私とDQX


 というわけで、ドラゴンクエスト10の話である。正直言って、最初はあんまり期待していなかった(期待していたのなら発売日からプレイしている)。ただ、こちらもFF11を一緒にやっていた(昨日書いたのとは別の)人から誘いがあったので、FF14と平行(というかこちらが微妙に先)でスタートする形で始めてみた。以降は、基本的に私がプレイしてきたFF11と比較するような形で書いていく。

 一言で印象を表すなら、いい意味で「ゆるい」。

 操作は一目でわかりやすく、その代わり慣れてもショートカットすることはできない。どんな熟練者でも「じゅもん → ホイミ」と選択しなければ実行できない。その代わり、FF14の画面のように開いた瞬間「なんだこのアイコン??」とはならない。延々とチュートリアルが続くこともない。わかりやすさと便利さのどちらを取るか。これは良い悪いではなく、設計思想の問題だろう。
 そして、私がドラゴンクエスト10で一番高く評価しているのが「サポート仲間」システムだ。最初、人から説明を聞いた時はピンと来なかったが、実際使ってみたらこれほど秀逸なシステムはない。正直、このシステムをなぜFF11とFF14に逆輸入しないのかわからないくらいだ(もしFF11に搭載してくれればその日から復帰してもいいとさえ思っている)。

サポート仲間の話

 簡単に「サポート仲間」システムの説明をすると「自分がログアウトする時、自分のエイリアス(分身)を酒場に預ける」という、これだけだ。誘ってくれた知人は「自分がログインしていない間に経験値が入るシステム」という面で評価していたが、私の見る限り、このシステムの真価は誘う側、使う側にある。

 サポート仲間システムは、ソロプレイとパーティプレイの間を埋めてくれるシステムである。

 私が最初評価していなかったのはFF11のフェローのイメージがあったせいだが、サポート仲間はフェローのようにMPを使い果たすまで意味のない支援魔法をかけ続けたり、寝かせた相手を殴って叩き起こしたり、バカな動きはしない。相手のレベルによって支援魔法を掛け分けたり、相手が怒り状態になったらそれを鎮める技を撃ったりと行動はある程度適切だし、作戦設定によって自分のサポートに徹する、MPを節約させるなどいろいろな指定ができる。
 それでいて、やはり人間には及ばない。パーティ全員がプレイヤー操作状態にあるのに比べれば、動きの精度は落ち、対応力も下がる(特に回復役と盾役に顕著)。エンドコンテンツや最新のコンテンツはやはり、人間同士のパーティでないと攻略できない難易度になっている。このさじ加減が絶妙だ。人間とパーティを組む気がなくなるほど強くはなく、かといってフェローのように使う気が失せるほど弱くもない。
 このサポート仲間システムがあるおかげで、FF11であれば諦めてしまうような状況でもDQXなら詰みにならずに済む。

 例えば、時機を逸し、3時間シャウトしてもメンバーが集まらないミッション(DQXではストーリークエストと呼ぶ。そもそもDQXにシャウトはないが)。

 例えば、敵は強くないがドロップ率が低く、お手伝いに全くメリットがない、クエストのクリアに必要なアイテム集め。

 例えば、ソロで戦うことが非常に困難な職業での、ごく限られた時間(15分とか)あるいは離席を挟みながら(子育てとか)のレベル上げ。

 特に、最後の「ソロで行動することが困難な職業でもできることが飛躍的に増える」効果は非常に大きい。レベル上げのみならず、その他の場合であってもだ。FF11をやっていた初期、ケアルもなく殴ってもダメージがスズメの涙だった詩人しかあげていなかった頃は、一人ではまともに素材狩りすらできなかった。しかし例えばDQXで同じような位置づけにある魔法戦士が、一人で出かけるのにためらうようなことはことはまずないだろう。

「明日? うーん、仕事次第なんでまだわかりません」

 「中の人の存在を気にせず、いつでも好きな時に始めて、いつでも好きな時にやめられる」おかげで、知らない人とのパーティに参加する機会は減るかもしれない(やろうとしていることの難易度によってはわざわざ人を集めなくてもサポート仲間で用が足りてしまうから)が、仲間同士では逆に一緒に行動しやすくなる。
 社会人LSに所属していた人は思い当たる節があると思うが、例えば「LSメンバーと一緒に遊びたいが、今日ログインしてくるかしてこないかわからない」なんていう時、野良の募集に乗るかどうかは非常に迷う。乗ってしまえば途中で抜けるのには気を使うし、さりとてくるかどうかもわからない人を待ちながらずっとソロでいては、できることが非常に限られてしまう。
 しかし、DQXならサポート仲間と一緒に遊ぶという道がある。フレンドがログインしてきたら、サポート仲間を待機にすればいい。加えて便利なのが、自分とフレンドのサポート仲間を混ぜてパーティを作れることだ。FF11だと4人いなければできないことは4人集まるまで待つか、なんとかして4人をかき集めてこない限り進められないが、DQXでは自分、フレンド、サポート仲間、サポート仲間というパーティも編成できる。
 ソロとパーティの間を埋めるということは、開発としてもコンテンツの難易度緩和がやりやすくなる。人間パーティ向けの難易度をサポート仲間パーティ向けの難易度まで低くするだけで事が済むからだ。実際、かつては人間4人のレベル50のパーティでなければオールクリアが困難だった各種族出身国のストーリークエスト、及びメインストーリークエストも、現在ではレベル50の自分とサポート仲間3人ですべてクリア可能だった。実装からかなり時間が経っており、希望者も少なく、もし野良パーティのみで進めようと思ったらかなりの苦労を強いられたことだろう。
 これがFF11だと、パーティ向け難易度より低くするとなるとソロ向けにするしかないので、難易度を激変させないと対応できない。結果としてアドゥリンのように「適宜難易度調整をします」と言われても「信用できん」という話になる。例えば今から9年前(!)に発売された「プロマシアの呪縛」ミッションの最後のボスは、現在でもソロ攻略は困難(ジョブや武器限定)である。

