ロール&ロール65号

 SW2.0高レベルリプレイ、後編。

 今回も辛口で参ります。ソードワールド2.0が大好きで、辛口の感想が読みたくない人はここで引き返してください。










 いやー、いろいろと学ぶべきところの多いリプレイだ。

 このリプレイの目的の一つに、あの「新米女神」に登場する「湖の大司教」バトエルデンの活躍を見せたい! っていうのがあると思う。そして、確かに前編で秋田さんが「バトエルデンに君に任せる」ってプレイヤーに言ってる。
 だけど、そのキャラを任されてる以上、言っちゃいけないこと、やっちゃいけないことがあるはずだ。


「この剣弱いんで捨てますね」といってソウルクラッシュを捨てるアシュラムとか


「有利なんで後ろからベルド殴りますね」というファーン


「MPもったいないからキュアウーンズしません、とりあえず死んでおいてください」というニースがいるだろうか? いないだろう。


 では、“湖の大司教”バトエルデンというキャラクターの肝となるのは何か?
 それは彼が「ルーフェリアの大司教」であるということだ。つまり、ルーフェリアの教えに忠実であるということが彼の一番の個性だ(もちろん、リプレイ中にルーフェリアが登場し、彼女とのやり取りがあるなら別だが)。

 なんでそのバトエルデンに「ペットもったいないから“リザレクション”してくれ」とか言わせるんだ。というより、どうしてその台詞をカットしないんだ。
 ルーフェリアの属する第一の剣を奉ずる神々が死者の復活を認めないのは前のエントリでも述べたとおり。そのルーフェリアの神官が「ペット(仲間ではない)生き返らせて」って…しかも理由が「お金がもったいないから」とか、ないわ。

 それと、きよま…じゃない、にしかけもみじさんのリプレイで前からすごく気になってたのが「キャラクターがゲームターム喋ってる」ってこと。
「(穢れ)一回(なら大丈夫)だから」とかバトエルデンが口走ってるんだけど、リザレクション一回ならレブナント化しないって、それ世界の常識なの? 穢れの数値はキャラクターが認識してるわけ? 私は「穢れ」の数値はゲームタームで「〇回まではリザレクションしても大丈夫」っていうのはプレイヤーは認識できてもキャラクターは認識できないと理解してたんだけど。

 それとも、あれかな? これはプレイヤー発言だってことなのかな? そうするとこのリプレイ、というかにしかけさんのリプレイ、ほとんどキャラクター発言なくなっちゃうんだよね。例えばこのリプレイで、フェルナンデスとバトエルデンが魔剣を巡って(冗談めかした)不穏なやり取りするシーンがあるんだけど、これ全部「プレイヤー発言です、キャラクター発言ではありません」っていうのなら、このリプレイでキャラクターが喋ってるシーンって片手で指折り数えるほどしかないよ。


 あと、これはと思ったのはこのリプレイのラスボス。ルールブックに載せる予定が、ページの都合でカットされたってなってるけど、ぶっちゃけカットされてよかったよ。
 この敵、ヴァンパイアノワールの特殊能力というか、弱点に「第1の剣に由来する神の聖印を持っている人間から傷つけられると、MPにダメージが行く」というのがある。で、PCたちのうち3人がプリーストなんだけど、はっきり第1の剣の神とわかっているルーフェリアを除いては
「第2の剣/第3の剣に由来する神である説が濃厚」
説が濃厚?!
 なおも迷うプレイヤーに、
「ご自由に。(ゲームデザイナーには)確認済みです」


 悪い。プレイ中にこんなこと言われたらGMをグーで殴るわ。マジで。


 想像してみてほしい。
「あなたのキュアウーンズでHPが回復するかどうかはわかりません。ルールブックにも書いてありません。私はゲームデザイナーの知り合いだから直接確認したので、どのような効果になるのか知っています。でもプレイヤーには教えません」
 こんなこと言われて怒らないプレイヤーがいるか? 普通激怒するだろ。

