終焉を打破するもの

Role&Roll Vol.72


 今号のロール&ロールの見所は、シルバーレインに続くトミーウォーカーとSNEがタッグを組んだTRPG、「エンドブレイカー」だ。


 正直言って、設定はかなりいいと思う。特に「どんな大魔導師であっても、凄腕の剣士であっても、運命に定められた結末は変えられない。それを変えられるのはPCたち『終焉(エンド)を終焉(ブレイク)する者』だけ」という設定は素晴らしい。
 詳しく説明すると、こうだ。エンドブレイカーの世界では、誰かを憎んでいるもの、憎まれているもの、強すぎる本能のままに生きるものは「棘」にとりつかれ「マスカレイド」と呼ばれる魔物に変貌してしまう。エンドブレイカー以外の人間がどれだけマスカレイドを倒しても、棘は次の犠牲者を見つけ出してとりつき、マスカレイドに変えてしまう。エンドブレイカーに倒された時のみ、棘は次の犠牲者を生むことなく消滅する。つまりマスカレイドを本当の意味で倒すことができるのは、PCだけしかいない。
 この、PCしか事態を打開することはできないというのがいい。ぶっちゃけるとこの設定をSW2.0に是非取り込んでもらいたいと思うくらいだ。


 さて、逆にこれはどうなの? と思った部分はルール部分だ。SNEのこの手のゲームにありがちなルールではあるんだけど、戦闘時ですらない一般判定をするたびに表を参照する必要があるのはどうなのかと思う。
 ソードワールドのレーティング表の時にも同じことを感じたのだが、今回エンドブレイカーについて語っている御大のコラム記事を読んでなんとなく謎が解けた気がする。どうも、SNEのデザイン思想に「ボードゲームのような判定システムを(単純でわかりやすいから?)TRPGに取り込みたい」というベクトルがある気がする。考えてみれば、SWのレーティング表も極めてシミュレーションゲーム的な、ボードゲーム的な判定システムだ(確かデザイナーがバトルテックのミサイル命中本数表を参考にしたとかどこかに書いていたような……)。
 確かに複雑な修正値の計算がいくつも重なるような判定システムではないのだけど、その代わり判定するたびに表を参照するので別の意味で時間がかかりそうだ。基本判定の表は1つしかないので覚えようと思えば覚えられないこともないが、自分の判定の結果が他人の判定の結果に影響を及ぼしたりするので、結局考えないといけないのは同じだ。
 また、GMをやってる立場からすると困るのが「ダブルトリガー」のルール。これは、いわゆるソードワールドのクリティカルと一緒で、完全に偶発的なダイスの結果のみによって、達成値が跳ね上がるシステムだ。いわゆるヒーローポイント的に、恣意的に起こすことはできないため、GMとしては見せ場でこれが出ることを前提に高めの目標値を設定することはできないし、逆にとんでもない場面でダブルトリガーが発生する可能性も否定しきれない。


 例えば、冒険企画局の「サタスペ」などであれば、ダイス目によって起こるハプニングすらもシステムや設定に取り込み、スラップスティックな世界観を形作っている。ところがSNEの場合、システムはアクシデンタルであるにも関わらず、リプレイの雰囲気や世界設定はドラマツルギー重視な部分があるから事故が発生するのだと思う。パーティリーダーが最初のシナリオでいきなり死んだり、ラスボスが一撃で倒されたりし、そのたびにフォローに四苦八苦するのもそのせいではないだろうか。