作権法改正案が衆議院文部科学委員会を通過,音楽・映像の違法ダウンロードでの罰則強化へ


 まず指摘したいのは、このエントリを書くにあたって衆議院文部科学省のHPを参照したのだが、政府提出案つまりリッピングを違法とする改正部分の条文は確認できたものの、自公修正案部分、つまり違法ダウンロード刑罰化部分については掲載されていないこと(4gamersでも確認できなかったと書かれている)。可決されたにも関わらず条文の内容が確認できないとはどういうことだ!? と言いたい。
 また、文面も分かりづらい。例えば施行日だが、平成25年1月1日からと書いているところが多いが、リッピング違法化部分は今年10月1日からの施行である。


 内容についてだが、違法ダウンロード刑罰化の方は、今までも刑罰がないだけで違法行為は違法行為だったわけで、仕方ないのかもしれない。罰則がなかったから違反してよかったというわけではない。「音楽業界はこれで本当に売り上げ回復すると思ってんの?」と記事には書かれているが、もちろん、賢い人なら回復するとは思わないだろう。*1外国の例を見ても、違法ダウンロード刑罰化とCDの売り上げには特に相関関係がないという前例が出ているようだが、だからといって違法ダウンロードを放置していいということにはならない。
 ただ、パロディに関する法規定整備などとの合わせ技で、ニコニコ動画などの場で作品を発表しづらくなっていくのだとすると非常に残念で、時代の流れには逆行していると思う。特に、平成21年6月の前の改正の時に「改正によるインターネットへの影響について把握しろ」とか「識別マークの普及しろ」とか「メディアの価格下げろ」とか「著作権関係の手続きの簡素化をしろ」とかいろいろな附帯決議がされたにも関わらず(参照)、そっちはガン無視で厳罰化だけ進めるというのは納得しがたいという意見も分からなくはない。 


 個人的にはもう片方の、リッピングを違法とする法整備の方が気になる。
 まず、法案そのものの条文からは対象にCDが含まれていないことが読み取りづらい。改正案の概要には

現行法上、著作権等の技術的保護手段の対象となっている保護技術(VHSなどに用いられている「信号付加方式」の技術。)に加え、新たに、暗号型技術(DVDなどに用いられている技術)についても技術的保護手段として位置づけ、その回避を規制するための規定を整備

 とあるものの、条文そのものにはもちろんCDという言葉もDVDという言葉もないどころか、むしろ音と影像が併記されているからだ。もしCDのリッピングが違法行為に含まれるとなったら、手持ちのCDから今普及しているiPodやソリッドタイプのウォークマンにデータを転送できないことになり、CDの売り上げは増えるどころか激減するだろう。
 で、DVDのリッピングについてだけれども、概要には「DVDに用いられている暗号化技術」となっている。これは、DVD全てが対象なのか、それとも暗号化されている市販のDVDだけが対象なのか、この文章からだけでは判然としない。
 例えば、私はアナログ時代にビデオ録画したテープをDVDに転送し、保管している。これが超がつくほどかさばるのでデータ化してHDDに入れてしまおうかと思っていた(もちろん私自身が録画したものだからノンプロテクトだ)。もしあらゆるDVDのリッピングが違法になるなら、私がやろうとしていることもそれに該当する。もちろん、私が著作権保有しているわけでもなんでもないデータだが、データの保持形態を変えようとするだけで違法になるというのなら、いささか残念だ。

*1:説明議員は回復すると思ってるのかもしれないが……。