これは修正されるべきでは……


 思わず笑ってしまったけど、これはさすがにジャンプ台とかを置けないように修正されるべきじゃないだろうか。対戦として成立しない。

長かった……

 ディスク化されるのをずっと待っていた。


  



 「インフィニティ・ウォー」「エンドゲーム」合わせて5時間半。ぶっ続けで見た。この作品は続けてみないと意味がないと思ったから。
 で、私の中では、フューチャーアンドバストより評価は低い。以下、結末までのネタバレ有りでその理由を書いていく。












(以下、重大なネタバレ有りかつ辛口の意見なので、嫌な人は回れ右で)










・この作品、私としてはどうしても「X-MEN FUTURE AND PAST」と比べてしまう。というのも「インフィニティ・ウォー」と「エンドゲーム」のストーリーの一番の核となる「タイムトラベル」という部分が、フューチャー&パストと共通しているからだ。同じマーベルで、同じネタを題材にしているのだから、比較されるのはある意味当たり前だろう。


・タイムトラベルの話はとりあえず置いておき、私がこの作品で受け付けなかった最初の点は、今回のヴィランである「サノス」である。ぶっちゃけ、今作では力が強くて頑丈で軍隊を持ってるという以外、何も語るべきところがないヴィランになってしまっている。ウルトロンの「人類は地球環境に害だから滅ぼそう」というのを単純に宇宙スケールまで大きくしただけで、目新しさがない(原作とはまったく異なる)。

 見ている側としては、ウルトロンの主張ならまだ理解もできるが、宇宙規模で「資源には限りがあるから生命を減らそう」と言われても、実感がなさすぎて「へーそうですか」としか言いようがない。そもそも一般的に資源と呼ばれているものには生命そのものも含まれてるわけだけど、それを半分にするって時点で理論が破綻している。
 なんというか、製作者側の思想が見えるというか、「エンドゲーム」で宇宙のあらゆる生命が半分にされたはずなのに、地球儀を見ると普通に現在と変わらない森林が見えるし、ワカンダの草原もそのまま変わらず、キャプテンアメリカは「人間がいなくなったおかげで自然が増えてハドソン湾で鯨が見れた」とか呑気なことを言ってしまう。要は「エンドゲーム」が言ってる「生命」って「人間」(宇宙人含む)のことしか指してないんだよね。都市は廃墟になってるけど郊外は自然が増えてる的な描写だし。個体数を半分にされたら鯨なんて絶滅の危機だろうよ!

 その辺に裏づけが全然ないせいで、サノスが凄く薄っぺらに見える。そもそも半分にすれば救えるというのにも根拠がまるで提示されないし、ソウルストーンとガモーラのエピソードも「最強のサノスにもこんな人間的な部分があるんだよ! 見て見て!」と言ってるようにしか感じなくて寸毫も共感できなかった。ヴィランとしてのサノスの主張に説得力を持たせたいなら、惑星タイタンは緑なす豊かな惑星として登場させて、サノスが生命を半分にしたからこんな豊かな環境が戻ったんだ、という描写にして、軍隊をその主張を奉じる狂信者的な存在にでもするべきだった。お陰でサノスは「ぼくがかんがえたさいきょうのヴィラン」の域を一歩も出ていない。
 

・また、味方側でいうとキャプテン・マーベル。ビッグ3亡き後のMCUの中核を担うであろうキャラに「私は他の場所で忙しいんで地球に関わってる暇ないから」とか言わせちゃ駄目だろ。見ている側としてはまったく感情移入できない。しかもクライマックスで美味しいところを持っていき、ビッグ3が3人がかりでやっと相手してるサノスを一人で相手しているのを見ると「力強い加勢が来た」というより「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」という気分にしかならない。典型的なメアリー・スー。最後も「お前がガントレット使っとけば誰も死なずに済んだんちゃうの」みたいな。


・サノスとキャプテンマーベルが「ぼくがかんがえたさいきょうの~」だとしたら、逆に「典型的なクソ野郎」だったのがドクター・ストレンジ。こいつ、タイムストーンで未来を見ていながら、アイアンマンに「これが1400万分の1か?」って聞かれた時に「喋ったら実現しない」って答えたってことは、「1400万分の1の勝利」とは「アイアンマンがガントレットを使って死ぬこと」だって知ってたはずなんだよね。最後にガントレットを使う直前に無言でアイアンマンの方を見たのも「お前早くガントレット使えや!」って催促してるみたいで思わず笑ってしまった。ただ、アーサー王伝説のマーリンもそうだけど「賢者たるものの言葉は常にかくのごとし」なんで、魔術師っぽいといえば魔術師っぽいし、納得いかない感は少なかった。