進化した「リッカの宿屋の仲間たち」

 もう一つ重要なことは、サポート仲間はフェローと違ってNPCではなく、プレイヤーが存在する、という点である。今まで書いてきた「サポート仲間は中の人がいないから気楽に使える」という話と矛盾するかもしれないが、思い思いの装備に身を包み、思い思いの能力を持った「プレイヤーキャラクターの影」であることは、単なるNPCが仲間になるというよりもやはり面白い。
 前にドラクエ9をプレイした時、すれ違い通信で増える「リッカの宿屋」の冒険者たちについて「彼らと一緒に冒険に出れれば面白いのに」と書いたことがある。サポート仲間システムこそ、まさにそれなのだ。

 同じ時間にログインしていなくても、歩調を合わせて行動しなくても、お互いにお互いの冒険に影響を与え合う「ゆるい」パーティプレイ。

 自分が頑張ればその分がサポート仲間の経験値としてプレイヤーに貢献できる、という点も面白いし、装備などを変えることでサポート仲間の行動が変わるという形で個性が出るのもいい(例えば魔法戦士は、杖を持たせて預けると支援魔法をふんだんに使ってくれるが、弓を持たせて預けると弓をガスガス撃ちまくって魔法をあまりかけてくれない)。
 人気ジョブ、適切な装備で預けておけばログアウト中引く手あまた、飛ぶように売れ、経験値がガンガン入ってくる。だからといって、マイナージョブ、マイナー装備のキャラをプレイしても、パーティプレイを半強制されてログインしてる間ずっと緑玉を出したまま待ちぼうけを食わされたり、参加希望のメッセージを送ったら「そのジョブの人はちょっと……ごめんなさい」などと言われて悲しい思いをすることもない(あえて言えば出かけるときはマイナージョブで、預けるときは人気ジョブに転職すればいいのだが)。
 DQXの欠点を挙げる時「初心者がコンテンツに参加しようとしてもパッシブ全部取ってないと野良は参加できない、ハードルが高い」なんて言われ方をするが、これもサポート仲間システムがある程度解決してくれる。野良パーティを組めないと詰み、という状況が少ないからだ。特に「パッシブを取るためにレベルを上げたいけどレベルの上げようがない!」というハマリ状態から救済してくれるのは大きい(逆に、FF11の方はまさに「メナス装備を取るためにメナス装備が必要」というハマり状態に陥りつつある)。

働け働け馬車馬のようにぴしぴしぴし(fromポヤッチオ)

 あと、これは些細なことだが、私はDQXを始める前「いちいち『たたかう』コマンドを選ばないと敵を攻撃しないなんてめんどくさい戦闘システムだなあ」と思っていた。FF11のオートアタックになれていたからだが、これも実はサポート仲間が解決してくれる。自分が手を出すまでもないような格下の相手と戦う分には、敵を殴ることも殴られた分の回復もサポート仲間がやってくれる。プレイヤーは「敵のシンボルに体当たりする」だけでいい。
 この簡単さは「ながらプレイ」にも向いている。「動画を見ながら」「何かを食べながら」「漫画を読みながら」遊んでも、別に仲間が危機に陥ったりしないし、まかり間違って強い敵に接敵されて殺されても、サポート仲間は罵声を浴びせてきたり回線を切って逃げ出したりしない。長時間、長期間遊ぶことを前提とするMMORPGは、常時気が張っているのは厳しいと個人的に思う。ながらが許されるくらいの適度なゆるさが必要ではないだろうか。
 加えて、誰もが考える「メイン職業以外のレベル上げのめんどくささ」もサポート仲間によって緩和されている。サポート仲間は「自分の一番高いレベルと同じレベルまで」雇えるので「一人でパワーレベリング」ができてしまうのだ。


 同一目的のフレンドやチームメンバーが同じ時間、ほぼ必ずログインできるという恵まれた環境にない人間には、まさに良いとこ取りのシステムなのだ。このサポート仲間システムのおかげで、私は今のところ「やりたいことがあるけど人がいなくてできない」という状況には陥ったことがない。やりたいことが尽きず元気玉が足りない状態が続いている。

いいことばかりではない?

