13回目のキング・オブ・ファイターズ(長文注意)

ザ・キング・オブ・ファイターズ XIII - PS3

ザ・キング・オブ・ファイターズ XIII - PS3

 キング・オブ・ファイターズの13作目にして、アッシュ編3部作の最終章となるKOF13。はっきり言ってこの作品をプレイするまではまったく意味不明だったKOF2003、11の2作(前作の12にはストーリーがない)の物語に、ようやく納得がいった気がする。


(以下、KOF13のエンディングに纏わる重大なネタバレを含むため、これからKOF13のストーリーを楽しもうという人はここで引き返してください)












 以下、KOF13で判明した設定等を箇条書きで記す(公式設定資料集等全てをチェックしているわけではないので、あくまでも私個人の独自解釈を含むことを重ねてお断りしておく)。


・今回のKOFは、KOF94〜98まで続いたオロチ編ストーリーのセルフオマージュである。


・アッシュ編のバックストーリーではオロチが東洋の地球意思であるとされており、対応する西洋の地球意思が存在するらしいことが明らかにされる(名前は不明)。このことについては11でマガキが触れている(という割に、なぜかオロチ八傑衆が外人ばかりで「遥けし彼の地より出づる者」は和名のメンバーが多いのだが……)。


・ストーリーの中心であるアッシュ・クリムゾンはオロチ編でいう八神庵に相当する。KOF13の主人公チームのメインであるエリザベート・ブラントルシュが神楽ちづる、オロチ八傑衆が「遥けし彼の地より出づる者」にあたる(このこと自体は公式ページのアッシュのプレストーリーではっきり述べられている)。


・アッシュが京でなく庵なのは、敵である「遥けし彼の地より出づる者」を倒す使命を帯びていながら、同時にその血を引くものであるという立ち位置が、オロチを倒す使命を帯びながらオロチの血を宿す庵と同じだからだ、となっている。また、こちらは明言されていないが、ボスとして敵に乗っ取られた「血の螺旋に狂うアッシュ」が登場することも、「ツキノヨルオロチニクルフイオリ」を想起させる。思うに、ネスツ編の主人公K’が京のコピーだったためアッシュは庵のオマージュになったのではないだろうか。


・アッシュ編のストーリーが見えにくいのは、ひとえに中心となるアッシュが自分の目的も行動原理も明らかにしないキャラだったからである。八神庵でいえばどのような状況に置かれようとも目的は京を倒すこと、行動原理も同様であるため、プレイヤーとしては庵が何を考えているかは非常にわかりやすい。ネスツ編のK’も無口なキャラではあるが、何を考えているかわからないキャラではない(基本的には自分が何者かを知るのが目的)。アッシュは第1作である2003で「ちづるから八咫の鏡の力を奪う」という、オロチ編をプレイした者にとっては驚愕の行動に出るが、なぜそうしたか理由を明かさない。11でも彼は主人公となっており、エンディングで庵の力を奪うという暴挙に出るが、これまた理由も目的も言わない。


アッシュは「魅力的な悪役」としてデザインされたそうだが、それには失敗していると言わざるを得ない。同じSNEの格闘ゲームの悪役だけを挙げても、ギース、ルガール、MrBIG、クラウザーなど、人気の高い悪役は皆目的がはっきりしている。何を考えているかわからないキャラには感情移入しようがない。これがボスキャラならまだ仕方がないともいえるが……。


・反対に、結果だけを見ると、三種の神器の血を引きながら終始自分のことしか考えておらず、オロチ編全体を通してオロチ封印の瞬間くらいしかまともに手を組むことがなかった京や庵、ネスツ編でネスツを壊滅させようという使命感など微塵も持っていなかったK’よりも、自分の全存在を賭け、あらゆる手段を尽くして己に課せられた使命を全うした、しかもその理由が「この世界が好きだったから」だと最後の最後に吐露したアッシュは、悪役ではなく誰よりも「主人公」だった。私の場合はそのラストシーンを見て初めてその魅力に気づいたといっても過言ではない。


・ちづるの位置にいるエリザベートは、オロチ編の三種の神器とは対照的に幼少時からアッシュと縁のあるキャラとして描かれている。同じくオロチ編において徹頭徹尾オロチ封印のこと以外考えず、京や庵に個人的な感情を抱いているようには見えなかったちづると違い、エリザベートは使命のことを心に留めつつも、最終目的は「アッシュを連れて帰る」ことであって「遥けし彼の地より出づる者」を倒すことを第一目的としていない。その意味で、アッシュの消滅に涙した彼女はちづるよりもずっと人間的な「ヒロイン」だし、KOF13の主人公チームのリーダーとして一番感情移入しやすいキャラクターである。一つだけ残念なのは、恐らくKOF11でも13同様、彼女を中心にエピソードを展開した方がずっとわかりやすい物語になっただろうということだ。