・そして、引き続き畜生ムーブだったのがキャプテンアメリカ。いや、わかるよ? 常日頃「人を守るためには自分が命を捨てるのが当然」と言ってるキャプテンアメリカが普通の人生を生きて、奥さんと子供のために何が何でも生き延びたいと思っていたアイアンマンが死ぬという皮肉な図式こそ、一番描きたかったものだったということは。でも客観的に見れば、アイアンマンがガントレットを使って奥さんと子供を残して非業の死を遂げたお陰で、キャプテンアメリカは自分の人生を謳歌できた訳で、シビルウォーに続いてアイアンマンカワイソス、という感じ。


・個人的に面白かったのがソー。勇士が目的を失って酒浸りの駄目人間になり、それがまた復活するという辺りでドラゴンランス伝説のキャラモンを思い出して笑ってしまった。あ、でもストームブレイカーのくだりは要らなかったよね。


・あと、ブラックウィドウが冷蔵庫の女と言われてる、っていう映画評を読んで、実際に観るまでは「アメコミでキャラが死ぬのなんて日常茶飯事だし、今更何言ってんの」と思ってたけど、観終ってみたらこれは言われるわ、と。だってソウルストーン手に入れるところで死ぬのがブラックウィドウじゃなきゃいけない必然性が、物語上全然ないし。最後のスーパーヒーロー全員集合シーンでペッパーすら戦ってるのにブラックウィドウ一人だけ出番ゼロってのは、ファンとしては一言言いたい気持ちも分かる。それと、超あっさり流されてたけど、ナターシャってアイヴァン・ヴァンコの娘だったんか。じゃあアイアンマン2は父娘対決だったんだな……。


・そのペッパーがアイアンスーツ着て頑張ってるシーンが、今作で一番好きなシーンだったかも。今まで待ってるしかなかったペッパーが、初戦のはずなのに自在に空は飛ぶわ兵器はバンバン使いこなすわ。嬉々として張り切ってるのを見ると、口ではあれこれ言ってたけど、本当は隣で戦いたかったのかな、と。


・さて、キャラの話はこれくらいにして、肝心のタイムトラベルの話。前にも書いたけど、そもそも「登場人物の半分を死なせる」という展開自体が「後でなかったことにする」のを前提に成立しているようなものなので、時間移動の話そのものは予想外ではなかった。ただ言うまでもなく、時間移動は扱いを間違えると簡単に物語が破綻する。使い方を間違えると危険な劇薬のようなものだ。

 その点、フューチャー&パストが凄いと思ったのは、矛盾が起きないように非常に気を使って作られたプロットだったからだ。F&Pのタイムトラベルは「対象の精神だけが過去の自分自身に時間移動する」というもの。何も持っていくことはできず、持って帰ることもできない。未来と過去の自分が二人同時に存在することもない。相対的に、他から見ると「対象者が、ある瞬間に起こり得る未来の一つを超正確に予知した」に過ぎないので、破綻が起きづらい。結果、F&Pのタイムトラベルを見ていて「これ、おかしくない?」と感じるシーンはほぼなかった。

 これに対して「エンドゲーム」のタイムトラベルはどうか。「矛盾を放置した」というのが正直な感想である。

 何しろ、ドクターストレンジとハルクと「至高の魔術師」、作中でタイムトラベルについて語る3人の見解が最初から矛盾している。
 ドクターストレンジはインフィニティウォーで「1400万通りの未来を見た」という。つまり選択によって未来は様々に分岐すると語っている。
 しかしハルクは「過去にタイムトラベルして強大になる前のサノスを殺そうとしても、未来は絶対に変わらない」という。
 一方、「至高の魔術師」はタイムストーンを取りに来たハルクに対して一本の線を引いて見せ「タイムストーンを渡したら、そこからタイムストーンがある未来とない未来が分岐してしまう」といい、ハルクは「過去の同じ場所にタイムストーンを戻せば分岐は起こらない」と反論する。

 いやいや、おかしいだろ。ドクターストレンジのいう「1400万通りの未来」が本当なら、そこからさらに「タイムストーンを戻した未来」と「戻さなかった未来」が再分岐するだけじゃないのか? この辺りが、今回のストーリーの根幹を成す部分にも関わらず、超絶ガバガバ&適当すぎる。そもそも「至高の魔術師」はいつからニューヨークに引っ越ししたんだ? カーマタージに住んでたはずじゃ……。


・また、タイムトラベルを可能にする手段についても、てっきりタイムストーンを使うものとばかり思っていたら「ピム粒子とアントマンスーツがあれば量子空間を通ってタイムトラベルできるよ!」ええぇ……。MCUの世界観でインフィニティストーンを使わずにタイムトラベルするって、その時点でマズいと思うんだが……。せめてこれがインフィニティストーンのパワーなら、今回5時間半かけて「インフィニティストーンを使うには代償が伴う」って描写したのと同じだから、軽々しく使えないというのに説得力があるけど、ピム粒子使うだけなら何の覚悟も代償も要らない(実際、アベンジャーズチームはあっさりタイムトラベルしている)。そうなると、今後ことあるごとに「アントマンがタイムトラベルして解決すればよかったんじゃないの」ってツッコまれることになる。

