ペルソナ5視聴三昧


 ここで立て続けに、大手事務所所属のVtuberたちがペルソナ5の配信を始めたので何故かと思ったら、どうやらアトラスの配信ガイドラインに変更があり、配信禁止区間が廃止になったらしい。やっぱりあの禁止区間があったのが、ペルソナ5の配信が少なく、みんなペルソナ4をやっていた理由だったようだ(実はENの人たちは前からやっていたが、さすがに実況オール自動字幕は厳しかった)。



 というわけで、早速何人かのペルソナ5の配信を見たが、前にペルソナ4の生田目のエピソードの時にも書いたように、自分が没入してゲームをやっている時と、人が遊んでいるところを見てる時では、やはり視点が違う。さらにそのゲームに対して、人が反応しているのを見ることによっても、また色々な気づきがある。

 特に今回、先行して遊んでいた先斗寧と大空スバルの2人が期せずして──というよりプレイ時間的に否応なく──最初のカモシダパレスの、一番ショッキングなシーンの手前で第1回の配信を終えており、第2回配信の開始早々に例のシーンが挟まるということになる。
 先斗寧はすでに第2回の配信を終えているが、第1回でそこまで終えた博衣こよりが比較的穏当な反応なのに比べると、配信の途中で数分にわたって断続的に絶句し、アバターを一旦消した後、ついついポロっと「もうやりたくなくなっちゃった、うわぁ……しんどい、マジで」と思わず口走っている。自分でプレイしている時はもっと引いた視点で見ていたので、なかなか新鮮な反応だった。



 ただ何回見ても、誰の配信を見ても、自分で初めて遊んだ時の、序盤のあの重苦しい雰囲気を思い出せるし、その最高潮があのシーンであり、あそこからはひたすら上がっていくっていう、そういう意味でも印象的なシーンだと思う。


 で、今日書きたいことは「あのシーンは本当に必要なシーンだったか」ということだ。今のご時世であれを描けるかは別として、あのシーンは物語全体にとって必須かつ非常に重要なシーンで、カモシダパレスだけではなく、その後のストーリーを決める重大な伏線になっているシーンだ。


(以下、配信初見者向けに、一応ネタバレ回避で折り畳む)













 ここで配信の話に戻ると、直後のシーンで寧とこよりがほぼ同じ反応をしている。こよりは「だから昨日のうちにパレスに行っておけばよかったんだ」と言っており、寧は「起きてからじゃ遅いんだよ、全て」と言っている。これは非常に素直で、なおかつ重要なプレイヤーの反応だと思う。
 この後マダラメパレス、カネシロパレス、1つ飛ばしてオクムラパレスと続き、*1それぞれのパレスをクリアすることによって救われる登場人物がいる。それが祐介であり、真であり、春なわけだが、彼らに対応するカモシダパレスの登場人物というのは、クリアすることで退学を免れる主人公や竜司ではない。志保なのだ。
 つまりカモシダパレスは、一度失敗し、犠牲者を救うことができなかったパレスだ。それが第二のパレス以降の主人公たちの行動──その展開が一部のプレイヤーから批判を受けた「何故主人公たちがあれほど前のめりに行動をしたのか」「自分たちの改心というものに疑問を抱かず行動をしたのか」ということへの伏線になっている。
 第一のパレスで手遅れになり、犠牲者を救うことができなかったからこそ、第二のパレスからは躊躇している暇がなくなった。躊躇することで犠牲者を出した経験があるからこそ、犠牲者が出る前に助けようと前のめりに行動するしかなくなる。そしてプロファイリングを得意とする明智は、こういった主人公たちの行動パターンを当然分析していただろう。
 その結果仕掛けた罠がニイジマパレス、と繋がっていく。そんなわけで、このシーンは非常に重要、かつ不可避な伏線だった。恐らく、このシーンなしで本作のストーリーを成り立たせようとすると、ものすごく中途半端な出来になっただろう。もちろんこの描き方である必然性がどこまであったかという問題はあるが、「第一のパレスにおいて犠牲者を助けることができなかった」「手遅れで間に合わなかった」というのは必須の展開だったと思われる。
 最初のパレスの展開が、その後のストーリーの方向性を決定づけた。そういった意味でも、カモシダパレスが最も印象に残っているというプレイヤーが多いのは、決してネガティブな意味ではなく、メタな意味では掴みに成功したという意味であり、またアトラスの意図した演出がちゃんと成功したということの証だ。

 その証拠……という訳ではないが、竜司と杏のコープは、後々まで志保や鴨志田の存在を意識させるものになっている。そして、次の祐介のコープでは、鴨志田とは違った「パレスの主」の姿が描かれる。最初が直球で、次が変化球。非常に計算された構成だ。

*1:フタバパレスの攻略期限は「自衛」のために設定されており、他とは事情が異なる。