ネットをふらついていたら、こんな言霊を見つけた。流行ったのは5年くらい前のようだけれど、その時と今とでは状況も違うし、改めてここで私のリプレイベスト5選を選んでみたい。
本来こういうものは5番目から発表して引っ張るものかもしれないけど、今回はいきなり1番目から。
1.トーキョーNOVA・ザ・レヴォリューション「トータルエクリプス」
トーキョーNOVA The Revolution TOTALE ECLIPSE トータルエクリプス 鈴吹太郎/F.E.A.R
- 出版社/メーカー: ゲームフィールド
- メディア: おもちゃ&ホビー
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今までも何度か書いてきたので「またか」と思うかもしれないが、どうかお付き合いいただきたい(笑)。前にも述べたように、このリプレイは「実用性」と「面白さ」を両立させた、当時は稀有なリプレイだった。
トーキョーNOVA・Rが発売された当初、あまりに先鋭的すぎたために、私のような鈍い人間には「革命」の真意が今一つ掴めなかった。今までのTRPGとは「違う」ことはよくわかったのだが、それを実プレイに落とし込むと「何がどう変わる」のかがよく見えてこなかったのだ。
その「革命」を成果をセッションに反映させるとどうなるか、というのがはっきりとわかったのは、このリプレイが出たからだ。つまり「トータルエクリプス」は「手本」であり「教科書」でもあったのだ。
とはいえ、これを読んで「何、そんなにすごいリプレイならぜひ読んでみたい」といって期待を持たれるとちょっと困る。このリプレイはかなり古く入手困難だと思われるし、今の版とは互換性がない。そして何より、今のリプレイを読み慣れている人にとっては何がすごいのか恐らくお分かりいただけないと思う。
なぜなら「トータルエクリプス」で画期的だったセッションの運営テクニックやシナリオのハンドリングは、今のリプレイでは「あって当たり前」のものだからだ。
例えば登場していないPCに情報を回すことや、不要なシーンには「あえて登場しない」ことなど、「トータルエクリプス」までは一部の上級プレイヤーが勘でやっていたことを、あえてテクニックとして明文化し、NOVA・RがそれまでのTRPGとは違う作品であることを表明した作品であり、それ以後「当たり前」になる常識を最初に「それが当たり前なのだ」と示したのがこのリプレイである。
私にとって「トータルエクリプス」は、リプレイの、そしてTRPGの価値観そのものを激変させた、重要な転換点となった作品なのだ。
2.ブレイドオブアルカナ「ハイデルランド英雄譚/まことの騎士」
ブレイド・オブ・アルカナ The 3rd Edition リプレイ ハイデルランド英雄譚 (ファミ通文庫)
- 作者: 菊池たけし,稲葉義明/F.E.A.R,田口順子,みかきみかこ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/04/28
- メディア: 文庫
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ファンタジーRPGといえば戦士と盗賊と魔法使いと神官がパーティを組んで……という形ではない、ちょっと変わったファンタジーRPGのセッションを収録したのがこのリプレイだ。執筆者はトーキョーNOVAでも「ビューティフルデイ」や「ヴァニティエンジェル」などを執筆した稲葉さん。
何しろPCは「3人とも騎士(アダマス)」なのだから、バランスも何もあったものではないけれど、それでもちゃんと役割分担がされ、ストーリーが成り立っているという、ブレイドオブアルカナ特有のセッションだ。また逆に、この作品では殺戮者が「雇われた人間」で、自らが肥大した野望や歪んだ欲望を持つ敵ではないという、ブレカナとしては珍しい特徴も持っている。
3人はひとたびだけ肩を並べて戦い、またそれぞれの道へと帰っていく。美しいラストシーンの作品だ。
3.アリアンロッドリプレイ・ルージュシリーズ
ノエルと薔薇の小箱―アリアンロッド・リプレイ・ルージュ (富士見ドラゴンブック)
- 作者: 菊池たけし,F.E.A.R.,佐々木あかね
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2005/12
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こちらは逆に、スタンダードなファンタジーRPGとして、またTRPG業界の黎明期から数多のリプレイを生み出してきた菊池たけしさんの最高峰の一つに数えていい作品だと思う。特に、途中で登場人物の一人が斃れる場面は、そこに至るまでの伏線や展開を含めて圧巻だ。
また、個人的に昔の「砦」シリーズからずっと菊池さんのリプレイを見てきた身としては、海砦のあの惨憺たる状況から、ルージュシリーズの力丸さんに見せたフォローへの(失礼な言い方になるが)成長を見て、あの頃に感じたやるせない思いがようやく腑に落ちるというか、整理がついた気がした。そういう意味でも感慨深い作品だった。
4.D&Dがよくわかる本
D&Dがよくわかる本―ダンジョンズ&ドラゴンズ入門の書 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)
- 作者: 黒田幸弘
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 1987/07
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「トータルエクリプス」を挙げた以上、こちらも挙げないわけにはいかないだろう。そもそもこの本に出会うことがなければ、私はルールブックを読んでもD&Dがどんなゲームなのかさっぱりわからないままで、実際にTRPGを遊ぶことはできなかったかもしれない。
え? ロードス島戦記が最初じゃないのかって? 実はロードス島戦記リプレイは雑誌「コンプティーク」の連載記事で、単行本化されるのはずっと後、しかも雑誌の再録ではなく新録で、連載版とは中身も変わっている。
当時、私にはリプレイ記事一つのために雑誌を毎号買い続ける財力はなく(D&Dのルールブックが高かったのでなおさら)、最初に読んだリプレイは「D&Dがよくわかる本」のリプレイということになる。有名な「開幕ブレスでパーティ全滅」シーンのほかにも、お姫様がエリミネイターを振り回して魔女を真っ二つ(逃げたけど)にしたのがやたら印象に残っている。
5.新ソードワールドRPGリプレイNEXTシリーズ
新ソードワールドRPGリプレイ集NEXT(1) ロマール・ノワール (富士見ドラゴンブック)
- 作者: グループSNE,藤澤さなえ,かわく,清松みゆき
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2004/08/20
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5番目に挙げるリプレイをどれにしようかはかなり……いや、非常に迷ったのだが、単純な面白さというだけでなく、後への影響などを総合的に考えて、このシリーズを挙げておく。
正直言って、このシリーズの藤澤さんとその前のシリーズの秋田さんの尽力がなければ、2.0はなくソードワールドシリーズの展開は終結してしまっただろう。特にNEXTシリーズではGMが最初ベテランプレイヤーや姑みたいな監督役からいじめられ個性的なプレイを連発され、戸惑いながらもマスターとしての力量を磨き、意思疎通を図って最後にはプレイヤーと一緒に一つの物語を作り上げるところまで到達する。
これはある人からの受け売りになるが「一人の新人GMの成長物語」としてみると、NEXTは非常に面白いシリーズである。
5選とあったために、是非選びたかったが選外になってしまったシリーズがいくつもあって残念だ。しかも結果的には、一番新しいものが7年前という結果に。「アリアンロッドリプレイ・レジェンド」や「ロード・オブ・グローリー」、「神の贈り物」や「ダブルクロスリプレイ・ストライク」シリーズ等々……。これらの紹介は、また機会があればしたい。