ソード・ワールド2.5 ルールブックII (ドラゴンブック)
- 作者: 北沢慶/グループSNE,輪くすさが・真嶋杏次
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/09/20
- メディア: 文庫
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ルールブック1の時点でも突っ込みどころはあったけど、まさかルールブック2を読んで輪をかけてブチ切れる羽目になるとは。
以下折り畳みます(もちろん辛口)。
シナリオに名前や背景、性格やシナリオ上の役割などが規定されているNPCに対しては、この聞き込み判定はそぐいません。これらに対しては、プレイヤーがNPCの立場や性格、好みなどを考慮、推定し、適切に交渉を行って情報を得るのが原則です。こういうところまですべてサイコロ判定で済まそうとするのは、会話で進むTRPGとしての楽しさをスポイルするものです。(ルールブック43ページより)
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この記述を入れたデザイナーとは、未来永劫分かり合えないだろうなと思う。
もう15年も前、あるいはもっと前からずっと言われてることだが、「交渉をルールで規定しないと、PCの(ルールで規定された)能力ではなく、(GMを含む)プレイヤー間の力関係や口の巧さで展開が決まりがち」だ。挙句、口プロレスの応酬という不毛な結果を生む。現に、デザイナーの一人である清○氏自身が執筆したソードワールドリプレイが、どれもこれもその悪い見本になっている。氏が強く出れない水○氏の主張は無茶でも全面的に通り、強く出れる別リプレイのプレイヤーの主張は通っていない。
交渉の結果をダイスで決めたとしても、会話で進むTRPGの楽しさはまったくスポイルされない。なぜなら、プレイヤーは判定の結果とは別個に、演出としての会話を楽しむことができるからだ。相手とのやり取りを楽しみ、その上で判定に失敗したら失敗の結果を演出すればいいし、成功したら成功の結果を演出すればいい。
判定の結果をロールプレイではなく、ルールによって求めることのメリットは、初心者、口下手な人、プレイグループ内で立場が低くなりがちな人(年少者など)でも、ルールに基づく能力が担保されていれば、活躍の機会が平等に担保されることだ。逆に、楽しさがスポイルされるという論にはまったく同意できない。なぜなら私は、交渉がルール化されているゲームで楽しく遊ぶ人々を、実際に目の前で見てきたからだ。
誰が「適切」だと決めるのか
上記の記述では「適切に交渉を行って情報を得る」とある。では、セッションにおける「交渉」が「適切」であるかどうか、それを誰が決めるのか。もちろんGMだ。しかし、そこにルール的な裏づけは存在しない(このゲームにおいては、存在できない)。ならば、GMが適切と判断した交渉に、別のプレイヤーから「その交渉は不適切だと思うんですが」という指摘を受けたら、何をもって反論するのか。根拠は何もない。自分の経験? 感覚? アルフレイム大陸における交渉の何が正しくて、何が間違っているのか、ルールブックには1行も書かれていない。
これを踏まえて添付シナリオを読み、思わず唖然としてしまった。「立場や性格、好みなどを考慮」も何も、添付シナリオの登場人物には好みも性格もシナリオに一行も書かれていないのだ。ダーダムだのミルカだのリマースだのという人物は、一体どんな背景があるのか? 何が好きで何が嫌いなのか? どんな性格なのか? さっぱりわからないのに、何を考慮してどう適切な交渉だと判断しろというのか。
添付シナリオだけではない。ソードワールドの過去のシナリオ集で、登場人物にまともな背景設定や性格設定があったのは山本氏が執筆したシナリオくらいで、「戦車レースの光と影」も「ザルドルの闇に沈む」も「デリーレの谷に惑う」も、NPCの性格も背景もロクに語られたことがない。「有力者だ」とか「帝国のスパイ」だなんて情報しかない人物への「適切な交渉」なんて、シナリオ作った張本人の脳内当てクイズ以外の何者でもないではないか。
なお、最後に一つ付言する。交渉を判定で解決するかどうかは古いか新しいかの問題ではない。トンネルズアンドトロールズには魅力度のセービングロールがあり、クトゥルフにも交渉関連の技能がある。D&Dも技能ルールを採用すれば交渉を判定で解決することは可能だ。ルールがあるということは、必要とされてきたということでもある。
頑ななまでに交渉をルールで解決しようとしないのは、ソードワールドだけ……とまでは言わないが、かなり稀有な存在であることは間違いない。