恐るべき女、マリー


 さすがにBC自由学園は登場しないか……。

ガルパン最終章第1話(2回目)

 というわけで、最終章第1話をもう一回見に行ってきました。そろそろ空いた頃だと思ったので、立川の極爆上映へ。


(以下、ネタバレあり)












・相変わらず極爆の音響はさすが。橋の上で砲撃を受けるシーンでは体がビリビリ震えた。


・OPを目を皿のようにして見たが、気付いた点はそう多くない。とりあえず、猫が増えてた……。


・前回、プラウダ高校がOPに登場してないように見えたんだけど、他の学校のような単独の見せ場じゃなく、大洗のチームに混じって登場していた。これは何かの伏線……?


・桃の留年阻止で気勢を上げるシーンで、なぜかホシノ(?)だけがハンドルをくるくる回すポーズをしている。どういう意味だ?


聖グロリアーナ女学院のシーン。桃のことを「大洗初の留年とは気の毒」といった直後に「ダージリン様は留学が決まってよかったですね」というオレンジペコ。──もしかしてダージリン成績悪いのか?(笑)


知波単学園のシーン。机の上にノートを広げているのは福田しかいない(笑)。しかも恐ろしいのは、このシーンが「戦術研究会」のシーンだということ(黒板に書いてある)。


アンツィオ高校。一人だけパスタを手に立っているペパロニ。ついに取り繕うのをやめたのか……(笑)。


・継続高校は「大会には参加しない」「冬は孤独の季節」と言っておきながら、今回はしっかりと観戦席にいる。


・トーナメントのシーン、このシーンも目を皿のようにして見たが、そもそも桃がくじを引いたのがかなり前半らしく、はっきり決まっているのはボンプルとアンツィオの対戦だけ。それも反対側のリーグである。


・偵察ビデオ、アキヤマフィルムの下にMBM? とかいうアルファベットが見えるが何の略だ……?


・「ノーモアエスカルゴ定食」のシーンの垂れ幕は「食卓に醤油を」。醤油がないのも嫌だな……。


・さて、今回2回目の鑑賞の主題はなんだったかというと「大洗は何故危機に陥ったか?」だった。というのも、1回目の鑑賞はどうしてもストーリーを追うのに精一杯で、戦場の推移を分析するのが難しいから。普通に観ると、優花里の偵察が読まれ、いわば「盤外の戦い」で大洗が遅れをとったのは読み取れたが、「盤上の戦い」つまり実際の試合中で、その油断がどうやって不利に繋がったかがよくわからなかったのだ。で、2回目を観てみたところ、マリーがとんでもなく恐ろしい女だというのが理解できた次第である。


・事前偵察で油断を誘われたのは前にも書いたとおり。では試合中には何が起きていたか。実は試合開始直前にも、BC自由学園は徹底的に大洗を欺瞞する作戦を取っている。それが沙織が見ているテレビ画面からも確認できる。


・遅れて到着したBC自由学園チームは、二手に分かれ、蛇行しながら時に主砲を発砲しつつ前進している姿が映像に映し出される。これが既に罠である。


・試合開始直後、優花里は敵チームの動きについて「敵は二手に分かれてそれぞれにフラッグ車を狙っている」という。最初に見た時は、ここが不思議だった。大洗は敵チームがフラッグ車を狙って進行していることはちゃんと把握していたのだ。それなのに何故あそこまで完璧に罠に嵌まったのか。結論から言えば、マリーによって進撃速度を錯誤させられていたため、対応が間に合わなかったからである。


・見直して感じたが、BC自由学園の作戦は実に狡猾だ。マリーも押田も安藤も、大洗が偵察車両を放ったことを知っていた。気付いていながら意図的に追尾させたのである。そして、偵察車両を見通しの悪い場所(市街地と森林)に誘い出す。誘い出したところで散発的に発砲し、偵察車両を足止めする。この時点でレオポン、アヒルは「敵に気付かれた」というが、前述のとおり、BC自由学園はこの時点で気付いたのではなく、最初から追尾には気付いている。


・そして、追尾を足止めしたところで、わざとしんがりの1輌だけをその場に残し、後の3輌ずつを主戦場へと急派した(二人が帽子を被り直すシーン)。これが、試合冒頭の欺瞞の意味だ。主戦場に急行するシーンで、BC自由学園はそれまでの2〜3倍のスピードで進軍している(画面の上の話なので、演出もあるだろうけど)。みほは当然、BC自由学園の戦車の最高速度は把握していただろうが、仲間割れし、蛇行しながら砲を撃ち合うようなチームは最高速度で進行してこないと思って(思い込まされて)いた。もちろん油断もあっただろう。冷静に考えれば、格下の戦車1輌相手に、敵チームが4輌も投入し、しかもその場にとどまり続けることなどあり得ないと気付いたはずだ。なお、みほが油断しているのが一番よくわかるシーンが、一列縦隊を命じられてフラッグ車を先頭に隊列を組むシーンである。


・偵察車両も騙されていたため「敵に気付かれた」とのみ報告し、敵の主力がその場を離れたことに気付かず、報告もしていない(そのためにわざわざ見通しの悪い場所に誘い出したのである)。結果、隠密性を重んじたみほは橋を渡るにも「慎重に」といい、ゆっくりと渡ったため、渡りきる前に敵主力に包囲される羽目になった。


・橋を慎重に渡らせたことだけでなく、最初に偵察車両を派遣したのもみほの意見具申によるものであり、桃の言うとおり偵察を出していなければ、安藤と押田の欺瞞に引っかかることもなく、力押しでマリーのところに辿りつけたかも知れない。大洗が直接フラッグ車を狙うことも、渡河して橋を渡ろうとすることも、偵察車両を出すことも、マリーの読みどおりである。逆にいうと、彼女の作戦は、どれか一つでも読みが外れれば成立しなかった。大洗が押田と安藤のチームを各個撃破しようとしていたら? 偵察車両を出さなかったとしたら?


・繰り返すが、みほの作戦は、徹頭徹尾ほぼ完全にマリーに読まれていた。偵察車両に至っては「わざと撃破せずに生かして残す」ことまでしている。少なくとも片方は八九式、4対1で包囲すれば簡単に撃破できるだろうが、当然大洗に警戒される。だからあえて生かしておいて誤った報告を上げさせたのだ。劇中で麻子が「偵察に来るのを読まれていたのかも」という台詞。これもダブルミーニングになっている。一つ目は「優花里の偵察を知られていた」という意味であり、もう一つ「偵察車両を出すことを読まれていた」という意味にもかかっている。マリーが途中で勝利宣言したのも当然なのだ。


・ニコニコにあるみほの自己紹介動画で、みほをラインハルトやヤン・ウェンリーと呼ぶ人も見かけたが、私の印象は違う。プラウダ戦の前半、大学連合戦の前半、みほの作戦は結構敵に読まれるし、失敗もしている。


・では、みほの恐ろしいところはどこかというと、その後である。不利な状況に追い込まれ、普通なら消沈するシーンでも、彼女は復帰が早い。廃校の危機を乗り越えた大洗のチームは、タフさを身につけた。完敗と呼べる状況から、マーク6を利用することで、わずか数分で平常心を取り戻し、危機を克服してみせた。


・勝ちを確信していたマリーが即時撤退を命じたのは、恐らくこの切り替えの速さを恐れてのことだろう。これだけ周到に張った罠を食い破られたら、どんな軍師でも驚いて当然である。


・なんだか、結論まで書いたらマリーというよりみほが怖い女になってしまった(笑)。後は、来月(!)円盤が発売されてからゆっくり観るとしよう。