ガルパン勝手に考察、昨日の続き(劇場版ネタバレはありません)

TVアニメ『ガールズ&パンツァー』オリジナルサウンドトラック

TVアニメ『ガールズ&パンツァー』オリジナルサウンドトラック


 西住まほについては、二次創作では赤座あかねのような“例のアネ”扱いしている作品もあるものの、実はTV版そのものでは印象は良くなかった。


 まず、初登場が2話の戦車ショップでのTVインタビューのシーンで、戦車道における勝利の秘訣とは何かと問われ「諦めないこと、どんな状況でも逃げ出さないこと」だと答える場面である。これをみほが見てがっくりと気落ちし、慌てて沙織や華がフォローに入っている。
 これがみほに向けた台詞だとすると、露骨に当て付けのように聞こえる(この時点では)。
 次の登場が戦車喫茶の場面。まほの第一声は「まだ戦車道をやっているとは思わなかった」である。そして、みほを煽りまくるエリカに対し、特に制止する様子を見せていない。この2シーンだけを見ると、普通、まほはみほが嫌いなのか? という印象を持つだろう。
 ところが、続いて麻子の祖母にまつわるシーンとなると、まほは突然協力的になったように見える。そして、しほの前でみほを庇おうとするまほ。見ている側としては「あれ? あれ?」となる。



 これも、TV版、OVA版、劇場版を通して見ると、まほの思惑らしきものが見えてくる。

 最初のインタビューシーンだが、(メタ的に言えば)作中に登場する以上意味のないシーンではありえない。これはやはりまほからみほに向けたメッセージである。後半を答えるところでインタビュアーから目線を外し、画面を正面から見据えるところがそれを暗示している。ただ、後のストーリーを追って初めてわかるが、まほはみほが戦車道から逃げたことを糾弾しているわけではない。そもそも質問が「戦車道の勝利の秘訣」であって「西住流の勝利の秘訣」ではないところがポイントだ。画面の向こうにいるみほに対するメッセージとしては、昨日取り上げた華の台詞と補完し合う。
「みほ、お前は西住流に納得できなかっただけで、戦車道が嫌いになったわけではないはずだ。西住流でなくてもいい、戦車道そのものからは逃げ出さないでほしい」というのが、まほがあの答えに込めた想いだったのではないか。
 しかし、それはテレビのインタビューへの返答であって、みほのリアクションそのものを確認することはできない。そして次に、戦車喫茶で対面するシーン。まほの心境はどのようなものであったか。

 安堵、だったのではないだろうか。



 大洗女子学園は戦車道を廃止していた学校である。その学校に転校して行った以上、みほが戦車道を続けるとまほは思っていなかったはずだ。だからこそインタビューを通じてみほに前述のような思いを伝えた。
 しかし、予想に反してみほは大洗女子学園から戦車道大会に出場した。戦車道を辞めてはいなかった。隣にエリカがいなければ「大会で戦おう」とか「頑張れ」とか声を掛けたかもしれない。だが、彼女は西住流の家元の娘であり、黒森峰の隊長である。立場上、肯定的なコメントはできなかったのだろう。
 ついでだが、このシーンはよくできている。実は、まほは一言もみほを糾弾する台詞を発していない。直接口にしたのは先述のとおり「まだ戦車道を続けているとは思わなかった」だけだ。これに対し優花里が「お言葉ですが〜」とみほを擁護する発言をするため、視聴者は全体的な流れとして「まほとエリカがみほを糾弾した」っぽい印象を受けてしまうが、これは完全にミスディレクションである。
 そして、一見一貫していないように思える麻子への協力。まほが表明したとおり、戦車道はスポーツであり、敵チームであっても戦車道精神に則り試合外では相手に協力する。また同時に、みほが戦車道を続けるのであれば自分は味方する、という態度の表明だったようにも思える。

 そうやって全体を俯瞰して見てみると、西住まほの態度はTV版から劇場版に至るまで一貫している。「みほの戦車道を見てみたい」だ。リトルアーミーでは「自分の戦車道を見つけろ」とはっきり言葉に出したまほ。映像化されている部分では該当する台詞はないが、彼女のとった行動を見ると、結果的に同じことを語っていると言える。

 ちなみに、まほは“例のアネ”かというと、TV、劇場版を通して姉妹としての親愛の情は当たり前に持っているが、それを超える感情は持っていないように見える。むしろ、シスコンだとすればみほの方ではないだろうか(笑)。