次世代の書籍


 昨日「次世代のデバイス」というタイトルでエントリを書いておきながら、携帯電話の話しかしなかった。じゃあ最初から携帯電話というエントリにすればよかったんじゃね? とお思いかもしれないが、実は昨日もう一つ書こうと思っていたことがあったのだが間に合わなかったのだ。
 今日のタイトルでお分かりかもしれない。電子書籍の話である。

 ついに日本でもiPadが発売され、電子書籍についての議論があちこちでかまびすしい。将来的に電子書籍が普及していくかどうか、あるいは電子流通が主流になっていくことへの懸念については前にCDの流通の話でちょっと触れたと思う。
 今日の話題はそちらではなく、既存の書籍の電子化、つまりブックスキャンの話である。友達のブログでも時折、自分でブックスキャンを続け、それを楽しみに変えてしまった猛者やブックスキャンサービスの話などが取り上げられていた。

 私自身ブックスキャンサービスにも自炊にも興味があっていろいろ調べてみた。どうやら新しく始まったブックスキャン代行サービスについては、著作権法上合法かどうかが論議を呼んでいるようだ。


 例えばこんな感じである。


BOOKSCAN(ブックスキャン) 低価格・書籍スキャンサービス(大和印刷)
ブックスキャン?何考えてんだ!(マンガ家Sのブログ)
残念ながら現状では複製代行サービスは難しい(栗ブログ)
ブックスキャン代行サービスは合法だよね?(404 Blog Not Found)
本のスキャン代行サービス『BOOKSCAN』に漫画家が激怒。でもちょっと勘違いしている?(デジタルマガジン)
BOOKSCAN(ブックスキャン)で喧々諤々について。(ブログ名の設定は、まだ)


 利用者や代行業者は合法と主張したいだろうし、著作権者側は違法と主張したいだろう。このエントリはブックスキャン行為が合法かどうかを論議するのが目的ではないので、そのものに関する判断は避けたい。そもそも、外野がどんなに合法か違法かを騒いだところで、本当に告訴された時に法律判断を行うのは結局は裁判官なのだから、最終的な結論の出しようがない(上のリンク先の中では、法律判断を専門にしているのは栗ブログだけ)。

 その上で上記全てのリンク先をチェックした身として個人的に言わせてもらえば「合法か違法かの論議が起きる時点で提供するサービスとしては疑義がある」ということになるだろうか。
 例えば、とあるバイクショップで「このバイクは道路運送車両法上、合法か違法かわかりませんが、私は合法だと信じています」と言われてバイクを薦められたら買う気になるだろうか? 告訴されたら代行業者だけでなく、依頼した人間も法的責任を問われる。その可能性は、ゼロではないというだけでもリスクが高すぎる。
 
 とはいえ、利用者としてこのサービスが合法であると信じたい気持ちはよーくわかる。違法利用することを企図していない利用者の立場からすれば、自分の本を自分が頼んで電子化してもらって何が悪いのか、という気分になって当然だ。
 しかし、同時に著作権者の権利は守られなければならない。この時善良な利用者だけでなく、悪意を持ってこのサービスを利用しようとする人間がありうる、という視点に立たないと著作権者の権利は守られないだろう。

 音楽や画像を記録しておくメディアは、科学の進歩と共に容量を増してきた。ただ紙媒体の本だけが、それが誕生した時から今に至るまでほとんどその容量を増やしていない。本が好きで仕方のない人間ほど、自分の家の床が本の重みで抜ける心配と日々戦っている。レベルは低いが私もそうだ。上記の論争はそのために起こったといって過言ではないと思う。
 電子化することで、購入した本の重さと戦わなくてすむ日が来ることを、多くの人間が切望している。そのための法的な、あるいは技術的なハードルがクリアされ、違法利用の危険を排除した上でサービスが利用できる日がいつかくればいいのだが。