これはなかなか面白い考察

RPGの「僧侶職(Cleric)」はいつ回復呪文を唱えはじめ(その後さらにヒーラー役割を期待されるようになっ)たのか?


 元々のツイートは、ブラックムーアキャンペーンの起源とかまで迫っててなかなか参考になる。実は、同じように古いTRPGであるファイティングファンタジーやトンネルズアンドトロールズには僧侶職がいない。つまり、D&D以外のファンタジーにおいては、戦士や魔法使い、あるいは盗賊のイメージは一般的でも、僧侶はそうではなかったのではないか? という推測ができる。この辺は、ドラクエとかFFとか、最初から回復役のいるRPGが当たり前だった日本の環境では理解しづらいのかも。
 「ゲーム上、回復呪文の使い手が必要だったから、僧侶が追加されたのでは?」というのも、順序があべこべの気がする。T&Tがそうであるように、瞬時に傷が回復する手段が必要だったら、パッと思いつくのは「魔法によるもの」、つまり魔法使いが回復呪文を使えばいい。それをわざわざ分けたということは、僧侶という役割が初めにあって、それから回復役を割り当てられたと考える方が無理がない。
 指摘してる人がいるように、クラシックD&Dクレリック(僧侶)は、レベル1では回復呪文が使えない。ターンアンデットは使用できる。このことを考えると、当初はクレリックは対アンデット用の戦士系職業として考えられており、回復呪文の存在はキリスト教の奇跡や秘蹟に基づくもの。最初は他の能力と同等の扱いだったが、時代の変遷と要請に従って、回復役としての役割が大きくなっていったのではないか、という気がする。ぶっちゃけクラシックD&Dクレリックって、回復呪文そんなに持ってないしね……。キュアライトワンズ、キュアシリアスワンズ……あと、なんだろ?


 では、TRPGでそもそも回復呪文の存在が大きくなっていったのはなぜか、というのは、これは推測がつく。RPGがシミュレーションゲームから変化していく中で「勢力」から「個人」にスポットライトが当たるようになり、感情移入の対象が簡単に消滅してしまうとゲームが成り立ちづらくなったからだ。僧侶が存在せず、キャラクターが使い捨てのままだったら、RPGは今のように広まることはなかっただろう。RPGが今のようなジャンルとして確立されるにあたって、僧侶という存在が果たした役割は大きい。