 これに対してF&Pだと、タイムトラベル自体について登場人物の解釈が割れることはない。プロフェッサーXとマグニートーの意見も一致している。ここで解釈が割れると、現実には存在し得ないことだけに、視聴者が非常に混乱するからだ。……今回のように。
 そしてタイムトラベルの手段についても、元々「物体を通り抜ける」能力を持っていたキティの能力が、ニューセンチネルの追跡から逃れるために異常成長し「時間を通り抜ける」ようになったというシンプルな説明だ。しかもF&Pで時間軸が改変されニューセンチネルが消滅したため、その能力自体も消滅していると考えられ、後作品にはまったく影響を与えない。


・この辺の設定的な矛盾を、今作は「勢いで押し切って」いる感が拭えない。確かに、これまでのMCU作品の登場人物たちが全員集合してサノス軍団とぶつかるシーンは高揚感がある。が、ストーリー上の瑕疵が気になって今一つのめり込みきれない。
 ラストの、アイアンマンがガントレットを使ってサノスを消滅させることに関しても、流れとしてはわかるけれど「ガントレットを生命の消滅に使用する」という意味ではやってることはサノスと同じじゃないかと言われればそこまでだ。


・しかし、私は本作は駄目だと糾弾するつもりはない。元々MCUの作品数がこれだけ膨大になると、全ての設定に矛盾なく全員集合作品を作ること自体に無理がある。しかもネタは劇薬の「タイムトラベル」である。その制約のなかでは超頑張ったとは評価できるからだ。
 F&Pは「災い転じて福と成す」という面があった。旧作の最後がハチャメチャな終わり方をしただけに、タイムトラベルでその終わりを「なかったこと」にしても、ファンは別に悲しまなかった。むしろ大歓迎だった。しかし、MCUはそうではない。それぞれ単体で成功している。それをタイムトラベルでどうにかするという出発点が無茶振りなのだ。その結果が5時間半である。


・本作をMCUのファンサービスと考えると、それの役割は十分に果たしている。バックトゥザフューチャー3のように「旧作の裏側でこんなことが起きていた」というネタでニヤリとできるからだ。特に驚いたのがアレクサンダー・ピアースの登場。ロバード・レッドフォードをわざわざ呼んだのか!(レッドスカルにも驚いたけど、そっちはヒューゴ・ウィーヴィングではなかったようだ) 他にも、ハワード・スタークとかストライカーチームだとか、本当に旧作の登場人物全員集合という感じ(年月が経っているのにイメージがそのままで、それにも驚いた)で、その迫力は圧倒的だった。
 いわば、このファンサービスを楽しむための我慢の時間が「インフィニティウォー」だったわけで、そういう意味では「エンドゲーム」が出るまで待った自分の判断は間違っていなかったと思っている。


・むしろ、自分の一番の失敗は、観賞前にメタ情報をシャットアウトしなかったことかもしれない。私はネタバレを気にしない方なので、色々なニュースも別に気にせず見ていたのだが、「ロバート・ダウニー・Jrクリス・エヴァンスクリス・ヘムズワースは本作でMCUを引退」とか、単にキャラの生き死にをネタバレされるより冷えた。トニーが退場して、次のアイアンマンはペッパーでいいんじゃないかと思ったけども(モーガンちゃんはまだ小さすぎるし)、グウィネス・パルトロウも役を引退なのでその可能性もないとわかってしまっている。
 申し訳ないなと思ったのが「ブラックウィドウが金髪になったのはスカーレット・ヨハンソンが髪を染めるのを嫌がったから」というニュースを真に受けてしまったこと。聞いた時はCGで染めればいいじゃないと思ったものだけど、実際はブラックウィドウが金髪なことにもキャプテンアメリカが髭を生やしていることにも作中でちゃんとした理由があって、理由がなくなった時点でブラックウィドウはちゃんと元に戻っている。
 そういった真偽判然としないニュースを様々見てしまっていたせいで、最初から斜に構えた姿勢で、純粋に作品を楽しめない視点で本作を見てしまっていたかもしれない。その点は自分のせいだし、残念だった。


・これだけの規模のプロジェクトになると、集大成を作るだけでも大変だったろうと思う。きちんと纏め上げたことそれ自体が評価に値する。
 足掛け10年、私にとってはアイアンマンで始まり、アイアンマンで終わったシリーズだった。トニー・スタークという人物の退場としては、これ以上ない終わり方だったというのは理解できる。だからトニー・スタークを再登場させろとは言わない。しかし、アイアンマンは是非とも再登場させてほしいのだが……。