どうしようか迷ってる


 買うべきか……どうしようか……。今の環境だとNintendo Switch Onlineに加入してないと、スーパーマリオブラザーズ遊べないんだよな……。
 スーパーマリオ35で久しぶりにやっても面白かったので、ちょっと迷っている。

コロコロ少年の思い出(29)・トーキョーN◎VAと私

 ゲーマーズ・フィールド別冊を読んで懐かしい気分になったし、ここで本誌のリニューアルやサイバーパンク2077も発売されるということで、トーキョーN◎VAの思い出話でも書いていこうと思う。今までは100の質問などで部分的にしか書いたことがなかったと思うので。


トーキョーN◎VA THE AXLERATION サプリメント クローム・メモリーズ

トーキョーN◎VA THE AXLERATION サプリメント クローム・メモリーズ

  • 作者:鈴吹太郎
  • 発売日: 2014/08/30
  • メディア: おもちゃ&ホビー


 のっけから自慢話(笑)になるが、恐らく私は日本で一番早く、トーキョーN◎VAを入手した一般ユーザーの一人だろう。N◎VAの初版はツクダから発売されているが、当時ツクダのゲームはTRPGの総合雑誌だったRPGマガジンくらいにしか取り上げられなかった。しかもホビージャパンのゲームのように特集などは組まれず、発売予定の欄にチラッと載るくらいである。なので、知名度はゼロに近く、ジャンルがサイバーパンク(サイバーアクション?)であることくらいしか事前にはわからなかった。
 とはいえ、前にも書いたが、私はその頃サイバーパンクのTRPGを集めていた。だから内容が全く分からなくとも、ジャンルがサイバーパンクという時点で購入は決まっていた。渋谷のマークというTRPGを取り扱っていた店にTRPGの発売予定日のリストがあり、入荷当日に購入した記憶がある。

 N◎VAと天羅という、私の中で殿堂入りしている二つのゲームの購入直後の印象は、実は正反対だった。天羅というゲームの凄さは、実際にやってみるまでまったくわからなかった。友人が「東洋風のTRPGをやってみたい」と言い出さなければ、押し入れに放り込まれたままだっただろう。
 これに対して、N◎VAの凄さは買ってすぐにわかった。

 私はサイバーパンクTRPGを収集していたけれど、サイバーパンクというジャンルそのものが好きだったかというと、N◎VAに出会うまで、それほど好きだったとは言えない。それまでのサイバーパンクTRPGのイメージは、とにかく暗く、血生臭く、泥臭かった。鋼鉄と、鉛の銃弾と、血飛沫。オンラインの世界は身軽だといっても、ネットランナー同士の戦いに負ければ前頭葉がバーンナウトして死ぬ。クールだ、スタイリッシュだとあちこちに書かれ、例えばシャドウランの公式リプレイだと士貴さんのイラストこそそう見えるものの、実際のセッションでは捕虜の耳を撃って拷問。これがクールでスタイリッシュなのか? とずっと疑問に思っていた。
 その疑問を、N◎VAが吹き飛ばした。N◎VAサイバーパンクは、不思議と血生臭くない。理由はニューロデッキにある。弘司さんのイラストの影響は非常に大きい。ビジュアルイメージは偉大である。
 特に私が衝撃を受けたカードが3枚あった。一枚ずつ説明していこう(以下のニューロデッキはすべてサプリメント「クローム・メモリーズ」からの引用です)。

ハイランダー


 1枚目がハイランダーだ。膝を抱えた裸身の少女が、宇宙をバックに浮いているイラストである。彼女は生身だ。結線すらしておらず、身体にはプラグの跡もない。これがNOVAにおける、一つの生き方(スタイル)だ、と言われて、私はショックを受けた。他のサイバーパンクRPGに、こんなキャラクタークラスは存在しない。いや、それどころか、サイバーパンクに限らずとも、こんな職業はなかった。*1記憶喪失で無垢な存在であること、それそのものがアイデンティティであり、「能力」。それなのに、彼女は22のスタイルの中でもっとも先進的なスタイルだ。
 「軌道帰り」。既存のサイバーパンクのイメージから最もかけ離れていながら、サイバーパンクの象徴ともいえる存在だ。

