ヴァンスター帝国(アリアンロッドRPG、エリンディル大陸)

 
 この二つのゲームの二つの帝国はよく似ている。

 同じ「錬金術という名の科学がちょっとだけ発達したファンタジー世界」が舞台で
「先代皇帝まではそれほどの勢いはなかった」が
「後継者と思われていなかった青年が突然皇帝に即位(兄弟を暗殺した容疑がかかっている)」して
「突如周辺の国々を侵略する」。
「皇帝は若く脆弱そうにすら見える青年」だが
「謎めいたカリスマを持ち帝国を治めている」。
「帝国の支配を強化するためマジックアイテムの類を集めている」が
「表立って妖魔や悪魔など邪悪な存在の力を借りてはいない」


 ↑ここまでの設定がほぼ同じ。


 真似したとかオマージュしたとかそういうことを言いたいのではない。時期的にはアリアンロッドの方が早いことは早いが、それを言ったらアリアンロッド全体がMMORPGをモチーフにしているわけだし(ポメロとか上級職とかサポートジョブとかいろいろ)。
 そうではなく「わかりやすい、とっつきやすいファンタジーTRPGを作るため、ライト層を対象にした日本のコンピュータRPGや、ファンタジーを題材にしたライトファンタジーの最大公約数を持ってきたら、必然的にこういう設定になった」ということだろう。ソードワールド1は同じ最大公約数でも「海外を含めた(20年前の)ファンタジー小説やファンタジーTRPG」の最大公約数を目指したというところに違いがある。


 これまでの書式に沿って書けばこうなる。


「ヴァンスター帝国は悪役であることもあるが、地図の北にはない」


「ルキスラ帝国は悪役であることもある。地図の北にある」


 違いは地図上の位置ぐらいだろうか? アリアンロッドで帝国の実像が描かれたのはリプレイ・ルージュ、エイプリル絡みのエピソードが一番多いだろう。そこで描かれた帝国の姿は決して邪悪な帝国というわけではなく、大国ならではの複雑な力関係や組織の姿が描かれている。また、トラベルガイドを使えば帝国出身のクラスでプレイできる。「ヴァイキング」というクラスで、水上戦闘に強いものの特に悪役を思わせるような強さはない。
 ルキスラ帝国は小説で描写されているようだが、やはり邪悪な帝国という感じはしない。帝国出身のPCも特に制限なくプレイできるだろう。

 両方とも「周辺の国より強いものの、普通の国」である。帝国という名前はついているものの退廃や腐敗を感じさせない新興国に近い扱いなのが面白い。