神が遺したもの


 今年のKOTYeは、去年までとは違った思いで見ることになった。
 前にもこのブログでちょっと触れたけれど、去年の12月、ゲームライターの剣乃ゆきひろこと菅野ひろゆき氏が亡くなった。彼が代表を務めていたアーベルは今や、KOTYeの常連と言ってもいい存在になっている。
 もちろん、アーベルのゲームがダメだからといって彼の残した作品や業績が価値を失うものではない。しかしそれは逆に、菅野氏の業績がすばらしいからといって新作が名作とは限らないということを証明してもいる。

 誤解を恐れずいうなら、それまで「エロしかない」かあるいは「普通のゲームにエロ成分を足してみた」ものがほとんどだったエロゲーというジャンルに「年齢制限ありでしかできない表現を生かした面白いゲーム」を持ち込んだ先駆けが彼の手がけたDESIREでありEVEだったと思う。当時は同じような流れが他にもあり、例えばLeafの雫などもそれに当たる。
 この流れの延長線上に虚淵氏や奈須氏がいると考えると、菅野氏がいなければ存在しなかった作品は数多いのではなかろうか。

 そういった意味で、雫を作ったメンバーが後のアクアプラスビジュアルアーツの中核メンバーとなっていったことを思うと、アーベルの名前がKOTYeの話題を賑わせることには幾許かの寂寥を覚える次第である。


 ……でもまぁ、湿っぽい話は抜きにして、エントリーされているゲームはどれもこれも軒並み酷いが(笑)。この動画は18禁要素はないが、BGMなどのチョイスも秀逸でKOTYeの概略を知るには最適の作品だ。