そして、萩原雪歩

THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 09 萩原雪歩

THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 09 萩原雪歩


 今回、アイドルマスター2が発表されたライブにおいて、1日目にはほとんど変更がなかったと思われながら、実は一番大きな変更があったのが雪歩だ。声優変更である。

 誤解を恐れずいうなら、今回のバンナムの対応は、過去の失敗例を生かした、現段階で考えられる中ではほぼ最良の選択だったと思う。
 前の声優の降板については、もうどうしようもない。私はこれはバンナムからの打診ではないと思う(クイズマジックアカデミーでも、同じく看板の人気キャラ、アロエがキャラごと抹消されている)。恐らく本人が自分の意志で声の仕事を次々に降板しているのだろう。
 だとすれば、キャラごと消すか中の人を変えるか、二つに一つだ。しかし、2でキャラを大幅に入れ替えるならともかく、他の全員が続投しているのに雪歩だけが登場しないというのは不自然だ。とすれば選択肢は一つしかない。


 ことあるごとに引き合いに出してしまうが、かつてセンチメンタルグラフティというゲームも、2で12人の声優のうち1人だけを入れ替えたことがある。その時はメーカーは一切何の告知もせず、前の声優からコメントも取らず、理由も明かさなかったためにユーザーからは総すかんを食ってしまった。そのキャラがユーザー人気が高いキャラ(*1)だったことが災いし、メーカーへの不信感をますます増幅するのに一役買ってしまった。
 それに比べれば今回のバンナムの一連の対応(交代そのものではなく)は、ユーザーコミュニティへの影響をよく考え、できるだけフォローしたと言えるのではないだろうか。
 ネガティブになりがちな話題をイベントという大舞台であえて発表し、ほぼ同タイミングで旧声優からコメントを取り、新声優のインタビューと共に公表する。憶測や噂が広がるのを未然に防ぐ。バンナム側にしてみれば、キャスト交代は回避不可能というのを前提にすればこれ以上の対応はしようがないし、ユーザー側も望みようがない。


 まとめサイトなどでは「大人の事情か?」と言われていたけれど、雪歩の前の声優に関して言えば、ライブに参加できないのは仕方がないとしても、アイドルを題材にした作品のキャラソングCDでキャラの声が出せていない時点でマズいという気がする。しかもこのCD、発売日が大幅にずれこんだりもした。
 だが、ここまでに至る経緯がどうあれ、今回の交代劇で彼女が取った態度は大人の態度だ。それが彼女のファンにとっては最大の慰めではないだろうか。 
 もちろん、一番いいのが声優を交代しないでそのまま続けることであることは確かだ。しかし、これがお互いに仕事である以上、降りようとしている人間を強引に慰留しなければならない義務は、少なくともバンナム側にはない。
「ブログや電撃オンラインに掲載されたメッセージは本人の意志じゃない、無理矢理言わされているんだ!」
というのであれば事情は変わってくるが…少なくとも昨今の彼女の言動からは、それは読み取れない。
 

 正直に言えば、キャスト交代も無理のないことだと思う。何しろアイドルマスターのプロジェクトが始まってから8年以上経っているのだから。8年も経てば本人の事情も変わる。周辺の事情も変化する。怪我や病気や不測の事態があってもおかしくない年月だ。むしろ、アイドルマスターリリース後に結婚した二人の声優を含め、他の人間が一人も交替しなかったことの方が驚くべきだろう。
 去る者は追わず、来る者は歓迎する。声優個人のファンでなくアイドルマスターのファンならば、新しいキャストを温かく迎えつつ、去って行く者の前途を幸運を祈るのが、あるべき姿ではないだろうか。


 そして、もし先人の失敗からバンナムが学ぶのであれば、一度変えたキャストは戻すべきではない。セングラは一度変えたキャストを後継作で元に戻してしまった(*2)ために、更なる迷走を印象付けてしまった。今度の一件は美希の移籍騒動の時のようにはいかない。