前回「日本人はなぜ銃より剣が好きなのか」という話を取り上げたけれども、この話にはまだ続きがある。そもそも最初の発端は「FFに代表されるJRPGは、どうして“銃やマシンガンのある世界で”わざわざ剣を使うのか?」というトピックだ。
最初から剣と魔法しかないファンタジー世界で剣を使うことは、恐らく西欧人にもそれほど違和感はないと思われる。なぜ“銃が使える状況なのに”わざわざ剣を使うのか? これは日本人の剣好きという嗜好ともに、裏を返せば「純粋なファンタジー世界ではなく、なぜわざわざ銃に代表されるテクノロジーの要素を持ち込むのか?」という命題でもある。つまり単に剣が好きというだけでなく“銃も好きだから”剣と銃が共存する世界観を構築するとも言えるのだ。
例に挙がっているFFだと、明らかにテクノロジーによる産物が登場するようになったのは「6」からだろう(あの有名な「飛空挺」がテクノロジーの産物ではないと仮定しての話だが)。MMORPGである「11」でも、銃を使うジョブ「コルセア」が登場し、生産技術の中には「錬金術」が存在する。
バンナムのテイルズオブシリーズには銃を使うキャラクターが何人も登場するし、ファルコムの英雄伝説も「空の軌跡」以降「導力革命」と呼ばれる産業革命でテクノロジーが進歩した世界を描いている。アトラスの「世界樹」やカプコンの「モンスターハンター」には銃を使うガンナーが登場する。それらがほとんど存在しないのは、ドラゴンクエストとウィザードリィシリーズくらいではないだろうか。銃やテクノロジーらしきものが登場しないRPGを探すほうが難しいくらいである。
TRPGにおいても状況はそれほど変わらない。ソードワールド2.0の「マギテック」を始め、アリアンロッドRPGの「ガンスリンガー」、ブレイドオブアルカナの「デクストラ」など、銃の撃てないファンタジーRPGの方が少ない。
ただ、ファンタジーRPGでありながら銃が登場することに対して、明確な理由付けのされているゲームは、電源あり、電源なしを問わずほとんどない。「錬金術だから」「ロストテクノロジーだから」という程度だ(ここでいう銃とは、いわゆるフルプレートよりも古くから存在する火縄銃の類ではない)。
そのなかで、アルシャードffは「ファンタジーでありながらテクノロジーの産物が存在する」理由に詳細な設定が存在する珍しいゲームだといっていいだろう。
アルシャードffにおいては、いわゆる科学技術の動力装置“リアクター”にシャードと呼ばれる鉱石が必要となる。放浪の冒険者(クエスター)の多くはこのリアクターを所有していないため、テクノロジーを自在に扱える立場にない。それらは敵役である「帝国」がほぼ独占しているという設定だ(このあたりの経緯については以前「帝国について」というエントリでも触れた)。また、その原料となるシャードはクエスターの証であり、彼らを導くものであるため、ある意味ではクエスターと科学技術は決して相容れないものである。
ゲームデザイナーの井上ジュンイチ氏がその辺りに非常にこだわる人物だからこそこれらの設定があるとも言える。また、彼はこれらの設定を「今のコンピュータRPGに慣れた人たちのための新世紀スタンダード」として作っており、オリジナリティよりも“どこかで見たような”設定であることを意図的に優先している(シャードを魔石に変えるとFF6に似ているし、リアクターを魔洸炉と言い換えるとFF7にも似ている。また巨大集積都市が登場する辺りも7に似ている)。
また、先程の命題には逆もあり得る。つまり「ファンタジー世界にテクノロジーを持ち込む」のではなく「現代、あるいは現代を超える科学技術の発達した世界に剣を持ち込む」という発想である。
FFも13辺りになってくるとかなりテクノロジーレベルの高い世界を扱っており、むしろこちらの表現の方がしっくり来るかもしれない。アトラスの「ペルソナ」、セガの「ファンタシースターオンライン」、トライエースの「スターオーシャン」などがこちらに該当するだろうか(「EOE」は剣が登場しない稀有な作品である)。
こちらのパターンでも、あえて剣を使うことに明確な設定上の理由を設けてあるゲームはほとんどない。「剣を使うのが得意な奴は銃を撃つより剣を使った方が強い」──武器の威力の差は考慮外、というわけだ。
ゲーム以外のメディアであれば、そこに理由付けのある作品がいくつかないわけではない。「フォースの力で射撃武器がほとんど無力化されてしまうためライトセイバーを使う」スターウォーズや「遺伝子改良された騎士の反射速度が速すぎて銃の意味がない」ファイブスターストーリーなどがそれだ。
(さらに続く)