事実と真実


 声優の交代で一番落胆したのは、アイドルマスターを通して声優個人のファンになった人、あるいは声優個人のファンからアイドルマスターというゲームに触れた人だろう。前者はともかく後者の人については、このゲームから離れていっても仕方がない。

 が、それはそれとして、今回の交代劇でどうも奇異に思うことがある。交代が発表されたライブの報告で、時間が経つごとに交代を嘆く人の目撃報告が増えていっている気がするのだ。
 タイムラインの表示されるツイッターはともかく、まとめサイトを観ている人はあまり意識していないかもしれないが、実はライブ終了直後、あるいはライブ中?の報告には、それほど大袈裟な者は少なく、ほとんどの報告が「クレジットに別人の名前が表示されてざわざわしだし、ガミPが交代を告げてどよめき、新声優が登場した」という流れを報告していたのだが、時間が経つにつれて「サイリウムを地面に投げつけた人がいた」「女性のファンらしき人が地面に崩折れた」「交代が告げられた時ブーイングが上がったのをあずさの中の人がなだめた」とか、初期の報告になかった場面が増えてくる。
 私はライブには参加していないので、これがまぎれもない事実であったら誠に申し訳ないのだが、もしこれだけ印象の強い出来事があったのなら、最初の報告者がそれにまったく触れなかったのはどうにも不自然な気がする。

 かなり早い段階で報告に挙がっていたのは「雪歩の中の人の名前が入ったTシャツを着ていた人が、それを脱いで会場を出ていった」という報告だ。しかしこれもかなりできすぎている気はするし、そもそも雪歩の前の声優は今回のライブにこないことはかなり前に告知されていたわけで、こないことがわかっているライブにわざわざ名前の入ったシャツを着てくるか? という疑問がわかなくもない。


 いずれにしても、これらの報告が事実であるにせよそうでないにせよ、交代を巡るゴタゴタとしてネガティブに働くことは間違いない。仮にこれらに誇張や創作が混じっていても、それはいろいろなところで繰り返し取り上げられることによって「真実」になる。これが言霊の恐ろしいところだ。
 事実を報告するな、というわけでは決してないが、面白おかしく騒ぎ立てることは誰にとってもプラスにならないはずだ。特に今回の件に関しては。


(*1)センチメンタルグラフティというゲームには12人のヒロインがいるが、12人のうち2人は別格のメインヒロイン格とされる。うち一人北海道のヒロイン「沢渡ほのか」は、主人公が12人のヒロインを捜し歩くきっかけになった「無記名の手紙」を投函した人物であり、事実上の正ヒロイン。ここで話題になっている声優交代をしたのはもう一人の青森のヒロイン「安達妙子」といい、他のヒロインたちが主人公と過ごしたのがほぼ半年とされるのに比べ、3年間も一緒におり、実質的な幼馴染である。


(*2)センチメンタルグラフティ2では声優を交代したが、2の後に発売されたゲームの前日談にあたるエピソードをまとめたゲーム「センチメンタルグラフティ 〜約束〜」では元のキャストに戻された。