 TRPGのルールとは、ルールブックに書いてあること、そしてGMの判断が全てだ。そこで「ゲームデザイナーに確認してあります。でもプレイヤーには教えません」なんて返答するのはただの困ったちゃんじゃないか。しかもそれは、読者には何の役にも立たない。SNEは、ソードワールドのルールブックに疑問点があったら、いちいちGMの質問に電話で答えてくれるのか?
 そもそも、どの神がどの剣に属しているのかルールブックに明記されていない時点で「第1の剣に由来する神の聖印を持っていれば○○」という能力を持った敵の存在そのものがナンセンス。
「世界の真相は、もう少し謎のままにしときましょうよ(笑)」
 それならそんな敵出さなければいいじゃない。2秒考えただけで問題になるってわかるだろ。(*1)

 さらに付け加えると、これが「特定の武器属性でないと傷つかない」とかならまだいい。聖印、つまりホーリーシンボルであるところが最悪だ。リプレイでは、仕方ないからということでキルヒアとティダンのプリーストがザイアの聖印を持つことにしたけど…寛大だな。破門されてもおかしくないと思うんだが。
 聖印だぞ? 信仰の象徴じゃないの? 有利だからってホイホイ持ち替えていいものなの? だからバトエルデンも「改宗するか?」って聞いたんじゃないの? 聖印はただの飾りなんで自由に持ち替えていいですという説明とか、逆に自分の神ではない神の聖印を持つにあたっての葛藤のロールプレイとかはないわけ?(*2)

 後に、北沢慶は「しかたないよねえ。俺でもそうするもの」は語ったという。

 マジで? ゲームデザイナーまでそう考えてるわけ? カルチャーショックだ。
 なるほど。ソードワールド2.0における信仰ってその程度のものなんだ。じゃあこれからはPCがこれ見よがしに蛮族の聖印とか見せて歩いてても何も言えないな。咎める理由もない。モンスターがザイアの聖印持ち歩いてても文句のつけようがないね、うん。
 
 にしかけさんはこのリプレイ、「お祭りだから」って言ってるけど、私にはこれ「悪ノリリプレイ」にしか見えなかった。バトエルデンはバトエルデンじゃないし、大悪魔であるはずのゲルダムは(プレイヤーにも突っ込まれてたけど)大悪魔というよりインプにしか見えないほどセコいし。
 それでクライマックスの戦闘でアレか。

 ただし、最初にも書いたけど、このリプレイは大変参考になる。やっちゃいけない、書いちゃいけないことのオンパレードだからだ。反面教師の鑑である。


・ルールブックに書かれていない事項について、「ゲームデザイナーが言っていた」とか「常識(笑)で判断」など、あやふやなものを根拠に裁定するべきではない。GM判断をするなら公正に、そしてプレイヤーフレンドリーにするべき。


・PCのロールプレイの核になる事項(信仰やスタイルなど)をプレイヤーの意に反して強制するような展開はやめるべき。


・敵のデータなど、設定されている数値が想定よりも低すぎたせいでプレイヤー側が大勝利という展開は、一つのリプレイで1回あれば十分。5回も6回も同じ展開があるのは「数値設定が間違っている」か「GMの見込みが甘い」かどちらか。売りにするようなものではない。


・データがいくら強くても、カッコ悪くてダサい行動を取ればやっぱりカッコ悪くてダサい。


・プレイヤーとGMは、面白いセッションをするために協力し合うもの。「させなくてもかまわない判定をさせてやった」などと恩着せがましい態度を取ってはいけない。


 楽しめたかという意味では大変楽しめた。トンデモだけどね!


(*1)まぁ、ソードワールド2.0って、関節技があるくせにどのモンスターに関節があるか書いてなかったりするし、今さらな気もするが。


(*2)一応プレイヤーを擁護しておくと、この「聖印を持っていないと大幅に不利になる敵」のために、その手前のシーンで「子供がPCに聖印を渡そうとするシーン」があるのだが、プリーストたちは受け取りを拒否している。当たり前だよね。これって救済策とは言わないよ。