そういう事情だったのか


 あの頃、どうしてNECPC-8001,8801,6001,9801と複数のシリーズを同時に世に出していたのか、用途が違うからというだけでは説明がつかないのでは……と思っていたけど、そういうことだったのか。そもそも社内で作っていた部門がそれぞれ違っていたから別シリーズだった訳か。なるほど。納得いった。
 と同時に、これを調整の結果併存させるという方向に行ったのは、いかにも日本的と感じる。マイクロソフトやアップルだったら、片方の部署に煮え湯を飲ませてでもリソースを集中したんじゃないかな、と。WIndows95WindowsNTやWindwosCEが統合されていったように……。

私にとってのオープンワールド


 さて、今回が一連のエントリの最後になる、と思う。
 ずっとナイトシティに通い詰めて、久しぶりに遊んだP5Rの感想……というか、P5Rと比較しての、2077の改めての感想だ。
 この二つはそもそも比較するようなゲームなのかとか、JRPGとして非常に評価の高いP5Rと、オープンワールドRPGとして評価が低い2077を比較するのはフェアじゃないとか、色々な意見もあるだろうけれども、あくまでも私の視点から見て、初めてプレイしたオープンワールドゲームについての感想だと思っていただければ幸いだ。

 物語としてのRPG、そしてゲームとしてのRPGとして考えると、これはもうP5Rに軍配が上がる。

 P5、P5Rは先を見たいからという理由で寝る間も惜しんでプレイしたが、2077にはそういうモチベーションはほとんどなかった。グラフィック等に掛けた費用や手間に比べて、ストーリー自体はかなり薄味だったと感じる。マップ上には沢山のアイコンが並んではいるが、例えばNCPDミッションでいえば出てくる敵を殺すしかなく、被害者と加害者の死体が転がる中で、落ちているメモからそこに至る経緯を読まされるだけ、である。稀に自分の行動によっては被害者が助かることもあるが、立ったままぶるぶる震えるだけで何か意味のあることを語ってくれるわけでもない。また、それらが有機的に繋がって一つの物語を形成している訳でもないので、メモを読んでも「はぁそれで」という感想しか浮かばない。
 
 またゲームとして見た場合も、オープンワールドアクションRPGというジャンルの性質上、戦闘は非常に大味な印象を受けた。P5Rが「ここでこの能力を覚えれば、こんなこともできるようになる!」というカタルシスがあるのに比べて、2077はとりあえず高ダメージの刀を持って、アルマジロを埋めまくったアーマーを着て、敵に突っ込んで斬りまくればなんとかなってしまうし、またレベルを上げてパークを覚えても、やることが大して変わらなかったりする。私が唯一成長でカタルシスを感じたのは、二段ジャンプのサイバーウェアを入れた時だけだった。
 これは2077だけでなく、オープンワールドゲームの宿命だと私は思っている(GTA5なども動画を見る限り似たような感じに見える)。要は、成長にカタルシスを覚えるということは成長曲線が急角度であることを意味するわけで、それがオープンワールドの「いつでもどこにでも行けて、何でもできる」という特徴と相反するのだ。同じアクションゲームでも、クエスト難易度で行き先を細かく絞れるモンハンなどとは、戦闘の設計が根本から異なると感じる。
 また、パーティメンバーがいる訳ではないので(共闘する場面こそあるが)、パーティメンバーの能力も見据えた戦術の構築をする余地もなく、なおさらゴリ押ししがちになってしまう。


 ──と、ここまではネガティブな点ばかりを書き連ねてきたが、ナイトシティという街、一つの架空の町の存在感という意味では、2077の方が優れていた。なるほど、オープンワールドゲームを好む人がいるのもよくわかる。湾岸をバイクで走るため、夜景を眺めるためだけにナイトシティを訪れるという感覚に類似したものは、P5Rにはない。


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 P5Rの場合、存在感があるのは日常パートの街やメメントスではなく、むしろパレスの方だが、クリアするとそこを訪れることができなくなるというある意味潔いシステムになっているので、その風景に愛着が持ちづらい。


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 そこに架空の町が──世界がある、という感覚は、私自身の印象でいえばMMORPGに近い感覚だった。矛盾するようだが、人がいないMMORPGであり、またバイクで走り抜ける感覚はレースゲームのそれにも似ている。もちろん、違う楽しみ方を見出す人もいるだろう。まさに、色々な遊び方が許容されているが故に、人によって千差万別の楽しみ方がある。その懐の深さはさすがというしかない。
 

 私にとって2077は、その作り込みの甘さゆえに高評価を与えることはできないが、しかし世間で言われるほど低い評価の作品ではない。P5Rとは全く異なる楽しみ方のできる、一つの「架空の世界」を作り上げたゲームとして評価できる作品だった。
 スマートリンクやクイックハックの存在のお陰で、エイムのできない私でも遊ぶことができたのも大きい。銃しか使えないようなオープンワールドゲームを同じように楽しめるかと言われると疑問である。そういう意味では、相性のいい作品だった。
 願わくば、バグフィックスにいつか目途がつき、まともな追加要素が来てくれますように。