ミクロな視点から


 前に、星と翼のパラドクスの「マップ全体を見た動き」についての講座の動画を紹介したけれど、こちらはどちらかといえばミクロな視点からの動画。サービス開始間もなく作られたものだが、今でも参考になる。

闇か……そうか……


 ユーチューバーにもヒカルにもまったく興味はないんだけど、この店長が語るゲームセンターの実情の話は面白くて、ついつい見てしまった。私はゲームセンターの経営の話は何も知らないけれど、遥か昔から出入りしていた身からすると、確かに過去の経緯を含めて現在ゲームセンターが消えていく背後の事情はこういったものなんだろうと思う。艦これアーケードを褒めているのにはちょっと安心したけれど、逆にこれだけ発信力のある人間に「星と翼のバラドクスはスクエニの最強の闇」とまで言われてしまうと、怒りというよりがっくりくる。
 確かにあの筐体は、素人目に見てもクソ高そうだ。ただ、動画内で店長が語っている価格と、公表されている価格には大きな開きがある。動画内では2000万円と言われているが、公表されている価格は高くても300万円ほどなのだ(プランによって異なる)。もちろんそれでも安いとはいわないが、恐らく2000万円というのは複数台を同時購入した時の価格だろう。言われてみれば、1台だけで稼動しているゲーセンは余り見ない。もし、1クレジットあたり定額を支払うというプランの形式で筐体の店側のイニシャルコストを抑えているなら、それはそれで評価はできると思う。他にこういう価格設定の筐体があるのかどうかは、寡聞にして知らないが。


 いい機会なので、上の動画に絡め、改めて1プレイヤーである私自身の星と翼のパラドクスへの想いを書いておこう。
 詳しい人には今更の話だが、かつてゲームセンターは、家庭ではとても遊べない高クオリティのゲームを遊べる場所だった。家庭用ゲームへの移植は「性能の劣るハードウェアでどれだけ忠実な再現がされているか」が評価点だった。ゲームセンターにある筐体の方が高性能だったからだ。
 やがて対戦格闘ゲームの波がやってきて、別の視点からも評価がされるようになった。ゲームセンターは、対戦相手を見つける場所になったのだ。目の前にいる相手としか対戦する手段がなかったから、つまり通信インフラが整っていなかったからだ。この頃がゲームセンターの最盛期だったと言っていい。
 ところが、上の動画で「アーケード筐体を開けたらPS4が入っていた」などというエピソードが語られるように、家庭用ゲーム機の性能が上がり、ゲームセンターのハードウェアと差がなくなってきた。同時に通信インフラも整備され、自宅のネット対戦でもゲームセンターと同じように対戦相手を見つけることができるようになった。「ゲームセンターでしか出来ないこと」は、少なくとも昔に比べれば遥かに減っている。

 そんな時代に、ゲームセンターが生き残る道とは何か。家庭用ゲーム機とは違うゲーム体験を用意できなければ、ゲームセンターは衰退するしかない。家庭用ゲーム機とは違うゲーム体験には、大きく分けて二つがある。インプットとアウトプットだ。アウトプットとはすなわち画面や音響だが、液晶ディスプレイも年々安価になり、音響設備も充実する昨今、家庭にも大画面や迫力の音響は珍しくない。
 そうなると、あとはインプット、つまり操作系で差別化を図るしかない。三国志のようなカードを使うタイプのゲームも、大きな括りでは「自宅には置けないような筐体で操作する」、操作系の差別化を図ったゲームであるといえる。艦これアーケードも、ワンダーランドウォーズも、ソウルリバースも、ボンバーガールも、全て操作系は汎用のそれと異なる。
 私は「星と翼のパラドクス」に、このベクトルの先にあるものを見た。パラドクスの筐体が家庭用で再現されることはほぼありえないと言っていいだろう。ゲームセンターでしかできないゲーム体験を与えてくれるゲーム。そこにこそ、ゲームセンターの活路があるのではないかと私は思うからだ。だからこそ、私はパラドクスをプレイしているのだ。*1

 ただ、だからといって中小のゲームセンターにこの筐体を買えというのが無茶であるというのは分かる。実際、星と翼のパラドクスはかなり大きなゲームセンターにしか置かれていない。あの筐体は傍目にも汎用性が低く、星と翼のパラドクス2みたいなゲームが出ない限り、他のゲームに流用できるのかはかなり疑問だ。そうなると、高額の筐体の代金を、どれだけ稼動させれば元が取れるのか、という話になるだろう。筐体の数を絞ったほうが、むしろ単価は上がるのかもしれない。実際、私は最近はもうパラドクスがあるゲーセンにしか行っていない。
 
