残念と残念の復讐


 実は、昨日の話には後日談がある。

 先日、私はSony Tablet Pを持って外出した。特に深い意味はなく、Pをウォークマン代わりにしたらどれくらいバッテリがもつのか試してみたかったのだ。
 一応、PはPSPgoなどとは違い音楽再生時にはディスプレイへの給電を切ってくれるため、ウォークマン代わりに使うことは不可能ではない。持ち時間は公称16.5時間。これがPSPgoだと、音楽再生時にもディスプレイへの給電を切らない仕様なので、5〜6時間程度しかもたない。
 ただし、Pに直接イヤホンジャックを差すのはかなり取り回しが悪くなるし、音量調節のために本体を持ち、巻き戻し・早送りのために画面をいちいち開くのはかなり不便だ。そのため、上記のブルートゥースイヤホンをセットにして使うことにした。なお、本機にNFC機能は付いていない。──この時点でオチが読めた人は相当に勘のいい人だと思う(笑)。


 私はとある品を探して店に入ったのだが、在り処がわからず店員に聞くことにした。店員曰く、探しているものはCD売り場にあるという。
 案内されてCD売り場に着くと、店内でかかっている曲がやたら古めかしい。10年以上前のアニメの主題歌である。
「店員の趣味か……?」
 首を傾げつつレジに並び、会計を済ませると、今度はやたら古いゲームのサントラがかかりはじめた。
「なんだか親しみの持てる選曲だな」
 そんなことを考えつつ、店員を呼んだときに外したイヤホンを着けると、音が全くしない。
「あれ……?」
 ブルートゥースの接続を確認し、Pの画面を開いた瞬間、私は事情を察して蒼ざめ、そして反転して赤面した。


 親しみが持てるのも当然だ。それは私のTabletから大音量で流れていた曲だったのだから! シャッフル再生モードだったのが災いして、自分の端末からランダムに選曲された曲が流れているとはまったく気づかなかったのだ!
 
 理由はわからないが、恐らくイヤホンを外した前後で、何らかの事情でペアリングが外れたのだろう。そこで停止するか音量がゼロになってくれればいいのだが(iPodTouchなら、再生中にイヤホンを引き抜けば音量はゼロになる)、そのままの音量で店内に曲が流れ続けたわけだ。案内してくれた店員もレジの店員も何も言わなかったが、さぞかし怪しい客と思ったことだろう。
 帰宅してから慌ててネットを探したが、どうやらこういうケースは珍しくないらしく、電車内でいきなり大音量で音楽が流れて恥ずかしい思いをしたとか、体験談が色々書かれている。Androidにはこれを防ぐ専用のアプリも(複数)あるらしい(例えばこれとか)。が、アプリのレビューにはインストールしても曲が流れ続けたなんてのも書き込まれていて、評価はバラバラだ。


 道具は持ち主の心を読む。長年の愛用機が代替機を買ってきた途端壊れたり、愛想を尽かそうとした途端意外な使い道が見つかって寿命が延びたりする。Tablet Pは、私が「こいつマジつっかえ!」と内心で思っていたのを読み取って、ささやかな復讐を果たした、のかもしれない。