ラストで草


 最後が……BGMだけしか流れてないのに、脳内で勝手にワザップジョルノの音声が再生されるから困る。ちゃんと手に3DS持ってるし……(笑)。

パラドクスとボンバーガー

 さて、昨日のエントリの続きの話である。

 「星と翼のパラドクス」や「ボンバーガール」のゲームセンターでのプレイ動画配信を見ていて、私はある悲しい事実に気付いた。
 それは「星と翼のパラドクス」がこういうタイプの動画配信に向いていないということだ。

 順を追って説明しよう。
 ゲームセンターのプレイ動画配信で一番多いのは、恐らく対戦格闘ゲームの配信である。対戦格闘ゲームは「個」と「個」の戦いだ。また、お互いに平面で相対するという、必ず同じ状況からスタートする。私がゲーセンミカドの配信を見ることが多いのは、実況者の話術が面白く、かつ不快でないからだが、果たしてそもそも実況がどこまで必要なのか、という疑問はなくもない。
 これは私が格闘ゲームのことをある程度知っているからというのもあるかもしれないが、例えば真サムライスピリッツであれば「幻十郎がしゃがみ中斬りを出している」ことは、実況がなくても画面を見れば分かることだ(だからミカドの配信などは、むしろゲームをネタにした掛け合いそのものの方が売りに見える)。ちなみに、解説はもちろん必要だ。出している技は分かっても、「何故この場面で幻十郎がしゃがみ中斬りを出す必要があったのか」は、説明されなければ分からない。



 これに対して、パラドクスやボンバーガールのような、チームで戦い、勝利条件が相手を倒すことでないMOBA的なゲームの場合は、解説に加えて実況そのものが必要になる。何故なら、画面に全ての情報が表示されておらず、“画面外で”何かが起きて状況が変化するからだ。極端な話、配信対象となっているプレイヤーが体力満タンで、目の前で戦っている敵を完封したとしても、チームが負けることは十分にあり得る。この場合、画面に表示されている情報の他に、プレイ経験や知識から、フィールド全体で何が起きているかをある程度把握し、説明し、それに対して解説を加える必要が出てくる(だから実況者と解説者が両方いるのが望ましい)。

 こういった視点でパラドクスとボンバーガール、両方の配信を見ていると、あることに気付く。パラドクスの配信動画には「個」と「個」、つまりエアリアル同士の戦闘に関する実況や解説が少ないのだ。ちょうど格闘ゲームとは逆である。これは実況者や解説者の能力や視点が原因ではない。ゲームの仕組み上、パラドクスでは個々のエアリアル同士の戦闘を解説するのが極めて難しいのだ。
 まず、ボンバーガールが4対4なのに対して、パラドクスは8対8である。目の前にいるエアリアルは、相手チームの「8分の1」だ。そして、相手の装備が確認できるのは「自分が倒された瞬間」しかない。



 しかも、機体のカスタマイズが自由にできるために、相手の機体カスタマイズ、装備カスタマイズの組み合わせは天文学的な数字になる。格闘ゲームでいえば「目の前にいるのはガイルの姿をしているが波動拳スクリューパイルドライバーを使うバルログで、しかもスクリューパイルドライバーの威力が1.2倍」とかそんな感じである。
 さらに、パラドクスでは戦闘中帰還すればいつでもロール、つまり役割を変えられる。そして役割ごとに装備は別に設定できる。
 加えて、ゲームスピードが高速で、一人の相手と交錯する時間は限られる。パラドクスの実況で「相手の武器はマーノムガンですね。サイトヘッド頭を使っていますから、ロックオン距離は長いですが範囲が狭いので、接近しつつ範囲外に逃げるのがいいのではないでしょうか」なんて解説している間に、敵機は倒されているか逃げているかこちらを倒しているだろう。

 では、ボンバーガールはどうか。ボンバーガールは4対4、しかも役割はキャラごとに決まっており、ゲーム中に変更はできない。そして、スキルもキャラごとに決まっている。自分がシューターのエメラを選び、相手チームのボマーとアタッカーがクロとウルシなら、ギガンティックボムに忍法花火隠れ等々……対処しなければならないスキルもあらかじめ分かる。わかるからこそ解説もできる。ゲームスピードは決して遅くはないが、相手チームの編成が途中で変わることはないので、解説する側としては問題は少ない。
 ゲームの自由度とわかりやすさ、実況・解説のしやすさはある程度反比例する要素なのだ。選択肢が少ないゲームの方が動画は分かりやすいが、その代わり特定の局面における「正解」が限定されてくる。例えばブロッカーのモモコでリキャストごとにアイドルボイスを使うことは、いわば「定番」である(もちろんラッシュ管理中はこの限りではないけれど)。
 分かりやすさを取るか、自由度を取るかはゲームデザインの問題であって、絶対の正解はない。それに、そもそもパラドクスの稼動型筐体を使った没入感や、あのゲーム内空間を自由に飛び回る疾走感の面白さが、配信動画でどこまで伝わるかというのは難しい問題だ。逆にいえば、その限られた状況で面白さを広めようと頑張っている人たちの努力には頭が下がる。例えば、前述の「パラドクスには『個』と『個』の戦闘における解説が少ない」という点などは、配信を行っているゲーセンでも課題と感じているのだろう。「プレイヤー1対1、残りはCPU」という組み合わせで、二人のプレイヤーに一騎打ちをさせるという動画を作ったりして工夫している(埋め込み禁止なのでここには貼らない)。

 しかし実際問題として、ボンバーガールは、私がよく見ている西日暮里ゲームスポットバーサスの他に、レジャーランド藤江本店や遊スペースマジカル、名古屋レジャーランド内田橋、ファンタジスタ岡山など、あちこちで配信が行われているのに比べ、星と翼のパラドクスはセントラル八王子とあと何件かしか見かけない(なお「店長が遊ぶ~」は、プレイヤー本人が解説しているので「ゲーセンの店長」ではあるがプレイヤー単位の配信だと私は思っている)。これは、ゲームタイトルが配信に向いているか否かという要素を抜きにしては考えられないと思う。
 そして、動画配信とどこまで因果関係があるかは分からないにせよ、ボンバーガールが(予定されていたPC版がキャンセルされるくらいには)アーケード版が好調だという話を聞くにつけ、パラドクス勢としては羨望の念を禁じえないのである。



 なお、こちらが西日暮里ゲームスポットバーサスのボンバーガール配信だ。私がここの配信をよく見る理由は、他のゲーセンも少なからずそうだと思うが、ここの実況者と解説者が特に「プレイヤーに配慮して」実況と解説をしているのが見ていてよくわかるからだ。
 この手の動画配信で、見ていて一番キツいのは「プレイヤーにダメ出しをする」実況と解説だ。「この行動はダメだった、ああしたほうがいい」「こうした方がいい」と言われると、見ている側としてはテンションが下がる。配信の対象になっているのはプロではなく、普通のプレイヤーなのだ。
 その点、西日暮里バーサスの実況者、解説者の人は、ダメ出しをほとんどしない。対象のプレイヤーが属するチームが負けても「相手のブロッカーが上手かったですね~」という言い方をする。これが非常に見やすい。見ていて「あー、自分もボンバーガールやりたいなー」という気にさせてくれる。