神が血を流せば、人々は神を信じなくなる


 夏休みが取れたので、アイアンマン2を観に行った。前から観よう観ようと思っていたけど時間がなく、公開初日からずいぶん経ってしまったな、とは思っていたけれど、まさかもう地元で公開終了していて、池袋まで行く羽目になるとは。


 で、感想。動くウォーマシンが見れたので満足です。以上。


 ……え? 簡単すぎる? じゃあ、例によってネタバレ全開の箇条書きで。






















・今回のヴィラン「ウィップラッシュ」。ミッキー・ロークがやってるから粗野なイメージだけど、実際は天才の役なんだよね。天才トニー・スタークとほとんど変わらない設備でアーク・リアクター作っちゃったんだし。「神が血を流せば、人々は神を信じなくなる。 そして、その血にはサメが群がる。 お前がサメに喰い尽くされるのを、オレはここで見物するとしよう」という台詞は、彼の知性をよく表している。


・それと、もう一人の悪役ジャスティン・ハマー社長。こいつはいいキャラだった。“ディアボロス”春日恭二が実写になったらこんな感じかな? 口にするギャグがいちいち滑るのがまた面白い。


・トニー・スタークの親友にして、ウォーマシンの装着者、ジェームズ・ローズ少佐。前作ではテレンス・ハワードだったんだけど、今作ではドン・チードルに変更になっている。……うーん。映画前半の真面目な軍人としての演技はぴったりなんだけど、後半の軽口を叩き合いながらアイアンマンと肩を並べて戦うシーンはテレンス・ハワードのほうが合っているような。ドン・チードルっていうとどうしても「ホテル・ルワンダ」の真面目なホテルマンのイメージだからなぁ。


・迫り来る死の恐怖から自暴自棄になるトニーの姿は、理由こそ違うけどバットマンブルース・ウェイン社長を髣髴とさせる。ハリウッド的にヒーローで社長というのを連想するとこういう姿になるということか。


・トニーに「お前に社長を任せる」といわれたペッパーが明らかに喜んでるのが意外だった。この状況で社長の椅子を押し付けられたら、私ならドン引きするが。日本人とアメリカ人の国民性の違いかなぁ。


・携帯型アイアンスーツ(マーク5)いいな。構造的に何をどうやって収納しているのかまったくわからないけど。(トレーラーのラストに登場しているのがそれ)


・最後、てっきりウォーマシンがウィップラッシュと戦って負け、殺される寸前にアイアンマンに助けられるんだと思ったんだけど、まさか二人が共闘するとは。


・宣伝でさんざん「謎めいた美女」「敵か味方か」なんて煽られてた女性は“ブラックウィドウ”。SHIELDS長官ニック・フューリーの部下であり、スパイ。コードネームが事前にはっきりわかってれば役どころも想像がついたんだけどな。彼女の活躍シーンが結構多くて、脇役とは思えない優遇っぷり(理由は……後述)、お陰でアイアンマンの活躍シーンが減ったような気がするぞ。


・私が今作で一番疑問に感じたのは、アイアンマンの心臓部「アークリアクター」の扱いだ。前作では(完全な)アークリアクターは1個しか登場しない(キー・アイテムである「トニー・スタークにもハートがある」と刻まれた不完全な試作品も含めて合計2個)。
 トニーは前作で負った致命傷のため、アークリアクターなしで生きることはできない。だから、今回国防総省にスーツの引渡しを求められた時の台詞、
「スーツと私は一つだ。私が私を引き渡す“人身売買”など、とても認められない」
という台詞は「自分とスーツを引き離すことはできない、アークリアクターを切り離せば私は死ぬ」という意味だと私は最初受け取った。
 ところが物語が進むと、友人のローディが単独でウォーマシンを着こんで起動し、スーツを奪い取るシーンがある。アイアンマンの予備スーツだったはずのウォーマシンに、あらかじめアークリアクターが装着済みだったから可能になる芸当だ。


 もしかして、アークリアクターって量産可能という設定なのか?


 いや、今回のヴィラン・ウィップラッシュがアークリアクターを作るのはわかる。ヴィランなんだからそれぐらいの能力を持っていて当然だ。
 しかし、トニー自身がアークリアクターをいくつも作れるのなら、国防総省に対する主張そのものが成立しづらくなる。「スーツと私(のアークリアクター)は一体」ではなく、生命維持用のアークリアクターとは別に、スーツ用に改めてアークリアクターを作成すればいいという話になるからだ。

 アークリアクターが量産可能なら、トニーの国防総省に対する主張は「アイアンマンになれるのは私しかいないんだ!」というトニー自身の自負、心情を述べたものであって「スーツを引き渡すことは私自身の死を意味するんだ!」という悲壮感を持った主張ではなくなる。それでいけないということではないのだけど、前作と比べるとちょっと違和感があったなぁ。


・今回も、スタッフロールの後にシーンが一つ。前回は謎の人物が出てきたけど「私はニック・フューリー、SHIELDSの長官」と自分で名乗るので特にわからないことはなかったのだけど、今回は画面に映ったものがなんだかわからなかった。FF7のクラウドが持ってる大剣みたいに見えたのだけど……。結局正解がわからず、ネットの力に頼ってしまった。


これが「アイアンマン2」のシークレット・エンディングだ…ッ!!


・どうも謎の物体は、アイアンマンと同じSHIELDSが組織したスーパーヒーローチーム「アヴェンジャーズ」の一人、ソー(雷神トール)の持ってる武器「ムジョルニア」(ミョルニルハンマー)のようだ。このサイトによれば、今作でニック・フューリーが「我々は今君(トニー)より大きな問題を抱えている」というのはどうもハルクのことらしい。いや、さすがにその伏線まではわからんかったわ……。


・アヴェンジャーズのメンバーは時期や作品によってまちまちなのだけど、2年後に予定されている映画ではブラックウィドウがチームに入ってくるんじゃないかという気がする。だから今回顔見せして活躍させたんじゃないかな。実は、アヴェンジャーズのメインの3人はソーとアイアンマンとキャプテンアメリカなんだけど、キャプテンアメリカナショナリズム色が強すぎて出せそうにない。今までに映画化されている作品からすると、アイアンマン、ソー、ハルク、ブラックウィドウでチームを組むんじゃないだろうか。




・「私が作った最高傑作は、お前だ」という台詞で不覚にも(ry。「天才柳沢教授の日常」の設計士の話を思い出したなぁ。