もう一人のピコピコ少年(6)・早過ぎたライバル

 さて(5)で「ゲームボーイは私の人生を変えたゲーム機だ」と書いた。しかし、当時稼動時間の一番長かったゲーム機はゲームボーイではない。
 私が一番長く遊んだゲーム機は、ゲームボーイのライバル機、PCエンジンGTだった。

 このゲーム機は、当時高校生だった私の目から見ても、いろいろな……いや多すぎる問題をはらんだゲーム機だった。
 まずはその価格。まだ携帯電話がここまで普及しておらず、カラー液晶の価格がこなれていなかったせいもあって、定価44,800円というトンデモ価格だった。これを超える価格のゲーム機には、実にその後PS3まで手を出したことがない。
 また、充電式バッテリや乾電池が普及していなかった時代に、単三電池6本で4時間程度という動作時間はあまりにもコストパフォーマンスが悪すぎた。
 加えてその本体の重さ(ゲームボーイより二周りは大きい)は、正直言ってまともに携帯させる気があるのか疑わしくなるほどだった。
 価格、バッテリ、重量。PSPやDSがこれだけ売れている今の時代でこそ課題はクリアされているけれど、当時の技術では携帯ゲーム機という形にするのはまだ早すぎた。プロセッサの性能もカラー液晶も、GTは時代を先取りしすぎたゲーム機だったのだ。

 ……しかし、GTを携帯ゲーム機ではなく省スペースゲーム機として考えると、価格以外の問題点は問題でなくなる(また、その後発売された兄弟機とも言える「PCエンジンLT」にバッテリがついていないことを考えると、NECHE自体がこれを携帯するための機械というよりも省スペースゲーム機として考えていた節もある)。
 何よりGTは、日本で流通したゲーム機では唯一の「据置機のゲームソフトがそのまま動作する携帯機」だったのだ!(海外まで含めればメガドライブソフトが動作する携帯機「ノーマッド」がある)。


 どうやら私の修学旅行は携帯ゲーム機との出会いの場であるらしく、今度は高校時代の修学旅行の帰りにふらりと寄った玩具屋で、破格の安さで売られていた中古のPCエンジンGTに出会って以来、私のゲームライフはGT一色になった。GBでウィザードリィやSAGAをプレイする時を除けば、ほぼGTがフル稼働していたといっても過言ではない。
 液晶が小さすぎて「邪聖剣ネクロマンサー」のパスワードが読み取れなかったことなど些細な問題だ。ドルアーガの塔ワルキューレの伝説メルヘンメイズ、出たなツインビーコナミナムコの黄金期のゲームを、私はすべてHuカードで遊んだ。GTは「据置機の劣化移植」ではなく、据置機のゲームそのものがフルスペックで遊べる、私にとってはほぼたった一つの環境だったからだ。



 なかでもあえてどれか一つを挙げるとすれば、デザイナーの遠藤氏自身が「ハードウェアスペックの制限でなかなか叶わなかった、自分が作りたかった本当の『ドルアーガの塔』を再現できたのがPCエンジン版である」と語ったというドルアーガの塔だろうか。この動画では最後から2番目に紹介されているが、元絵の再現度も高く、成長要素なども一番RPGに近いつくりになっている。
 何より「PCエンジン版のドルアーガにはステータス画面が存在する」といったら、驚かれるオールドファンの人も多いのではなかろうか。