とてつよセンチネル



 というわけで、X−MENフューチャー&パストを見てきました。
 以下、ネタバレ全開なので折り畳みます。














・3Dで観るつもりはなかったんで地元の小さい映画館に行ったんだけど、ほとんど貸し切りに近い状態でびっくり。もしかして人入ってない……?


・この「地球最期の頂上決戦 究極のオールスターVS史上最強の敵」とかいう日本語版ポスターの煽り考えた人はマジで反省すべき。このタイトルじゃ人来ないだろ! っていうか、これはセンチネルと戦って倒す映画じゃないし地球は最期ではないし(最期なのはミュータント)別に頂上を決めてるわけでもなんでもないわ! 普通に「対峙せよ──過去の自分と」とか「破滅の未来を回避せよ!」みたいなのでよくね?


・1〜3のオリジナルキャストと、ファーストジェネレーションのニューキャストの競演というだけで、前のシリーズが好きで新シリーズが大好きな私みたいな人間には感涙もの。それがなぜ今日まで観に行かなかったかは……これは最後に。


・このストーリーは……私は大好物だけど、人によって好みは分かれそう。前にTRPGで似たような筋書きのシナリオをやろうとしてプレイヤーから猛反発されたことがある。簡単に言えばドラゴンボールのトランクスのエピソード、つまり「都合の悪い過去を書き換えてなかったことにしてしまう話」。トランクスの場合は破滅の未来は平行世界として存在したままだけど、この作品の場合未来そのものが書き換わり、存在しなかったことになる。


・時間を行き来するという割と複雑になりそうな構図を、かなりわかりやすく料理してると思う。


・始まりはいきなり暗黒の未来からスタート。この未来に存在するセンチネルは、旧映画版や格闘ゲームに登場したセンチネルとはかなり異なり、生体パーツが材料っぽいシルエット。こいつが途轍もなく強く、交戦した相手のミュータント能力をコピーできる上に能力の同期も取れるらしく、コロッサスの硬化能力を使いながらオプティックブラスト撃ったりミュータントを凍らせたり体を変形させたりやりたい放題。



・このスーパーセンチネル、実はミスティークの変身能力のDNAを取り込んで完成したもの。1973年にベトナム戦争の和平条約が結ばれたパリで、ミスティークがセンチネルの開発者であるトラスク博士を暗殺したため、ミュータントの危険性が叫ばれ、センチネル計画が実行に移された、という流れだ。


・旧作の3で壁抜けを披露していたキティの能力が成長し、時間をすり抜けることができるようになった。といっても、本人が移動するんじゃなくて対象者の精神だけを過去に移行させる(体は当時の本人のまま)。これを未来のキティたちは「時間移動を使って数日前の過去に戻り、仲間に警告することでセンチネルの襲撃から逃れる」のに使ってたんだけど、応用して50年前の過去に戻ってトラスク博士の暗殺を防げばセンチネル計画はなくなって、暗黒の未来を変えられるのでは? というのが未来のプロフェッサーたちの計画。


・キティは前も美味しいところ持っていったけど今回もめっちゃ美味しいな……。


・50年もの時間移動に耐えられそうなのはウルヴァリンだけという理由でウルヴァリンが時間移動し、過去のプロフェッサーとマグニートーに協力を仰ぐことになるのだが……。


・わーお、プロフェッサーがマジダメ人間。薬(麻薬でなくミュータント能力をなくしてテレパスを無効にする薬?)中毒で引きこもりで世話してるのはビーストだけ……ってあれ!? 前回出てきたあの美人の博士はどうした!? いい雰囲気になってたじゃん!


・前回プロフェッサーがウルヴァリンをスカウトしに行った時「失せろ」で追い返されるシーンがあったけど、まさかあの伏線が拾われるとは……。


・対してマグニートーケネディ暗殺犯人として投獄中。これに関してはまた後でも触れる。しかし、あの有名な「魔法の弾丸」が「マグニートーが弾道を曲げたから」だというのは笑ってしまった。ウォッチメンでもスーパーヒーローがケネディ暗殺に絡んでたことになってるし、アメリカ人はそういうのが好きなんだなぁ。


・レイヴンことミスティークは、マグニートーが捕まった後も、プロフェッサーと袂を分かったまま、一人復讐の道を歩んでいた。一番変わった、というか成長したのはレイヴンじゃないだろうか。


・どうやら、前回出てきたエマ・フロストもエンジェルも、ブラザーフッドの仲間はみんな人間に殺されたらしい。マグニートーはそれはプロフェッサーのせいだとなじるんだけど……いや、敵対して殺し合いの道を選んだのはマグニートーじゃないか?