 さて、サポート仲間システムのメリットばかりを挙げてきたが、デメリットも(たぶん)ある。それは、強制的にパーティを組まされる状況が少ないため、他人とコミュニケーションするきっかけが減り、フレンドやチーム以外の人との繋がりが結果として少なくなるのではないか、ということだ。
 とはいえ、実際知り合い繋がりだったとはいえチームに加入でき、それ以外にもフレンドが作れた身からすると、メリットに比べればデメリットは大したことはない気がするのだが、それでもDQXはデメリットを払拭するため、システムを工夫している。戦闘中の他人を「応援」できるシステムもそうだし、別サーバにいてもパーティを組むことができ、町にいれば瞬時にパーティリーダーのサーバに移動できるシステムもそう。離席やキーボードなしなど、表示する「自分の状態」を多岐に渡って設定できること、サーチコメントに相当する「現在の自分の目的」をクエストごとというかなり細かい形で設定できることもそうだ。「ゆるい」ならば「ゆるい」なりに知り合うきっかけを用意している。
 先程メインと5か国のストーリークエストはサポート仲間でクリアできたと書いたが、今まで進めてきて「これは絶対に、ソロでは無理だ」と思った状況が1回だけある。それがスーパースターのジョブ取得クエストである(逆に言えば、それ以外はなかった)。これは他者からの応援がないと非常に難易度が高いクエストなのだが、やってると通りすがりの人がひょいひょい手伝ってくれる。
 それだけではない。DQXはローナンバーサーバでメインとなる街(メギストリスの街やグレンの城下町など)に行くとひっきりなしに誰かがしゃべっているのを耳にする。かなりのハイナンバーサーバ(人が少ない)でも、繁華街なら人の会話を目にすることは珍しくない。季節イベントでは画面がうるさくなるくらい会話で埋まる。DQXはそんな感じのゲームである。

もっと喋らせてくれたら

 と、ここまで褒めてばかりだが、実は(私にとって)かなり大きな欠点がある。FF11の欠点をよく研究し、改良されたシステムだと感心させられるDQXのシステムだが、なぜかチャットシステムだけはどう考えてもFF11より退化しているようにしか思えないのだ。
 特に、システム上長文チャットが非常にやり辛い。一回の発言の文字数の上限が少なく、発言が長いと途切れ途切れにならざるを得ない。加えてFF11のようにウィンドウを強制表示することができず、画面内に表示されるのは直近の発言者の最新の発言だけである。このため、雑踏など周囲の会話の多いところでチームメンバーから何かを話しかけられていても、気づかないでスルーしてしまうことがある。また、最新の発言しか表示されないのは次のような状況でも困る。


A「[私]さん。今度○○行くんだけど一緒に行かない?」

B「今日の夕ご飯何にしようかなあ。昨日はラーメンだったし」

C「うちはカレーにするわ」


 Aの発言の直後にB、Cの発言があると、画面に残るのはCの発言。Aの発言はチャットウィンドウを展開してバックログを表示しないと出てこない。一応、誰かが何かを発言した時効果音が鳴るため、Cの前に発言があったことに気づければバックログを確認しようと考えるだろうが……。

 あと、これまた些細なことであるが、DQXにおける高速移動手段は「ドルボード」というものである。円盤に二本のハンドルがついたような形状で、シルエットとしてはセグウェイに似ている。私はドラクエシリーズを全部遊んでいるわけではないのだが、今までこういう乗り物は登場したことがない気がする。なんとなくSFチックで、ドラクエというよりドラゴンボールに出てくるアイテムのようだ。操作していても今一つロマンがないので、できれば馬に乗りたかったな、と思わなくもない。

 思いつく欠点と言えば、今のところはこれくらいである。あとは想像以上に楽しめている。ストーリーは単純だがわかりやすく、終わった後に???マークが頭上を飛んだりしないし、ましてやイベントをボタン連打で飛ばさないとパーティメンバーからどやされたりもしないので、ゆっくり見ている余裕がある。


 とまぁ、今のところアストルティアをのんびりと楽しんでいるものの、この日記はプレイ日記ではないので、私がなんというキャラで遊んでいますのでよろしく〜というようなエントリを書くつもりはない。FF11の時もそれはしてこなかった。だから今後、よほどの恨み言か愚痴でもない限り、DQXについてこれほど長文を書くことは恐らくもうないだろう。
 誤解のないように念のため申し添えておくが、FF14よりDQXの方が優れているなどというつもりは微塵もない(そもそも私はFF14をまともにプレイできるところまで到達していないので比較のしようがないし、直接の原因はハードウェアのトラブルのせいだ)。ただ、今のところ私にはどうやらDQXの方が合っているようだ、というだけの話である。


 なお、ここのところエントリが短かったのはご想像のとおり、前回と今回のエントリを書いていたためです。