カタナ


 2枚目がカタナである。これも衝撃だった。他のゲームでフルボーグ(全身義体)といえば、頭から爪先までごてごてした鉄の塊、ロボコップ……いや、ギャバンとかああいった感じのイメージだった。ところがNOVAのカタナは長髪の女性であり、その身体は鉄ではない。説明には「クリスタル・リプレイスメント」と書かれている。つまり水晶質の何かで全身を置き換えている。一見すると、肌の色がちょっと違うだけの人間に見える。しかしこれでも殺戮機械(カタナ)なのだ。
 そして、サイバーパンクで近接戦闘を専らとするスタイル、というのも画期的だった。シャドウランの公式リプレイにもフィジカルアデプトのPCが登場するけれど、原書派の人たちが当時ボコボコに叩いていたのを覚えている。リプレイを読めばわかるが、フィジカルアデプトのPCが活躍できるように、悪い言い方をすれば「贔屓」されたシナリオだったからである。逆にいうと、そうでもしなければ活躍できないのだ。強化反射神経を持てない、相手に近づかないと攻撃できないというのは、それだけ大きなハンデだった。プレイヤーはさぞかし苦労したことだろう。銃器やサイバーウェアの性能をリアルに再現しようとすると、必然そうなる。生身の素手で、銃を持ち最新技術で全身を強化した人間に勝てるはずがない。*2
 ところが、カタナは違う。というより、N◎VAは違うといった方がいいだろう。カタナの他にもチャクラという、近接戦闘を得意とするスタイルがもう一つ登場する。むしろ、射撃が得意なスタイルの方がカブトワリ一つしかない。そして、射撃が絶対有利に設定されていない。遠距離から狙撃した瞬間、特殊技能『リフレクション』で銃弾を反射され、『走破』で距離を詰められて斬られて終了である。リアリティはないが、カッコいい。重要なのはそこだ。
 なお、ハイランダーもカタナも長髪の女性、と一口に言うものの、他のゲーム(特に翻訳物の原書版)だと、モヒカン頭の女性が出てくるのが当たり前だったりするが、NOVAにはほとんど出てこない。これも私の感性にはマッチしていた。

カブト


 そして、最後がカブトである。透明の盾を構えた、壮年の男性のカードだ。
 サイバーパンクで盾! それも、機動隊の持つような武骨な盾ではなく「クリスタルウォール・シールド」と呼ばれる、透明な盾だ。
 「右手に結線された銃を、左手に盾を」か、カッコいい! というのが第一印象だった。能力も斬新だった。まだ、MMORPGなどが世に出る前、盾役やタンクなどという言葉が、TRPGにももちろん存在しなかった時代。重戦士のように、防御力の高いクラスというのは他のゲームにもあったが、他者の受けるダメージを肩代わりする、あるいはそれを軽減するという能力は他で見たことがない。FFのナイトに「かばう」があったくらいだろうか。しかもこのゲームはファンタジーではない。サイバーパンクRPGなのだ。


 そしてもっと言えば、この22枚のスタイルで、トーキョーN◎VAのすべての人間を表現するという概念が、また新しかった。
 当時のTRPGは、PCをクラスごとに分けて、クラスの能力で表現するクラスシステム制と、技能の集合体で表現するスキルシステム制に分かれていた。前者の代表がD&D、後者の代表がルーンクエストクトゥルフの呼び声である。ソードワールドは技能とは呼ぶものの、実質的にはマルチクラスが可能なクラスシステム制だ。
 クラスシステム制とスキルシステム制の最大の違いは「シナリオに登場するNPCを、ルールで記述できるか」に現れる。D&Dがわかりやすい。D&Dのクラスはファイター、マジックユーザー、クレリック、シーフだが、ではD&Dのワールドに存在する人間すべてがこの4種で表現できるわけではない。ソードワールドがクラスシステム制だというのは、この点からだ。D&Dにはノーマルマンという一般人のクラスが、ソードワールドにはフィッシャーマンなどの一般技能が存在する、とされるが、どちらもルール上の処理としては「何の能力も特徴も持たない」と言っているに等しい。
 逆に、スキルシステム制のゲームは、すべてのNPCが同じルールフォーマットで記述できるというメリットがある代わりに、能力が細分化されすぎて、どんなキャラクターかを説明するのに苦労するというデメリットがあった。
 サイバーパンクRPGでも事情は変わらない。メタルヘッドのハンター、シャドウランサイバーパンク2020のアーキタイプ。これらはクラスシステム制であり、様々な種類は存在するが、それらですべてのNPCが表現できるわけではなかった。
 しかし、NOVAは違う。NOVAのスタイルは「NOVAで生きる人々を22に大別したもの」であり、理論上はすべてのPC、NPCが22のスタイルで表現できる。キャラクタークラスの数が22というと多く見えるが、それですべてのキャラクターを表現すると考えると、22という数は覚えきれないほど多くはなく、多様性が失われるほど少なくもない絶妙な数である。しかも、タロットカードの知識があれば「『死神』がカゲ(殺し屋)、『正義』がフェイト(探偵)」というように、それぞれのアルカナとスタイルを対応させられるので、ただ22個を覚えるよりもずっと覚えやすい。

 トーキョーNOVAは、PCを作る制約がなく、どんなキャラクターでも作れる、まさに今回の別冊の記事でいう「ビッグゲーム」だった。その自由さと斬新さが私を惹きつけた。自由すぎて迷子になりかけたこともあったが、Revolution(革命)が再び自由さと斬新さに輝きを与えた。その超新星の輝きは、今なお私を魅了している。


*1:これよりずっと後になって、メタルヘッドに「イノセント」というクラスが追加されたことはある。

*2:当時富士見書房が翻訳していた第2版の話である。最新版の話ではないので念のため。