魅惑の黒苺


 昨日のエントリで「BlacberryPrivを調べている」と書いた。私を知っている人たちは多分「またゲテモノに手を出して〜」と呆れたことだろう。それはまったく否定できないが(笑)、そこに至るまでの経緯は次のようなものである。

 前に数回書いたけれども、私のポリシー──というより、学んだ経験則として「人は自分が持っているデバイスによって行動を規定される」というものがある。最初は私自身への予測として書いたつもりだったが、時間が経ち、それは現実のものになったと感じている。
 以前使っていたシグマリオンというデバイスがなくなって、まず真っ先に変わったことは「出先で文章を書かなくなった」ことだ。書けなくなった、と言ってもいい。シグマリオンはポケットに入るが、Lifetouchnoteはポケットに入らない。ネット接続できるかどうかとか、プロセッサの処理速度とかはこの際関係ない。テキストエディタとしての使い勝手の話である。*1
 ポメラを使おうかとも思ったが、初代ポメラは折り畳みキーボードの形状から、机の上など完全に固定できるところでしか使えない。それ以降の折り畳みではないポメラは、ポケットに入るサイズではないので選択肢の外になった。
 出先で文章を書かなくなったことで、文章を書く量そのものが減った。昔、毎週のようにセッションをやっていた頃や、FF11リンクシェルメンバー向けにSSを書いていた頃などは、喫茶店に篭って手あたり次第に書き散らしていたものだが、今書いている分量はその頃とは比較にならない。このブログも、一時期に比べると長文エントリが減ったのではないかと思う。

 次に、外出時間が減ってきた。頻度はあまり変わっていないので、一回あたりの外出時間が減ったというべきだろう。何しろ自宅のキーボードに貼りついていないと文章が書けないので、早めに家に戻る癖がついてしまったのだ。「このブログにそこまで心血を注いでいるのか?」と言われそうだが、大層なブログではなくても、書きたい文章があって、出先の用事が済んでしまえば「あの店にも寄ってみようか」という気分にならなくなったことは事実だ。

 最後に、これが一番重要なのだが、思いついた文章が記憶から消えるようになった。歩いている時や、出先でくつろいでいる時などに文章が浮かんでも、メモが取れないので形にする前に消えてしまうのだ。実際“このエントリ”のネタも、頭のなかに4、5回浮かんでは消えを繰り返している。

 正直言って、シグマリオンというデバイスが一つなくなるだけで、これだけ自分の行動パターンに影響を与えるとは思っていなかった。行動パターンを完全に元に戻したいわけではないが、出先で文章を書くという選択肢を取り戻したい。しかし普通のスマホで文章を書く気にはならない。最低でもハードウェアキーボードがほしい……そう思った時、数少ない選択肢の一つがBlackberry privだったのである。*2

 もちろん、これは一種の賭けだ。Sony Tablet Pがそうだったように、買ったはいいがとても文章を打ちたくなるような代物じゃなければ、持ち歩くことも私の生活習慣が変わることもないだろう。それでもSonyTabletPは安くなっていたので賭けられた。黒苺に躊躇しているのは、確実に役立つともわからない賭けに7万円以上かかる、ということなのだ。私にとっては衝動買いできる額ではない。できるだけ情報を集めたい、せめて店頭で簡単な文くらいは打ってみたいと思いつつ、これまた前にも書いたとおり、なかなかその機会に恵まれないのである。

*1:鞄を持ち歩けばいいだろと言われそうだが、何故鞄を持ち歩かなくなったかについては前に書いたとおり。

*2:なお、スマホ用外付けキーボードも私には合わなかったようだ。