どちらかといえば


 うーん、どちらかといえば築地さんの「陽炎、抜錨します」方が好き。簡単に乱暴に言ってしまうと「艦娘を主人公にした成長物語」か「鎮守府を主人公にした戦記物」の違いという感じ。双方の代表作もそういう傾向だし、「抜錨します」では陽炎に感情移入できたけれど「一航戦出ます」では視点が移り変わりすぎて特定の登場人物に感情移入しづらいというのも戦記物だと考えると納得がいく。ただ、戦記物として捉えると「敵が正体不明、何考えてるかわからない」っていうのは結構ハンディだと思う(もちろんそういう作品もあるんだけど)。艦娘の成長物語というスタンスだと、敵は正体不明でも全然問題ないんだよね。
 あとは、「一航戦、出ます」では加賀とか赤城とか天龍と龍田とか第六駆逐隊とか鳳翔とかメジャーどころの艦娘が軒並み登場し、しかもその設定は完全にセオリーどおりで、予想外な点が全くなかったというのもある。もちろん公式ノベライズで公式設定を外されても困るんだけど、陽炎のエピソードの時は、これまで今一つマイナーでクローズアップされることのなかった「陽炎と不知火の心の交流」とかが描かれてて、読んでる側としては得るところが大きかった。

 とはいえ、どっちが公式ノベライズっぽいかと言われると「一航戦、出ます」の方なんだろうな。「陽炎、抜錨します」は外伝とか番外編に近い位置づけと言ったらいいだろうか。登場人物の設定も後者の方が結構脚色されてたっぽいし……。