 では、現状を全てよしとするかというと、そうでもない。
 まず、星翼の運営というよりスクエニの上層部には、もうちょっと本気でパラドクスを売ってもらいたい。現状では余りにも知名度が低い。この筐体を開発するのも決して安くはなかったはずだ。元を取らなければならないのに、折角キャラデザに貞本さんを使っているにも関わらず、アニメどころかコミカライズもない。コラボイベントも聞いたことがない。アプリと連動はしているが、それだけだ。サービススタートから半年以上経っていまだに関連商品がサントラ一つしかなく、魅力的なキャラクターが宝の持ち腐れになっている。
 何をおいても名前を知られるのが第一歩だ。ゲーセンに足を運んでもらわなければ入り口にも立てない。ゲーム内容はその次の話だ。私も偶然がなければこのゲームを始めなかっただろう。スクエニ的にはメインストリームは家庭用ゲーム機なのかもしれないが、ガンストとこれと、大型筐体を幾つも開発していながらメディアミックスの援護射撃がまるでないのは寂しすぎる。

 何度も書いているが、私は星と翼のパラドクスを応援している。それは単にこのゲームが好きだからというだけでなく、ゲームセンターという場になくなってほしくないからだ。そういう意味では、経営者の視点からこのゲームが厳しいと言われるのは残念だが、それでもなんとかメーカーとゲームセンターの間の齟齬を埋めて、このゲームがゲームセンターに利益をもたらす存在になってほしいと願っている。1プレイヤーとしては遊び続けることしかできないにせよ、だ。

このマップは嫌だー


 と、上であんな話をしてからゲーム自体の話をするのも何なのだが……。

 今展開しているマップである「ゲンタン膚下空洞 氷原区域」は、私はあまり好きではない。理由は単純で、今まで何度かこのマップで戦ったが、戦略の幅が広がらないマップにしか見えないからである。

 レーダーマップで見れば分かるとおり、このマップは他のマップに比べて縦に細長い。5つのポートが左右に割り振られているように見えるが、実はこれらのポートは、1直線に並んでいるのと大して変わらない。「A-味方コアーB-C-D-敵コアーE」という並びだ。
 一見、多少は左右に幅があるように見えるが、実はこの左右幅の大部分が、ブランキアルのような特殊武器でもない、全ロールの多くの武器の射程内に収まってしまう。ということは、左右をすり抜けることが困難だ、ということになる。加えていえば、このマップは上下も壁に囲まれ、移動に制約のあるマップである。星翼には「フルドライブ」という高速移動手段があるものの、移動中の相手を狙うことは不可能ではない。ましてフルドライブ性能に劣るロールやアセンを使っていたら、隣のポートではなく「一つ先、二つ先」のポートに向かう途中でゲージが切れることもままある。そこを容易に狙えてしまうのだ。
 さらに、一つだけ外れた位置にあるポートには、Sマグとタワーが出現する。そして、コアに近い二つのポートには、それぞれタワーがあり、途中からエア・グランデも出現する(その場を動かない)。これらのCPUユニットも、通過しようとするエアリアルを容赦なく攻撃してくる。
 この「自軍側を守るのは容易いが、敵軍側を取るのは極端に難しい」というマップ構成上、何が起こるかというと「中央のCポートを取った側が3ポート奪取してコアを攻撃する」となる。ポートは5つあるのに、実質争奪しているのは1つだけなのだ。他を取るのが大変なので、Cポートに可能な限りの戦力を注ぎ込んだ方がいいことになる。もちろん、自軍側のポートを奪おうとする敵が現れたら対処する必要は出てくるが、追い払うのはそれほど困難ではない。


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 これが一番分かりやすいだろう。敵味方それぞれ、相手側のポートにエアリアルが一機もいない。本来、敵コアを攻撃した後は敵側のポートを奪取する方が近いため有利なはずだが、その有利さを打ち消すほどマップ配置、CPUユニット配置が自軍側有利なので、コアを攻撃したエアリアルもそのままCポートの攻防に加わるケースが多い。
 では、このマップで戦術的に有効な行動は何か。


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 Cポートのど真ん中でジャメルである。複数回の戦闘で、別々のプレイヤーがサポートを選んで同じ行動を取ってきたので、それなりに定番の行動なのだろう。
 正直、最初にこの行動を取られた時「その手があったか」と頭を抱えてしまった。他マップに比べてCポートの重要性が非常に高いため、そのど真ん中でジャミングフィールドを展開されると非常に厄介だ。サポートが自在に使えるスキルがあれば、これ以上有効な行動はないだろう。何しろ「ジャメルが嫌だから他のポートの争奪戦へ」という選択肢が取れない。

 言い方を変えると、サポートやジャメルの有無の差はあるにせよ、プレイヤーが変わっても大抵似たような展開になってしまうということになる。なお、これは上とは別の日の戦闘である。


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 やはり似たような展開になっている。もちろん、これがNOVA級以上の上級者同士のバトルなら、また違う感想があるのかもしれないが、これが私が「戦略の幅が広がらない」といった意味であり、少なくとも私は余り好きになれないマップだと言った理由である。

*1:ではなぜ戦場の絆をプレイしないのかというと、戦場の絆には「プレイ中の画面を他人が見ることができない」という、私にとっては致命的な欠陥があるからである。