・ということは、途中でレイヴンが見てたトラスクの研究所にあった解剖記録はエンジェルとかエマのだろうか。そりゃ怒るわ。


・いろいろあって暗殺は阻止できたが、ミュータントの存在はおおっぴらになった上にレイヴンのDNAは採取され、未来のセンチネルは変わらないまま。このままじゃヤバいということでさらなる行動に出るプロフェッサーたち。


・なんか、セレブロ周りがまるっきり旧作と一緒なんだけど、1973年でどんなハイパーテクノロジー使ったらこうなるんだ……。他が物凄い気を使って1973年を演出してるだけに、そこだけ凄い未来的だった。


・未来のプロフェッサーがウルヴァリンの精神を介して過去のプロフェッサーを諭すシーンは不覚にもうるっと来た。これプロフェッサーだけの特権だよな……。新旧のキャストが対面する画面はここだけだ。そして、大統領がトラスクを伴ってミュータント対策のための重大発表を行おうとする場に乗り込むプロフェッサーたち。


マグニートーはセンチネルの骨格に金属を流し込んでコントロール下に。そしてスタジアムを浮上させてセンチネルとともに大統領を襲撃。やっぱりこの人やりたい放題だよ!



・過去のマグニートー、全然役に立ってないっていうか、未来にとって害になることしかしてないじゃん! と思ったら、予想外の展開に。襲い掛かるマグニートーから、レイヴンが大統領をかばったことで(もちろん、プロフェッサーの説得に応じた彼女の行動が結果的にそう見えただけで、レイヴン自身は大統領を助けるつもりはさらさらない)「ミュータントの中にも人間に味方する者もいるのだ」という事実を人々に知らしめることになった、という……。


・もちろん意図的にやってるんだと思うんだけど、今回の映画は全体が旧作の2のオマージュ(監督同じだし)になってるっぽい。マグニートーの脱獄シーンも両方にあるし、最後の「大統領がミュータント対策を発表しようとする場にプロフェッサーたちが現れ、直前で最終的な衝突が回避される」という構図も同じ。旧作の2ではプロフェッサーが大統領を説得してたけど、今回は大統領の目の前でレイヴンを必死に説得。そういえばあの時も、レイヴンの息子であるナイトクロウラーがキーパーソンだったんだよな……。


・原作の「The Day of Future」は確かバッドエンドなんだけど、そんなこんなでこちらはハッピーエンドに。センチネルの襲撃に怯えるアジトではなく、ミュータントの子供たちが笑いさざめく「恵まれた子の学園」でエンディング。ウルヴァリンを見ただけで全てを理解するプロフェッサー、カッコよすぎ。──と、ここで思わず噴き出してしまった。ブライアン・シンガー監督、旧作の「3」のこと嫌いすぎだろ!(笑)


・「3」でジーンに原子分解され、その後フォローがなかったサイクロップスが復活(というか「3」自体がなかったことになった)。もちろんプロフェッサーは存命で、ウルヴァリンに刺し殺されたはずのジーンも復活。そして3で影の薄かったローグとアイスマンの仲も復活(あれ? そうするとキティは……?)。何より「3」でのあのフェニックス絡みの騒動がなくなった(ジーンの髪が赤いのでたぶん封印もしていない)ってことは「キュアを打たれて人間に戻り、マグニートーを敵に売る情けないミスティーク」も存在しなかったことに。あれ酷かったからな〜。


・と、これだけ書くとご都合主義みたいに映るかもだけど、重要なのは「原作の本筋はサイクもジーンもプロフェッサーも死んでない」ってこと。あの「ブレット・ラトナー監督がやらかしちゃった」感満載の3のラストにどう始末をつけるか、今後の展開を見据えてブライアン・シンガー監督は結構頭を悩ませたんじゃないだろうか。「3」だけはブライアン・シンガー監督がほとんど関わってなかったからな……。


・あまりにも綺麗に決着した終わり方だったもんで(前作でもそう思ったんだけど)、さすがに次は白紙だろうと半ば期待もせずにスタッフロールを最後まで見ていたら……エジプト! ファラオ! マジでやるつもりか! エイジ・オブ・アポカリプスを!


・そんなわけで、ウルヴァリン・ゼロ→ウルヴァリン・サムライでこのところテンションが下がっていたX−MEN映画の予想を裏切り、私としては大満足の一本だった。ただ、これ売れてるのかなー。凄いコアなファンしか喜んでないんじゃないかっていう(特に旧作の「3」が酷かったせいで!)、そこだけがちょっと不安だ。