クリスタニアの続きの話

 当時、正直に言ってソードワールドを含めたフォーセリアを舞台にしたタイトルを「特徴のないゲーム」と侮っていた私は、激しい衝撃を受けた。見飽きた風景にたった一つ新要素を追加するだけで、まったく見違える新鮮な情景が現れるとは思ってもみなかったからだ。

 ただ、昨日のエントリでは手放しで褒めちぎったクリスタニアだが、問題がなかったわけでもない。

わくわく動物ランド」?

 クリスタニアのキャンペーンに参加した鳥取のメンバーたちは、総じて楽しんでくれているように見えた。ただ、最初不評だったのが戦闘だった。キャンペーンそのものについては別項に譲るが、パーティメンバーの中に「密林の猛虎」バルバスのビーストマスター(猛虎の民)がいたのが大きい。念のために加えると、これはプレイヤーのわがままではなく「ストーリー上の理由で、PCは全員神獣の民をやってほしい。中でも誰か一人は猛虎の民をやってほしい」と指定したのはGMである私である。

 猛虎の民は公式だと悪役にされることが多いせいか、強力なタレント(能力)がいくつもあった。中でも「インバルネラビティ」というタレントは「通常の武器による攻撃を無効にする」というもの。最初は「PCのうち1人の被弾が少ないくらいなら……」と思っていたが、当然のことながら、PCたちは「猛虎の民一人をウォリアーにして前に立て、あと全員を後衛にする」という作戦に出た。これも一応補足すると、神獣の民が選択可能なウォリアー・ソーサラー・シャーマン・レンジャーのなかで、前衛に立てそうなのはウォリアーくらいである(もっといえば神獣の民は金属製の鎧を着ないので、ウォリアーでもキツい)。
 結果的に、最初の数本のシナリオでは敵をほぼ完封されてしまった。クリスタニアはその成り立ちから、古代王国時代の遺跡がほぼ存在しない(古代王国の侵略が失敗している)。その辺に潜ればマジックアイテムがぽこじゃか出るロードスやアレクラストと違い、魔法の武具は極めて希少な存在である。公式NPCでも魔法の武具を持っているのは漂流王(アシュラム)か、レードンのレッドヒルトくらいではなかろうか。
 このため、敵が片端から魔法の武具を装備して出てくるのも不自然で、インヴァルネラビティを使っている猛虎の民にダメージを与えられる敵を出せなかったのだ。通常の敵はともかく、敵対する神獣の民のソーサラーやシャーマンならダメージを与えられそうなものだが、猛虎の民が他に目もくれずスペルキャスターを狙うので、有効打が出せない。

 しかし、一つだけ有効打を与える方法があった。それは、ビーストマスターの「ビーストフォーム」を使って神獣の姿に変身することだ。こうすると、データは神獣のそれになり、攻撃が魔法の武器扱いとなるため、ダメージが通るし、耐久力も上がる。
 そして次からは、戦闘が始まった途端、敵の神獣の民はわらわらと動物に変身することになった。すると今度は、PCたちもビーストフォームを使わないと、敵の耐久力の高さに阻まれ息切れするように。攻撃力は総じて人間のままの方が高いが、それでも変身してソーサラーやシャーマンの低い耐久力を補う方がメリットが大きいからだ。*1
 結果、人間の姿同士で戦闘前に会話し、啖呵を切っておきながら、戦闘が始まると全員一斉に動物に変身するという、傍から見ると笑える状態になってしまった。この状態を、プレイヤーたちは冗談交じりにわくわく動物ランドと呼んでいたのである。
 これではあまりにもアレなので、ローカルルールでビーストフォームは封印し、タレントポイントを使うことで、通常の武器が魔法の武器として使えるようになる能力に変更したのである。

癒しが足りない

 先程の神獣の民の選択可能クラスを見て「あれ?」と思った方もいるかもしれない。神獣の民は神獣を信仰しているため、プリーストになれない。するとどうなるか。回復役が足りなくなるのだ。
 ソードワールドでは(女性限定だが)シャーマン魔法に回復呪文があるものの、クリスタニアにはそれがない。なので、プリーストなしだと回復はタレントに頼ることになるが、回復効果のあるタレント自体がそもそも少ない。熊の神獣ウルスの「パージウーンズ」、獅子の神獣ディレーオンの「デイスリープ」、あと狼の神獣フェネスの「リッキングキュア」。これくらいである。しかもこのうち前者二つは「休息しないと使えない」能力であり、自由に回復できるのはリッキングキュアしかない。
 これは公式リプレイでも話題になっており、暗黒伝説に登場するフェネスのレンジャー「ティオシー」は重宝されていた。私たちの鳥取にもフェネスのビーストマスターはいたが、それでも足りず、しまいには「無口で自己主張しない新しき民のプリースト(NPC)が同行して、適宜回復魔法を掛けてくれる」とかやっていた記憶がある。



 ただ、上記のようにバランス調整が難しかったのが、元々のバランスに起因するものか、それとも私のキャンペーンが特殊な設定だったためにそうなったのかはわからない。というわけで、続きはまた明日以降に。

*1:経験者の方はお気づきかもしれないが、1レベルからスタートしていない。