最初に買ったゲームの名前、それは


 第1回は「ファミコンを持っていなかった少年」というタイトルにするつもりだったのだが、よくよく思い出してみたら生まれて初めてやったゲームはファミコンではなかった。
 ゲーム&ウォッチだ。
 確か祖母に買ってもらったもので、タイトルはよく覚えていないが「パラシュート」だった気がする。弟がタキシードサムとかいうペンギンのキャラクターのゲーム&ウォッチを買ってもらっていた。
 これを買う前、物心付く前の私はどうやらミニカーの収集をしていたらしい。当時から蒐集癖があったというから、三つ子の魂百までとはよく言ったものだ。ゲーム&ウォッチの蒐集を始めなくて両親はきっと胸をなでおろしたことだろう。


 私が当時こだわっていたのはたくさんのゲームを集めることではなくて、何故か「できるだけ普通の時計に見えるゲーム&ウォッチが欲しい」ということだった。何故そこにこだわったのか今となってはよくわからない。ただ、後々「ファミコンよりもゲームボーイ、PC−9801VMより9801N」を血眼になって探し回るような性格の萌芽がこの時点で既に現れているのかもしれない。当時からゲームのスコアを上げることに血道を上げるより、ハードウェアを手に入れることの方にやたら力を入れる子供だった。今と何も変わっていない(笑)。
 今のようなインターネットなどない時代、通販といえばテレビショッピングだった時代のことだ。そもそも時計ともゲームともつかない機械がどんな店で扱われているかもよく知らず、周りの大人たちを振り回し、数少ない友達のつてを当たり、近隣のおもちゃ屋と時計屋をしらみつぶしに当たり……。結果として、確かにゲーム付き時計を手に入れたのは記憶に残っている。だがそれがどんなものだったかは、もう詳しくは思い出せない。



 この中には私の持っていたゲーム付き腕時計は恐らく登場していないものの、そもそもこんな番組があったこと自体が驚きだ。あの時代にノスタルジーを感じる人間がいるからだろう。私自身はその時代には懐かしさというより、おぼろげな記憶と形にならない焦燥感みたいなものだけが残っている。肝心のゲーム内容が思い出せないほど昔のことだからだろう。私のノスタルジーを感じる時代はこの後、ファミコンが登場した後のことになる。