ソードワールド2.0におけるPCの「死」について・後編

 一応擁護しておくと、ソードワールド1の扱いは別段変なものではない。あくまでも「アリアンロッドダブルクロスが他のゲームに比べてデッドリーなダメージからの救済手段が豊富だ」というだけだ。ソードワールドは他のTRPGと比べても決して「復活手段が少ない」とか「ゲーム中のPCの死について特異な扱いをしている」というわけではない。なんといっても、ソードワールド1は20年以上前のゲームなのだ。

 しかし、ソードワールド2.0にはまたもう一つ、別の事情がある。実は、ソードワールド2.0では「死者の復活」は「禁忌」とされているのだ。
 2.0の舞台となる“ラクシア世界”は、人間と蛮族(ここではゴブリンやオーガなどを指す)の争う世界だが、死者の復活は蛮族の神が司る事象であるとされる。死者を魔法などの手段で復活させると「穢れ」と呼ばれる数値がたまっていき、一定数に達すると「レブナント」という魔物になってしまう。これはルールにも反映されている。そのため、人間の神は死者を復活させることを好まない。聖職者は人が死んだ場合、そのまま埋葬するよう推奨する、という世界観なのだ。
 前編で「ソードワールド2.0ではリザレクションが神聖魔法ではなくなった」といったのは、このためである。リザレクションは操霊魔法に変更された。操霊魔法は支援系の魔法と説明されているが、設定上はネクロマンシー、死霊魔術に近い位置付けだ。また、もう一つの復活呪文「レイズデッド」は、不死者やアンデットを司る神の魔法で、敵専用である。
 実際、PCが死亡した時のリプレイのやり取りでも、高位の聖職者であるバトエルデン・エラーは「お悔やみを申し上げたかった、本来なら」と言っている。要は聖職者としては生き返らせてもらっては困るという意味だ。その通りだと思う。
 つまり「システムは非常に事故死しやすいのに、世界観は復活を許さない」という矛盾がある。それならそれでPCをほとんど使い捨てしてプレイする「深淵」のようなゲームなら問題はないが、そういう方向に進んでいるわけでもない。

 実は、今回のエントリを書くにあたって、ざっとではあるが似たような意見がないか探してみた。ソードワールドにおける死に言及していた人がいたが、論点がかなり違うのでここではリンクは貼らない。
 私は「ソードワールドにおける死が軽すぎる」ことはそれほど問題とは思っていない。そうではなくて「システムの設計思想(目指している方向)と背景世界の設定が合ってない」ことが問題なのだ。

 システムは死にやすい、しかし復活は推奨されない世界観、なのにリプレイでは死んだPCを次々復活させている、ときたら、読んでいる人間、特に実プレイの参考にしようとしている人間は「???」となる。
 いったい、ソードワールド2.0ではPCが死んだらどうしたらいいのか? 復活させていいのか? それともキャラクターを作り直すべきなのか?

 「ソードワールドはそんなに死にやすくない」とおっしゃる方には、是非ルールブック1の添付シナリオをサンプルキャラの4人でプレイしてみていただきたい。私たちはほぼ全滅だった。生き返らせる気にはまったくならなかったが。
 あるいは、サプリメント「ミストキャッスル」をやってもいい。このサプリメントの死亡率の高さは製作者公認である(ロール&ロールの緑一色さんのマンガで製作スタッフ自ら死亡率が高いといっている)。

 これだけではあれなので、私見を述べる。

 まずは、リプレイのPCは復活させるべきか、それともキャラクターを作り直すべきか。

 「マージナルライダー」のメルは、キャラクターを作り直すべきだ。なぜなら、マージナルライダーは元々パーティメンバーのうち一人が次々に交代していく、流動的なパーティを売りにするリプレイだからだ。PCの死は立派なメンバーの交代理由になる。「メルは復活させるが、パーティを脱退する理由が特に見当たらない他のメンバーが次々に交代していく」というのは理屈が通らない。

 「新米女神」のメッシュは、キャラクターを作り直すべきだ。マージナルライダーとは違う二つの理由で。
 一つは、この7巻がメンバーの入れ替えを行う物語の節目だったからだ。これがもし6巻の最終話の一つ前だったら話は変わってくるが、せっかくメッシュの同型機パジャリガーが登場したのだから、パジャリガーをPCにすればよかったのではないか?
 そしてもう一つ、メッシュが戦闘で倒れるのはこれが初めてではない。2巻でも敵の攻撃を受けて気絶状態に追い込まれている。要するに、前衛に立つのに向いてない性能なのだ。これがPCのリビルド(再構築)が認められているゲームなら徹底的に再構築すべきだが、そうでないならPCを作り直すか戦闘バランスを見直すか、どちらかした方がいい。これで2回目なのだから、明らかに理由はダイス目の悪さのせいだけでない。

 さらにもう一つ。2.0のルールの死にやすさを改善するのは特に難しいことではない。生死判定をなくせばいいだけだ。生死判定をなくし「HPが0になったキャラクターは気絶する。【生命力】分以内に応急手当てを行わなければ死亡する」に変更すればいい。これでパーティが全滅しない限り、PCが死ぬことは滅多にないはずだ。GMとしてPCに死の緊迫感を味わわせたいならルールにある「とどめを刺す」を利用すればいい。


 次回はキャラクタークラスという視点から、アリアンロッドアルシャードガイアの話をしようかと思う。


ソード・ワールド2.0  ルールブックIII (富士見ドラゴン・ブック)

ソード・ワールド2.0 ルールブックIII (富士見ドラゴン・ブック)