これは解釈が難しい

音楽が趣味でも5人に1人は購入金額「0円」、「CDよりライブ」が鮮明に


 このニュース見たら音楽著作権団体の方々は「じゃあYouTubeへの通報強化して動画削除しまくればCD売れるな!」とか考えそうだよな。でもたぶんそういう問題じゃないと思う。


 もう何度も書いてるけど、そもそも「曲を知るきっかけ」そのものが昔に比べると格段に少ない。テレビを見ないからCMソングにもドラマの主題歌にも触れる機会がない。じゃあどこで音楽に接するかというと「ネットサーフィン中、動画サイトなどで曲を知る」ということになる。そこで動画を削除しまくっても、触れる機会がなくなるだけで削除された曲がCDとして売れるわけじゃない。ただ単に「存在も知られないまま消える」だけ。
 よく考えればわかるけど、例えばYouTubeなんかに特定のアーティストの曲がアルバムに収録されてる分全曲全部頭から終わりまでアップロードされてることはほとんどないはずだ(権利者削除されるから)。ということは、ここでアンケートに「動画サイトで十分」と答えてる人たちは、音楽を趣味としていながら特定のアーティストの特定のアルバムの曲を全部聴こうとか集めようとは最初から考えていないことになる。恐らく最初から「無料で聴ける曲があるんだからその分だけ聴けばいいや」というスタンスなのだ。*1もし楽器演奏が趣味なら楽器買うのにお金がかかるから、他の出費を抑えようとしても不思議じゃないし、高校生の割合が高いのも「アンケートのスタートが15歳から」であることを考えれば、単純に貧乏だからCDを買わないんだろう。本来ならアンケートに「もし聴きたい曲が動画サイトから削除され、有料でしか入手できないとしたらお金を払って聴きますか?」という項目が存在するべきで、この項目に「Yes」と答える人間の割合が一定程度に達しない限り、権利者削除をしても売り上げ増に繋がらないことになる。
 つまり、ちょっと前まで話題になっていた「マジコンで無料でソフトが手に入るならゲームやる。手に入らないなら買うんじゃなくてゲームそのものをやらない」という人たちと似たような立ち位置だ。もちろんそこには「合法か非合法か」という大きな違いがあるけれど「規制を強化すれば売り上げが増える」という図式にならない点は共通している。
 ソシャゲーなどの基本無料ゲームが、無料で遊ぶ層が大多数で一部の人向けのアイテムなどの課金で稼ぐのと同じように、アーティストの楽曲も基本無料で大量に追加課金してくれる人たちのための「何か」を用意し、そちらで稼ぐ。今両者は似たような図式になっている。それが正しいとはどうしても思えないけど。
 個人的には、2番目と3番目の答えが鍵だと思う。つまり「レンタルでいい」と「値段が手ごろではない」。この二つは表裏一体だ。「レンタル料金くらいだったら払うけど、買うにはアルバムは高い」という層がこれだけいるということだからだ。この設問は複数回答だろうけど、二つの答えは結構な割合で被ってるはずだ。


 もう一回書くけど「動画サイトで用が足りるから買わない」と言ってる層は(音楽が趣味だとは言いながら)恐らく「有料になったら聴くのを辞める」層なので標的にするだけ無駄だ。その層を目当てに権利者削除を繰り返してもその分聴く人が減るだけで、売り上げが戻る可能性はゼロに等しいと私は思う。

*1:そもそも「音楽鑑賞」とか「楽器演奏」が趣味だと答えたアンケートがどういうものかわからないとなんとも言えないんだけど。