ウィザードリィらしさとは

Wizardry Online


 ウィザードリィオンラインのプロデューサーってウィザードリィZEOの原案の人だったんだ……手を出さなくてよかった(笑)。


ウィザードリィZEO(1) (講談社コミックス)

ウィザードリィZEO(1) (講談社コミックス)


 私はウィザードリィフリークの中でも比較的保守的ではない方で、エルミナージュはもちろんのこと、真ウィザードリィTRPGリプレイのアークデーモンとの駄洒落合戦とか剣と魔法と学園モノまで許せてしまう方なんだけど、さすがにこれは一読して後悔するレベル(笑)。

魔術師のローブを身にまとい、身の丈を越える大剣を背負った少年・ゼオ。ある者は、彼を最高レベルの魔法戦士と称え、ある者は、ただのシロウト冒険者と罵る。だが、真の姿を誰も知らない‥‥。闇天使(あくま)と契約を交わし、禁忌の秘術を得た魔術師ということを。伝説のRPG『ウィザードリィ』の世界を漫画化!!


 事前にAmazonのこの煽り文句を知っていたら回避してたんだけど……この2〜3行の文章だけでウィザードリィ関連作品としては突っ込める場所が4つも5つもあるっておかしいよね(笑)。*1
 もちろん、ウィザードリィっぽくなくても面白ければ問題ないんだけど、私にとってはそうでもなかった(よくあるラノベっぽいという感想しか湧かなかった)。*2
 面白いか面白くないかについては、主観が混じるから人によって評価は変わるだろう。でもこの漫画が(煽り文だけではなく中身も)「全然ウィザードリィに見えない」のは客観的な評価だと思う。
 私は1巻しか読んでいないのだが、魔法の名前がウィズじゃないとかそういう表層的なレベルじゃなく*3、根本から何かが違ってる。そもそもダンジョンに潜るシーンがほとんどないという時点で「これのどこがウィズなんだ」という印象なんだけど、冒頭から「冒険者はギルドから依頼を受ける」(ウィズの世界にギルドなんてなんてあったか? ウィザードリィ冒険者を作成するのは「訓練場」なんだけど?)とか「モンスターの遺骸を酒場に持ち帰ってくる冒険者」(モンハンか?)とか、もうツッコミどころが満載。第1話「孤高の超戦士」というタイトルを見てウィザードリィのタイトルだと思う人がどれだけいるだろうか?
 もちろん、舞台となっているハザなんとか大陸なんて関連作品で聞いたこともない。逆に言えば、ウィズとの類似点は1巻通してたった一箇所、「レッサーデーモンの造形」だけである。

 つまり、この原案の人はウィズらしさを何か勘違いしてるんじゃないかな、と思うのだ。ZEOの原案者なら、ウィザードリィオンラインを今のような形でゲーム化したのもなんとなく頷ける(というかああいうゲームをウィズだと言い切るのも頷けるというべきか)。実際ウィズオンラインの制作にあたって「ウィズらしさは人によって違うからそこについて議論はしない」と言ったそうだ。


 もちろん全てが旧来のウィズと同じである必要はないのは納得できる。しかし、ならば次は「じゃあウィザードリィという色眼鏡を外し、単体のゲームとしてみた時面白いかどうか」となるのは当然だ。
 私には「通信ラグで動けない間に殺され課金アイテムを身包み剥がれるRPG」や「後ろから2秒で詠唱できる束縛呪文/その後攻撃呪文の2発で殺されるRPG」や「ファイターだけが図抜けて強く全人口の6割がファイターで他のジョブは要らない子」「パーティを組むと非効率なのでずっとファイターでソロ」なんていうオンラインゲームが面白いとはどうにも思えない。もちろんウィザードリィだとも思えない。

 逆に言えば、ウィザードリィZEO第1話の時点で、ウィザードリィオンラインの展開がどうなるかも予測可能だったのかもしれない。ちなみにこの原案の人が関わっている他のウィザードリィあの悪名高いDS版の「生命の楔」と「忘却の遺産」である……。

*1:例えば……ぱっと思いつくだけでも 1.ウィズの魔法使いは剣を使えない。 2.ウィズに魔法戦士というクラスはない(いるとすれば「サムライ」)。 3.ウィズに「闇天使」なるモンスターはいない。 4.「闇天使」なのに「悪魔」のルビが振られているのは何故か。ウィズの世界でフォールンエンジェル・堕天使とアークデーモン・悪魔は別種のモンスターである(作中では、「闇天使」というのは召喚魔法で召喚されるモンスターのこととされている。そりゃ召喚師が登場するシリーズ作品もあるけどさ……) 5.ウィザードリィの世界を漫画化とあるが具体的に何作目のどの世界なのか。

*2:なお、主人公は少年(ウィズは転職すると老化するシステム)でありながら戦士と魔術師と召喚師のハイブリッドジョブ。

*3:ウィザードリィの版剣は現在複雑な状況になっているらしく、関連商品でも呪文名が異なるゲームがある。