戦車レースの光と影再び?(2)

Role&Roll Vol.90

Role&Roll Vol.90


 さて、後半である。今回もネタバレ上等でお送りする。










後編・デリーレの谷に惑う

 後半はうって変わってダンジョンアドベンチャーである。オープニングでは前編で半ば無理やり顔見知りになったかもしれないNPC(アリエラ)が、何故かいつの間にか同行していることになっている(前編にそのことに関する記述はない)。
 冒頭アリエラは一方的に物凄い勢いで喋りだし、その量は状況説明と合わせて60行にも及ぶが、途中PCが口を差し挟める場所は一箇所だけである。なお、そのポイントで「お前は《シナリオの舞台となる場所》出身なのか?」と聞くと、頼んでもいないのに勝手に報酬を増額する依頼人という面白い場面に遭遇する(笑)。
 なお、ダンジョンアドベンチャーであるから前編のようなことにはなるまいというプレイヤーの予想を打ち砕くかのように、なんとこのシナリオには31個の部屋を持つダンジョンが登場する。加えてランダムテレポーター付き。
 しかも、この31の部屋のうちイベントが発生するのは5箇所、つまり5/6は徒労である。さらに、その場所は「無作為」である。一つ一つ事実が明かされるたびに悲鳴を上げたい気分に駆られる。なお、このシナリオはGMにマッピングしろと推奨しているのだが、それだったらあらかじめPCに地図ごと渡してしまった方が100倍マシな気がするのは気のせいか。

 このシナリオには「(PCたちが追っている)男をかばってしまったために両親を暗殺者に殺された少年」とか、シナリオの鍵になりそうなものは登場するのだがことごとくスルーされる(暗殺者はダンジョンで勝手に死んでいる)。少年はアリエラが引き取ることになるのだが、冒頭であれだけ喋ったにも関わらずなんと彼女は冒頭にしか登場しないので、少年との心の交流を描くシーンもない。
 何のためにダンジョンを突破するかといえば追っている男がそこにいるからというだけである。極めつけに、ダンジョンを突破するとダンジョンに居付いてしまった住人たちから何故か逆恨みされるというおまけつきだ。

 遊んでみもしないで、という人がいるかもしれないが、ちょっと考えてみてほしい。セッション時間が4時間あったとして、オープニングとエンディングに30分ずつ、戦闘に1時間、残りをダンジョン探索に費やしたと仮定して(ちなみにこのシナリオは本当はダンジョンに入る前に長いシーンがいくつかある)、一部屋の探索を何分で終わらせればこのシナリオが終わるか。なんと4分しかない。1部屋8分かかると6時間シナリオである。その結果が恨まれて終わりなんてカタルシスのないシナリオ、私はGMとしてもプレイヤーとしてもプレイするのは御免蒙りたい。戦車レースの光と影体験は、1度すれば十分だ。