コモンの話、余話

トーキョーN◎VA THE AXLERATION サプリメント オルタナティヴサイト

トーキョーN◎VA THE AXLERATION サプリメント オルタナティヴサイト


 昨日までのエントリとは違う方向から一つ。

 今回の「コモン」周りのルールで、何気に今まで一押しだった技能が、さらっとクローズアップされていたのには、思わず笑ってしまった。私は、その技能は歴代のトーキョーNOVAで最強の能力だと思っている。
 それは、カタナの技能でもなければクロマクやハイランダーの技能でもない。カゲの技能「無面目」である。

 と、ここまで書けば私のセッション経験者は「ああ」という顔になるかもしれない。

「誰でもない」を装う

 無面目の能力はシンプルだ。「習得者はエキストラを装うことができる」これだけである。これが何故そんなに強力なのか。


 トーキョーNOVAに限らず、たいていのゲームの能力とは、データを上げ下げする能力である。ダメージを1上げる、命中率を1下げる。回避率を5%上げる、などなど。表現や扱う数値などが変わっても、最終的にはそこに帰結する能力がほとんどだろう。
 それに対して「無面目」は数値を上げ下げするような効果を持たない。見破ろうとする相手とは判定になるが、効果そのものには数値がない。もし無面目が「レベル100でもレベル1を装う能力」とかであれば、それは数値的な意味を持つ能力だが、そうではない。「無面目」の効果は「ゲームターム(用語)を書き換える」という効果なのだ。
 キャスト及びゲストは、エキストラとは「ゲーム上の定義が違う存在」だ。その定義を乗り越えるのが「無面目」である。TRPGに様々な能力は数あれど「定義された用語を上書きする」などという能力は、寡聞にして聞かない。

 基本ルールブックには、エキストラは「能力値や技能が設定されておらず、どう扱うかはルーラー(RL)が決める存在だ」と書かれている。言い換えれば、そのキャラクターは当該セッションではスポットライトを浴びない、端役だ、と宣言されているのと同じである。カット進行にしろ何にしろ、セッションで重要な存在であればルールによって処理される。そうでないということは重要でない、注目するに値しない存在だ、ということだ。
 もちろんルールにあるとおり、知覚判定で見破ることはできる。しかし、普通はそもそもエキストラに知覚判定をしようと考えない。データも与えられていない存在なのに、何故判定を挑む必要がある?
 だから、エキストラに対して知覚を求められた時点で、知っているプレイヤーは気がつく。「こいつはエキストラではない」と。そもそも本当にエキストラであれば、行動を宣言した段階で、成功か失敗かはルーラー判断で決められるはずなのだ。

 これは、単に「隠れる」より遥かに強力な効果だ。隠れる必要すらない。相手にとっては「目に入っているのに注目できない存在」に変わるからだ。NOVAに慣れていれば慣れているほど「エキストラである」と言われた瞬間、チェック対象から外れてしまう。他に注目すべきことは沢山ある。わざわざ「データを持たせる価値すらない」存在に気を払う余裕はない──そんなベテランの陥穽に、無面目は滑り込む。 

 といっても、私もこの技能の凄さに最初から気づいていたわけではない。きっかけはリプレイ「カウンターグロウ」のスローターウイルスである。一見無力な子供に見え──いや、それどころかRL自身が「エキストラです」と断言した人物が、実は無面目を使ったカゲで、バリバリ戦闘技能を使ってくるという展開は衝撃的だった。
 これにカルチャーショックを受けた私は、実際自分のシナリオでも、シナリオヒロインの付き人のエキストラ──に見せかけた浄化派のテロリストを登場させた。プレイヤーの「引っかかったー」という顔が見れて、実に楽しいシナリオだった。


「一般人」の恐怖

 そんな個人的な経験を経つつ、今回のオルタナティブサイトの「コモン」の説明を見て吹いた。「コモン」は「ペルソナ:エキストラ」を宣言できる、とあるのだ。しかも「無面目」と異なり、技能を修得する必要もなく、宣言するだけでいい。
 これは面白い能力だ……と思いつつ、ふと気づいて、該当部分の前後を、目を皿のようにして見たが、「知覚判定で見破ることができる」の一文がどこにも見当たらない。いや、考えてみれば当たり前かもしれない。「コモン」はエキストラだったのだから。

 だが、これはつまり「コモン」が「自分はエキストラだ」と言ったら、見破ることが極めて困難だということを意味する。ふと浮かんだのは、こんなシーンだ(以下、引用句を使うが、引用ではなく私の創作である)。

(ストリートで探偵(フェイト)と殺し屋(カタナ)が敵ゲストと激しい戦闘を繰り広げた直後のシーン)


RL:戦闘が終わって気づいてみると、物影で腰を抜かしてガタガタ震えている女子高生がいます。
フェイト:おっと、これはまずい。見られたかな。
カタナ:もしかして敵の仲間か?
RL:彼女はエキストラです。
フェイト:(カタナのプレイヤーと顔を見合わせる)「スタイル感知」してみよう。*1
RL:(出されたカードを見て鮫のように笑う)彼女のスタイルは「コモン◎、カタナ、カゲ●」ですね。制服の下はサイバーアームの山です。
フェイト&カタナ:おいおいおいおい!

(カゲとの戦闘をなんとか切り抜け、行きつけのバーに向かったフェイトのシーン)


RL:バーテンが「散々だったようだね」といって、君のためにブランデーを用意してくれます。
フェイト:まったくだ。カタナがいなければどうなってたことか。
RL:ウェイトレスも苦笑しながら、君の前にブランデーの入ったグラスを置きます。
フェイト:……。この二人って、ゲスト?
RL:もちろんエキストラです。
フェイト:……一応「スタイル感知」を。
RL:(露骨に残念そうな顔をしつつ)バーテンは「コモン◎、カブト、カブトワリ●」、ウェイトレスは「コモン◎、ヒルコ、マネキン●」です。二人は舌打ちをしながら銃を……。
フェイト:(懐からR6uを抜きつつ)どこが「エキストラ」だ!

*1:なお、オルタナティブサイトには「スタイル感知」でコモンのペルソナを見破れるとは書かれていませんが、「スタイル感知」の説明には明確に「ペルソナが偽装されていればそれを見破る」とあるので、見破れるものと判断しました。もちろんこれはフェイトのスタイル技能なので、フェイト以外使用できません。