ファンタジー世界と図書館(4)

 さて、TRPGに図書館が登場するとしたら、それはどんな場面だろうか。
 真っ先に思いつくのは冒険の舞台、すなわち「ダンジョン」だろう。つまりゲームの舞台となる時代よりも恐らくは過去、古代文明だの帝国だの王国だの時代の図書館の遺跡から価値のある蔵書を持ち出してきて……というのが一番わかりやすい。
 ただ、コンピュータRPGにおいてはFFを始めとして時折見かける図書館ダンジョンだが、TRPGにおいては自分の記憶を遡ってみたりちょっと資料を探してみたりしても、蓬莱学園(ファンタジーRPGではないが)の旧図書館くらいしか思いつかない。やはり、報酬が本に偏る(それ以外の報酬を出すにはそれなりの理由が必要)とかモンスターの種類が限られる(魔法生物くらいしか生息してなさそうだ)のが問題なのだろうか。


蓬莱学園ワールドツアー

蓬莱学園ワールドツアー


 というわけで、一番多いのは「シティアドベンチャーにおける情報収集の舞台/手段として」だろう。特定のモンスターの生態を調べるため、あるいはダンジョンの情報を集めるために文献をあたる、シナリオのキーパーソンの過去を調べる、あるいは往復書簡を探す等々……現代物やサイバーパンクRPGに比べ情報収集の手段が限られるファンタジーRPGにとって、本という情報の集積体をさらに集積した施設というのは、数少ない貴重な情報源の一つだろう。もちろんその場合、PCが本を帯出する必要はない(閲覧さえできればいい)から、図書館が本の貸し出し機能を持っていなくともなんら問題はない。
 今でこそ、一部のTRPGにおいては情報収集判定の手順が明確化されているため図書館の必要性が薄れたかもしれないが、かつては情報収集の際「どこで何の行動を取るか」の宣言が必須だった。そんな時図書館という場所があるのとないのとでは、プレイヤーにとっての難易度に相当の差がある。もし、リアリティ()を重視して図書館の存在を認めないというGMならば、シティアドベンチャーにおいてはそれに代わる情報収集の手段を用意し、それがプレイヤーにとって図書館と同じくらいわかりやすく、かつメジャーな方法でなければフェアとは言えないだろう。私はそんな便利な存在には心当たりがないが。

 ファンタジーRPGに図書館が登場するのは、故なきことではない。私は図書館にロマンを感じるが、ファンタジーRPGにおける図書館とは決してロマンだけのために存在するわけではないのだ。もしあなたが図書館のないファンタジー世界に放り出されたら、一体どこで古代の文献を探し、どこで資料を集めるだろうか?