天才だって信じてた

 劇場版「ぼっち・ざ・ろっく」の総集編を観てきた。





 「ぼっち・ざ・ろっく」という作品がちょっと前に流行っていたこと自体は認識していたものの、原作は一巻を読んだだけで止まってしまっていた。割とギャグがキツめという第一印象だったからだ。ただ、外伝である「廣井きくりの深酒日記」シリーズは割と好きで、こちらは1巻からずっと追いかけている。



 ネットで言われていたことだが、4コマはオチをつける関係で、どうしても大袈裟になりがちなのかもしれない(きらら系はそうでない作品も多いが……)。1話ごとにストーリーがまとまっている方が、私は読みやすかった。



 外伝が面白かったので本編の続きにも興味はあったが、テレビシリーズを見逃したことで機会を逸してしまっていた。そんな折、総集編が劇場公開されると聞き、メディア化されるまで待とうかどうしようか迷ったけれど、せっかくロックが題材だし、劇場の音響で曲を聞いてみたい気分になった。


(以下ネタバレ(?)ありのため折り畳み)













 「のんのんびより」や「ゆるゆり」の時、散々「けいおん」のアンサームービーという表現を使ってきたが、逆に近い題材であるはずのこの作品からは、近しい空気を感じなかった。これもあちこちで語られているが、意図的にけいおんと被らないようにプロットが作られた作品らしく、けいおんが「軽音楽を通じた高校の仲間たちの日々」を描く物語なのに対して、こちらはあくまでもバンド活動が中心であり、仲間たちとの繋がりもバンド活動を通じた部分でのみ描写されている。
 また、けいおんのように軽音部の仲間たちの閉じた人間関係を描くのではなく、主人公たちの外側にいる大人たちの描写も多い。そのため、結果的に全く違う印象の作品に仕上がっているように見えた。
 今回は、全くテレビ版を見ていなかったのがむしろ幸いしたのかもしれない。両方を見ている人からすると結構端折られているように見えたらしいけれど、何の先入観も持たずに見た限りではそんなことはなく、この劇場版だけで十分ストーリーの内容は把握できた。もしかしたら、出番が少ない脇役の登場人物への理解が浅かったりするのかもしれないが。これまではきくりの外伝を通した視点でしか本編の流れを知らなかったので、外伝のちょっとした登場人物が、実は本編に出ていた人物であることも全く気付いていなかった。
 原作となるテレビシリーズ12話のうち、今回の劇場版で8話までまとめているので、後編は順当にいけば4話分ということで、ほぼカットされることなく収録されるのだろうか。あるいは、前編に比べて新規カットが多い可能性もある。

 何もかもけいおんとは対照的な作品ではあるが、1点だけ「久しぶりに劇中に登場した楽曲を追いかけたくなった」という点だけは、私にとってあの作品に通じるものがあり、懐かしい気分になった。