ある場所で「ファイナルドラゴンクロニクル(FDC)は世界樹のパクリ」という文章を目にしたのだけど……似てるだろうか? 私にはあまり似ているようには見えない。少なくともキャラ作成ができないという時点で、世界樹やWIZに類するゲームには思えない。あえて言うならBUSINだろうか。
むしろ、キャラクターが上級クラスへと不可逆にクラスチェンジを遂げていくゲームシステムと、18人の控えのキャラクターの中からPTを組んで出撃する様からは、ファイヤーエンブレムのようなシミュレーションRPGを想起するのだが。同様のシステムを持つ普通のRPGは、寡聞にして聞かない。
ところで、前にFDCを紹介した時にはプレイ日記の形を取っていたため、ゲームシステムについてはあまり踏み込んで説明しなかったと思うので、ここで簡単に紹介しておこう。
FDCにはToHeart2の18人のヒロインが登場する。スタート時に仲間となっているのは環とこのみの二人だけ(主人公である貴明は「いるのだが、いない扱い」。イベントシーンなどでは台詞があるものの戦力にはならない)だが、ダンジョンを踏破していくと「途中で苦境に陥っているのを助ける」か「ボスとして登場するのを倒して仲間にする」かどちらかのパターンでメンバーに加入する(レベル1ではなく、踏破時の適正と思われるレベルで加入してくるので即戦力になる)。
パーティメンバーは加入時、4つの基本クラスのいずれかとなっている。
ファイター・環、瑠璃、よっち、はるみ、ささら
マジックユーザー・このみ、愛佳、ちゃる、珊瑚、菜々子、るーこ
スカウト・郁乃、花梨、由真、イルファ
この基本クラスの段階でWIZが好きな人などは「あれ?」と思うかもしれない。基本クラスが戦士、魔術師、僧侶、盗賊の4種類ではないのだ。魔術師と僧侶が「魔法使い」とでも呼ぶべき一つの系統に統合されているのである。では、4つめのメイド系というのは何かというと、BuffとDebuffを得意とする支援系クラスである。
そして、これらの基本クラスはレベル15、レベル30で上級クラス、最上級クラスへとクラスチェンジが可能になる。
ファイター → パラディン → ヴァルキリー
→ ダークナイト → 侍
→ ダークロード
マジックユーザー → ソーサレス → ウィッチ
→ エンチャントレス → マジカルプリンセス
→ プリーステス → セージ
→ ビショップ
スカウト → アーチャー → スナイパー
→ アサシン → トレジャーハンター
→ くのいち
メイド → バード → 歌姫
→ ダンサー → マスターアイドル
→ ジョシコーセー
基本クラスから上級クラスになる時は自由に選べるが、最上級クラスへの転職は上級クラスのどれを経由したかによってなれないクラスがある。例えば侍はパラディン、ダークナイト両方から転職できるが、ヴァルキリーはパラディンからしかなれず、ダークロードはダークナイトからしかなれない。
上級クラスに転職する段階で初めて、マジックユーザーが魔術師系クラスと僧侶系クラスに分化する。ソーサレスが前者、プリーステスが後者で、エンチャントレスは補助に特化したその中間だ。その傾向は最上級クラスでさらに顕著になる。19人のパーティメンバーのうちマジックユーザーの割合が一番多いのは、最上級クラスの数が一番多いからだと思われる。
また、メイド系最上級クラスの「ジョシコーセー」だけは特殊なクラスであり「ファイター系、スカウト系1次職、2次職のすべてのスキルを習得できる」という特徴を持つ。
19人のヒロインはあらかじめ設定された基本クラスを変えることはできない。このみをファイターにすることはできないし、環をスカウトにすることもできない。ヒロインはそれぞれのクラスごとにオリジナルのグラフィックが設定されている(例えば、本編では学生という設定ではないシルファや春夏の制服姿がおがめるのはFDCだけである)。
クラスチェンジしてしまうと前に戻ることはできない。習得可能なスキルテーブルそのものが上級クラスのそれに入れ替わってしまうので、レベル15になったからといって急いでクラスチェンジしてしまうのが必ずしもいいとは限らない(クラスチェンジ前のスキルについてはそれ以上の成長等ができなくなるから)。このあたりはアリアンロッドに似ている。
また、レベルリセットという選択肢があり、成長したキャラクターをレベル1に強制的に戻すこともできるが、それによってスキルポイントの上限が上がったりするわけではなく、ただの「やり直し」である。
これを踏まえた上で、FDCのパーティ構成は大きく二種類に分かれる。「ファイターを攻撃系の上級クラスへ転職させ、マジックユーザーを支援、回復系に特化したクラスに転職させる」か「マジックユーザーを攻撃系の上級クラスに転職させて攻撃役にし、ファイターを防御系のクラスにする」(マジックユーザーの攻撃魔法は敵対心が高く、敵の集中砲火を浴びて詠唱中断を誘発するため、詠唱を完了するには敵の攻撃からマジックユーザーを守る防御役が不可欠)。
ただ、繰り返すが好きなキャラクターを好きなクラスに設定することはできないし、そもそもヒロインがパーティに加入してくる時期がかなりバラバラであるため、パーティ編成はダンジョン攻略の段階によってかなり制限される。特にスカウト系とメイド系にそれが顕著で、第4階層踏破までスカウトを入れようと思えば郁乃しかおらず(3人目の加入はなんと8層踏破後だ)、メイドも第3階層踏破までシルファ以外にいない。
プレイヤーとしてはキャラへの思い入れを第一にパーティを組みたいのが心情だが、戦闘バランスはかなりタイトであり自由が利きづらい面もある。個人的には環、このみ、郁乃、愛佳でパーティを組みたかったのだが、基本クラスがマジックユーザー2名で被る上、ダンジョン攻略にはメイド系がほぼ必須(MP回復スキルを持っているのはメイドだけ)なので断念した。
ゲームの基本部分はストイックなダンジョンものである(私はダイナソアを思い出した)。敵キャラが野菜だったり女の子モンスターだったりするので一見そうは見えないが、はっきり言って生き残るのに必死だ。前にも書いたが、特に魔法使い系の敵がきつく、雑魚でも集団で出てくると平気で死人が出る。
また、ダンジョンの構造は目的地さえ事前に分かっていれば周囲の玄室を全部無視して直行できるWIZのようなタイプではなく、いったん遠回りして一方通行のゲートを開き、2回目からはショートカットが可能になるフロアが大部分を占める世界樹のようなタイプである。
以上、キャラクター作成を中心にFDCの紹介をしてみた。今度発売されるダンジョントラベラーズはFDCを元にしているが、ゲームシステムにも変更が加わっているらしく、ここに書かれていることがどこまで参考になるかはわからないので、その点は悪しからず。FDCを持っていない方にシステムからゲームの雰囲気をなんとなく感じ取ってもらえれば幸いである。