・勝手な想像だが、アッシュが元々底意地の悪いひねくれ者なのはほぼ間違いない。ちづるを倒して鏡の力を奪った時も、庵を倒して勾玉の力を奪った時も、なぜそうするのか京や関係者に一切説明しなかったのは、他人を巻き込みたくなかったせいというより単に性格が悪かったせいとしか思えないからだ。しかし、11のエンディングでエリザベートに「使命を忘れたのか」と問い詰められた時にしらばっくれた理由は──そして、13でチームを組まずに一人でKOFに参加した理由は──エリザベートを悲しませたくなかったから、なのではないだろうか。この点についてもやはり、ちづるのことなどろくに考慮していない京や庵に比べてアッシュの方がずっと主人公らしく振舞っている。ただ、それ以外の周囲に与える影響のことはまったくと言っていいほど考慮していないというだけで。


・目的を達成することで「タイムパラドックスが起き、自分自身が消滅する」ことを知りながら目的のために戦うキャラ、というとFFXのティーダサイキックフォース2020のパティ(あるいはマイト)が思い浮かぶ。しかしアッシュが異彩を放つのは先述の通り彼の性格が個性的だからだ。つまり彼は「魅力的な悪役」というより「超・個性的な主人公」だ。最期のシーンにおいても彼には悲壮感がない。悲壮なのはむしろ彼を止めることができなかったエリザベートの方である。


・簡単に要約してしまうと、アッシュが三種の神器の力を奪ったのは「遥けし彼の地より出づる者」を誘き出すためだった、ということになる。実際13の黒幕であるサイキはアッシュの前に姿を現したので目論見は成功しているのだが……。11においてマガキもシオンも特に庵や京を狙っている様子はないことを考えると(13の家庭用OPでシュルームたちが京を襲うカットが1カット入るのみ)、アッシュが三種の神器の力を奪う必要は本当にあったのか、という気はする。このあたりの敵の行動の整合性が取れていないため、結果的にプレイヤーはアッシュの目的を読み取り辛くなっている。言い方を変えると、意外性を追求しすぎてストーリーに矛盾が生じているとも言える。ちなみに、サイキ自身も三種の神器に特に興味を示している様子はないが、KOF13の「エネルギーを集める場としてKOFを利用する」というのは97の時にオロチチームが採った手段と全く同じである。


・その「遥けし彼の地より出づる者」。こちらはアッシュの扱いとは逆に非常に残念な感じがする。何より、名前や姿、設定がついているキャラの半分も敵として登場する前に話が終わってしまった。これはオロチ編の時に四天王のうち三人が一気に出てきて興醒めした、と言っていた人たちがいたのでそれを考慮したとも考えられるが、牡丹やシュルームなどいかにもそれっぽくデモに登場していながら出番なしではい終了、というのはかなりもったいない(KOF13のストーリーモードを全て終わらせると彼らの「生き残り」のエピソードが語られるので、もしかしたら再登場があるのかもしれないが)。ルガールの娘とも結局一度も戦うことなく終わってしまった。


・「遥けし彼の地より出づる者」たちの目的は「オロチを復活させてその力を奪い、もう一つの地球意思にその力を移植することで過去にタイムトラベルし、歴史を好きなように作り変える」ことである。この最終目的については最新作で初めて明らかにされた(前作では「もう一つの地球意思を復活させようとしている」くらいしかわからなかったが、ムカイが時間というキーワードは口にしていた)。タイムパラドックス物はついついやりたくなるものの一歩間違えると話がややこしくなりがちな諸刃の剣(代表的な例はブレイブルー)であるが、KOF13に関しては非常にシンプルな図式でそこはわかりやすい。繰り返すがアッシュ編のストーリーがわかりにくいとしたら話が複雑だからではなく、アッシュやラスボスのサイキが素直に喋らないせいだ。KOF97の中間デモで七枷社が自分たちの目的をベラベラベラベラ喋り続けるシーンがあるが、細かい台詞を繋げる形でストーリーを作れるRPGとは違い、格闘ゲームではあれくらい割り切らないとプレイヤーが完全に物語の背後関係を理解するのは無理だろう。


・また、これはストーリーとは直接関係はしないが、KOF2003も11も、チーム編成がメチャメチャにいじられている。龍虎チームがリョウ、ユリ、キングでタクマだけでなくロバートまでリストラされたり、餓狼チームがテリー、キム、ダックキングになるなど、これまでほぼ皆勤だったキャラが何人も消え、その代わりに必然性の低いキャラが復活していたりストーリーに関係のないキャラが追加されたりしている(アンチ極限流チームなど)。これもファンにとっては取っ付き辛くなった原因の一つではないだろうか。逆に、13のチーム編成はわかりやすい。


・と、ここまで長々と書いてきたのは、今回13の主人公チームのエンディングが非常によくできていたからだ。正直言って、格闘ゲームのエンディングでここまでストーリー性が強く感動したのは月華の剣士サイキックフォース、あるいはソウルキャリバー以来だろうか。チームメイトの二人の態度も離れすぎず近づきすぎず、BGMも実に良い。


(この動画では主人公チームのエンディングにアッシュの個人エンディングを繋げているが、この二つは連続してみたほうが絶対に良い)


 時は春、/日は朝、


 朝は七時、片岡に露みちて、


 揚雲雀なのりいで、/蝸牛枝に這ひ、


 神、そらに知ろしめす。/なべて世は事も無し。